ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
188話「国王に報告する」
「といった感じだ」
「……」
くだらない戦争を終結させた後、俺はその足で事の顛末をバイレウス辺境伯に報告した。辺境伯自身も戦争の結果がどうなったのか気になっていたようで、俺の姿を見つけるなり捲し立てるように問い詰めてきた。
一方の俺はといえば、戦争について聞かれたので起こったことをありのままに伝えた結果、呆れたような視線と共に絶句されてしまった。
「ああ、そういえばセコンド王国軍が持っていた食料などの物資はどうする?」
「持っていても使わないだろうし、そっちで再利用してもらえればいい」
「いいのか?」
「俺がもらっても使わないだろうしな」
セコンド王国の陣からは食料品や弓兵が使用する矢などの補給物資などが残されており、三万という規模の軍隊だけあってその量もかなりのものであった。
それだけの物資をもらったところで、俺では使う機会もないだろうし宝の持ち腐れになるのは明白なので、物資については辺境伯に丸投げすることにした。
それはとは別に、今後のシナリオについての相談をするため、真面目な雰囲気を作って俺は辺境伯に提案する。
「ところで、これからのことについて話したいんだが」
「なんだ?」
「国王には、実際に起こった事実を伝えるとしてだ。他の連中には、辺境伯の手によって戦争を食い止めたという話に持っていきたいから、辺境伯は国王と謁見した時に嘘の報告をしてほしい」
「そ、それはさすがに許容できん」
貴族としての矜持なのか、はたまた武人としての誇りなのかはわからないが、他人の手柄を自分のものにしてしまうことに些かの抵抗がある様子だ。だが、そんなことは俺の知ったことではない。
「悪いがこれは決定事項だ。あんたに拒否権はない」
「……」
俺がやったと言えばそれで丸く収まる話ではあるが、今回の一件に関して俺が動くということを知っているのは国王と騎士団長であるハンニバル、そして目の前のバイレウス辺境伯くらいなのだ。
こちらとしては、国を救った英雄として崇め奉られるのは御免蒙りたいところであるし、何よりも国王に爵位を与えるきっかけを作りたくないというのが正直なところだ。
そこで辺境伯には、この戦争を終わらせた立役者として俺の隠れ蓑になってもらい、そこで話の帳尻を合わせられないかと考えたのだ。辺境伯自身も俺に救われたことで断ることはできないだろうし、元より国と民を守るべく戦っていただろうから、実際に俺がすべて終わらせたとしても問題はないはずである。
実際に仕事をしたのは俺だが、最終的な事後処理をバイレウス辺境伯に頼むだけであって、俺からすればこれは正当な取引なのだ。
ただ辺境伯にとっては、自分が何もしていないことで取引の不平等感を抱かざるを得ないというのが正直なところであるが、終わった後の面倒事をすべて押し付けることになるので、俺としては平等であると考えている。
「だが、これではお前が得られる報酬がないからタダ働きになるではないか!」
「すべての面倒事をあんたに押し付ける。俺は今まで通りの生活が送れる。俺にとってこれ以上ない対等な取引だ。不平等と思うなら、俺の言う通りに動いてくれればそれが俺にとっての報酬になる。辺境伯の爵位を持つ男を思い通りに動かすのだ。戦争を止めた報酬としては妥当だと思うんだが?」
「はぁ……」
俺の言葉に呆れと諦めを含んだため息を吐き出す。どうやら、俺の言い分を理解してくれたようだ。まあ、理解はしたが納得はしていない様子だがな。
それから、俺が国王に報告する内容と、辺境伯が報告する内容の打ち合わせを一通り確認すると、俺はそのまま国王の元へと向かうことにした。
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「ただいま」
「む、戻ったか。で、首尾はどうなった?」
瞬間移動で国王の部屋に戻り、辺境伯に話した内容と同じ説明をすると、こちらも驚きと呆れの顔を浮かべながら項垂れてしまった。
「やりすぎだ。いくら攻め込んできたからといって国境を結界で封鎖するなど……」
「あれくらいやらないと、それこそすぐに攻め込んでくるぞ?」
「……まあ、よい。あの国の侵攻にはほとほと手を焼いていたところだ。それが無くなったのであれば僥倖だ」
そう言いながら、国王は安堵の笑みを浮かべる。事あるごとに謂れなき侵攻を受けていたシェルズ王家にとって、セコンド王国は目の上のたん瘤が取れた気分なのだろう。
そんな会話をしていると、執務室の扉がノックされる。国王が一言「入れ」と入室の許可を出すと、見知った顔の人物が入ってきた。
「陛下、本日は……おや、これはローランド殿」
「師匠ではありませんかっ!」
「ハンニバルにバラセトか。だからその師匠呼びはやめろと言っている。お前は俺の弟子ではないんだから」
「ところで、ローランド殿がこちらにいるということは、もしや?」
「ああ……」
俺は国王に説明した内容と同じことを二人に説明し、同じように呆れと驚愕の顔をいただいた。ハンニバルだけは「師匠さすがです!!」などという称賛をいただいたが、もらってもあまり嬉しくないので、華麗にスルーした。
それとは別に、セコンド王国に施した罰についての話になり、バラセトから「罰としては少々甘いのでは?」という指摘をもらった。確かに、今まで辛酸を嘗めさせられてきたシェルズ王国側からすれば、もう少し重めの罰でも十分釣り合いが取れるだろうし、やろうと思えば簡単にできてしまう。しかしながら、諸悪の根源はセコンド王家であってセコンド王国民に罪はない。
王家だけに罰を与える方法であれば、いくつか思いついたものがあるので、彼らには報告せずにやってみてもいいかもしれないと頭の中で構想を練っていると、国王が口を開いた。
「ローランド殿、此度の助力に感謝する。貴殿がいなければ、戦争によって多くの民が犠牲となっていただろう、この功績はとても大きい」
「俺にもいろいろと事情があるからな、あまり気にしないでくれ。友を助けるのに理由なんていらないだろ?」
「はははははっ、そうか。そうだったな。お前と俺は友であった」
それから今回の報酬の話になったが、ぶっちゃけたところ今まで通りの平穏な日々が送れればいいので、報酬については辞退しようと考えていたのだが、犠牲者を出さずに戦争を終結させた功績に対し、何も報酬を出さないというのは王家としての誇りや矜持などに関わるということらしいので、ふっかけるつもりで大金貨一万枚を要求したところあっさりと了承された。
寧ろ「それだけでいいのか?」と言ってのけるあたり、今回俺がやらかしたことは大きかったようだ。
「本来なら伯爵か侯爵の位を与えたいのだが……おまけにうちの娘も嫁にやるぞ」
「それはやめてくれ。貴族の柵なんて真っ平御免だ。爵位は俺にとって枷にしかならない。それと自分の娘をおまけ呼ばわりは感心しないぞ? この国の第一王女ならもっと然るべき相手に嫁がせるべきだろう。一介の冒険者では釣り合いがとれんぞ」
「そうか、残念だ」
本当に残念そうな顔をする国王だが、俺としてはありがた迷惑どころか迷惑でしかない。爵位も縁談話も、俺にとっては自身の行動を制限するものでしかないため、今は必要性を感じない。一応言ってくが、別にティアラのことが嫌いなのではない。彼女とはいろいろあったが、彼女の立場を考えれば理解できる行動であったと思うし、客観的に見れば常軌を逸しているようなものでもなかった。
今の俺の現状からみて必要ないものであり、この結論についてはいずれ考えが変わる時がくるかもしれない。尤も、それは少なくとも五年以上先の話となるだろうがな。
国王たちに報告を終えた俺は、何かあれば連絡してほしいと告げ、そのまま執務室を後にした。
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