ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
205話「サーニャの部屋にお邪魔します」
「ここがサーニャお姉様のお部屋です」
しばらく王城内を歩くこと十数分後、サーラの一番上の姉サーニャが療養している部屋へと到着する。さすが魔王都で一番巨大な建物だけあって、姉妹の部屋にたどり着くのにも結構な時間が掛かってしまう。
おそらくは防犯上の仕様として必要なことなのだろうが、それでも用がある時などを考えれば、不便といえば不便だ。
「サーラです。お姉様のお見舞いに参りました。入ってもよろしいでしょうか?」
部屋の扉をノックしながらサーラが部屋の中に声を掛ける。すると、二十代後半と思しき妙齢の侍女が顔を出し、サーラを見て驚きの表情を浮かべる。
「サーラ様、ご無事だったのですね!」
「ええ、何とか運良く生きて帰ることができました。それよりもお姉様の容体は?」
「目を覚まさなくなってから、変わらず眠り続けております。ああ、立ち話もなんですからこちらへ」
女性は俺たちを部屋に招き入れたが、俺のことを不思議に思ったのか、サーラに問い掛けていた。彼女からしたら、得体のしれない少年にしか映っていない俺を不審がるのは当然であるため、その誤解を解くためにもサーラは体のいい理由を答えた。
「今は何が起こるかわかりませんからね。護衛の一人も側近くに置いておかねば、いざという時に対処できないでしょう。彼は私の護衛をやってもらっている者です。若いですが、強さは確かなので問題ありません」
「左様でございますね。今は、そういった者も必要になってきますもの……」
サーラの言葉に何か思うところがあるのか、女性が俯き下唇を噛む。おそらくは、普段から警戒していれば、こんなことにならなかったのかもしれないという思いがあるのだろう。
部屋に入ると、そこは大きい天蓋付きのベッドに一人の女性が眠っていた。その寝顔は美しく、どことなく雰囲気がサーラに似ている。だが、サーラと大きく違うのは彼女の方が多く歳を重ねている分、何とも言えない色香を纏っているところだ。
体つきもサーラよりも遥かに女性的で、均整の取れた体は同性ですら視線を奪われるほどだ。さらに王族としての高潔さと品位も感じられ、まさに一国の姫君という言葉がよく似合う人物だった。
「サーニャお姉様……。なんておいたわしいお姿に」
「申し訳ございません。私がついていながらこのようなことに」
「いいえ、あなたを責めているわけではないのです」
侍女の女性とサーラのやり取りにその様子を見ていたテリアも悲痛な表情を浮かべている。自分の主は無事だったが、それもまたいつ狙われるかわからない状況だ。明日は我が身として考えているのだろう。
一方の俺はといえば、さっそく【超解析】のスキルを使いサーニャの状態を調べようとしたが、彼女もまた魔族の姫であるため、俺の【超解析】を弾く魔道具を付けているようで、名前と年齢くらいしか詳細な情報を得られなかった。
「ちょっといいか」
「あ、はい。ごめんなさいね。少し外します」
「はい」
俺はすぐにサーラを部屋の隅に呼び出し、給仕の女性に聞こえない音量で彼女に今の状態を告げる。
「このままじゃ、お前の姉の状態が確認できない。なんとかできないか?」
「サーニャお姉様が付けているアンクレットが魔道具になっているので、それを外せば……」
「なら、そうしてくれ」
俺の言葉を受けて、サーラは侍女にちょっとした用事を言いつける。女性も自分が仕える主の元を離れるのを渋ったが、その相手が他でもないサーラということもあって、不承不承ながらも部屋を後にする。
女性が部屋を出ていくと、すぐにサーラがサーニャの足首からアンクレットを外した。それを見た俺はさっそく彼女に【超解析】を使う。
【名前】:サーニャ
【年齢】:二十三歳
【性別】:女
【種族】:魔族
【職業】:魔族の姫君・王族
体力:22800(45300)
魔力:11300(87700)
筋力:S+
耐久力:S
素早さ:S-
器用さ:S-
精神力:S
抵抗力:S+
幸運:S
【スキル】
身体強化LV3、集中Lv3、魔力制御Lv6、魔力操作Lv7、威圧Lv4、魔法耐性Lv3、
火魔法Lv8、水魔法Lv7、風魔法Lv8、土魔法Lv7、炎魔法Lv8、氷魔法Lv7、雷魔法Lv5、大地魔法Lv5、闇魔法Lv7
【状態】
疲労(中)、衰弱(極大)、呪い:昏睡(完全発動まであと四十六時間)
さすがに魔族だけありかなりの強さを持ってはいるものの、以前に出会った七魔将と比べるとかなり見劣りする。王族といっても別段強い力をもって生まれてくるわけではなく、どちらかというとそういった者は王族を守るための護衛などになる場合が多い。
パラメータに関してはどうでもいいが、問題は彼女の今の状態だ。今彼女が引き起こされている昏睡状態は、どうやら何かの呪いに掛かっていることが判明した。
しかも、あと二日足らずで完全に呪いが発動してしまい、その状態から抜け出すことはできなくなるらしく、これが緊急を要する事態だということが理解できる。
「どうでしょうか? サーニャお姉様の病気の原因が何かわかりましたか?」
「ああ、どうやら彼女のこの状態は病気ではなく、何かの呪いによって引き起こされているものらしい」
「呪い!? そ、そんな。では、お姉様はもう二度と目覚めないということですか?」
「まだそうと決まったわけじゃない。とりあえず、試しに魔法での解呪を試みてみよう」
俺の予想外の言葉に声を上げ、涙目になるサーラだったが、まだ望みがあるという俺の言葉を信じ「お願いします。お姉様を救ってください」と懇願してくる。
俺はひとまずサーニャに掛けられた呪いを解くため、混沌魔法の中から解呪に関する魔法を彼女に使ってみることにする。
「【ディスペル】」
基本的な解呪の魔法だが、これは効果がないようでサーニャに変化はない。では次の呪文を使おうとしたところで、サーニャに仕える侍女が帰ってきてしまった。
部屋の様子を見るや、すぐにサーニャに駆け寄ろうとしたが、それをサーラが止めに入った。
「サーラ様! そこをお退きください」
「退きません。あなたもそこで見ていなさい。今はあの少年と私を信じて待つのです」
「で、ですが……」
そんなサーラの援護射撃もあって、俺は次の魔法を使用することにしたのであった。
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