ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
173話「店舗建設」
「あの、ローランド様。この何もない場所は一体……」
「ここにお前の店を建てるんだ」
「え? ええっ!?」
俺たちがやって来たのは、何もない更地の一角だった。もちろんただの更地ではなく、その場所は王家か管理所持する土地の一つであり、はっきり言ってしまえば一等地である。
土地の周辺には、王都でもその名を連ねる店舗が建ち並び、激戦区といっていい程に客の出入りがある。それもそのはず、その店舗がある場所というのが大通りに面しており、人通りに関して言えば王都でも一、二を争うほどに人の往来が激しい場所なのだ。
そんな場所に店舗を構えれば、自ずと客が寄ってくるのは必定であるからして、周辺の店舗は軒並み大盛況であった。
「ここって、確か国が管理していたはずの土地ですよね? ここに僕の店を建てるってどういうことですか!?」
「しょうゆうこ……いや、なんでもない。言葉の通りここにお前の店を建てる。これがこの土地の権利書だ。お前が持っておくか?」
「いいいいいい、いりませんよ!! ローランド様で管理してください!!」
国王からもらった土地の権利書を、この土地に建てる店の代表になるマチャドに手渡そうとしたが、勢い良く断られてしまった。何が不満だというのだろうか……。
「なんでだ? お前の店になる建物が建つ土地の権利書だぞ?」
「国が管理している土地の権利書なんて怖くて持てませんて!!」
「そうか、なら仕方がない。とりあえず、店だけでも今日中に作ってしまうか……」
「え? 作るってどういう――」
そういうが早いか、俺は周囲に蜃気楼に似た結界のような魔法を張り巡らせ、結界の外にいる人間に建物を作っていることがわからないようにする。
そして、周囲の建物の景観を崩さないよう、他の店と同じように石造りの建物を魔法を使って瞬く間に建設していく。建物がまるで時計の針を高速で動かす様にできあがっていく様は、他の人間からすればかなり異質な光景であり、現にそれを見ていたマチャドは終始口をぽかんと開けたまま呆然とその光景を眺めているだけであった。
「よし、外枠はこんな感じか。あとは大まかな内装もやってしまおう」
「……」
未だにこちらの世界に戻ってきていないマチャドを尻目に、俺はできあがった建物の内装を魔法で細かく区分けしていく。周囲の建物は大体二階建てが多いので、地下室と一階と二階部分という三層構造で作ることにし、地下室は倉庫にする。
一階部分は、主に庶民向けのリーズナブルな価格で手に入る今までグレッグ商会で販売していた商品を並べ、二階部分は逆に貴族などの富裕層向けの商品を新たに作って販売するためのスペースとした。嗚呼、また新しい商品を考えないといけないなこりゃ……。
地下室、一階、二階と順番に内装を固めていった後、次に商品を並べるための陳列棚も魔法で作っていく。それほど難しいものではないが、この規模の店舗となるとそこそこ数が必要になるので、一部は職人ゴーレムを作ってお任せすることにした。
「ちょ、ちょっとローランド様! こ、これは一体どうなってるんですか!?」
「見てわからないのか? 店を作ってる」
「いや、見たらわかりますけど。実際見ても理解が追いついていないんですよ! どこの世界に店の建設から始める人間がいるんですか!?」
「ここにいるけど?」
「違うんです。そういうことが言いたいんじゃなくて……」
マチャドが何を言いたいのかはわからないが、とっとと店作りを終わらせてしまおう。どうにも解せないと言った様子のマチャドを無視して、俺は店舗を完成させていく。
そして、店作りを開始してからたったの二時間で、地下室完備の二階建ての店舗が完成した。急ごしらえにしては良くできていると自画自賛するほどの出来栄えになったと内心でほくそ笑む。
「さて、マチャド。これで店の建設は完了したが……」
「したがって……簡単に言ってますけど、大それたことですからね!?」
「まあ、とりあえず座ってティータイムを楽しもうじゃないか」
一仕事終えた俺は、一息つくためにテーブルにお茶の準備をし始める。マチャドも一緒にどうかと誘ってみると、意外にもテーブルに着いてくれた。
紅茶と最近定番になり始めているスイートポテトを出してやると、マチャドがそれを美味しそうに食べ始める。俺も店を作ったことで消費した魔力や体力を回復させるという名目でお茶を楽しむ。尤も、魔力も体力もそれほど消耗してはいないのだがな。
「ふう、お茶が美味しい」
「そうですねー。こうしているとなんだか落ち着き――って、落ち着いてる場合じゃないですよ!? どういうことか説明してくださいよ!! なんで、ほんのわずかな時間で店ができてるんですか!?」
「頑張って作ったから」
「だから、説明になってませんて!!」
そんなことを言われても、頑張ったことに嘘はないしできるものはできるのだから仕方のないことだ。その説明で納得してもらうしかない。それに、ここからマチャドの商人としての腕を少し試させてもらおう。
「それよりもマチャド。とりあえず、これを見てどう思う?」
「これは……」
追及してくるマチャドをごまかすため、俺はストレージからグレッグ商会で販売している商品を出して目利きをさせてみることにする。
先ほどまで情けなく喚いていたマチャドだが、商品を目の前にするとさすがに商家の人間だけあって顔つきが商人のそれになった。なんだ、だたのボンボンではないんだな。
内心でそんな失礼なことを考えていると、目利きが終わったようで“ふうー”という息を吐き出すと、目利きの結果を伝えてきた。
「どれも素晴らしい品です。いくつか使用用途のわからないものもありますが、概ね価値の高いものだと思います」
「そうか、この品をこの王都で売り出せば、売れると思うか?」
「まず間違いなく売れます」
「そうか。一応だが、これがそれぞれの販売価格のリストだが、これで問題ないか?」
「拝見します。……この価格では安過ぎますね。これでは、うちで商品を買い占めてさらに高値で売りつけようとする連中が出てきますよ?」
なるほど、所謂“転売屋”というやつだな。前世の世界にもそういった人間が一定数いたことを覚えている。しかし、そういった行為というのは消費者の需要と供給の妨げになっているケースが多く、元々安い値段で手に入れられたものが高値になってしまうということが横行していた。
こういった行為自体を法律で規制する動きは、ある程度あったのだが、それもいたちごっこといった感じで新たな法律の抜け道を突いて転売屋という存在は消えることはなかったのである。
当然ながら、この異世界にもそういったことを考える輩がいるのは必然であり、それに対抗するためには少しでも適性の価格で販売し、高額転売を防ぐということも必要なことだ。
「わかった。価格はオラルガンドでの相場だと考えてもらって、王都での販売価格はマチャドに任せるとしよう」
「いいんですか? こんな大事なことを僕なんかに任せて」
「ここはお前の店になるんだ。寧ろそれくらいやってもらわなければ困る」
しばらく、今後のことを話し合った後、俺たちは従業員としての人員を確保しに再び商業ギルドに訪れたのだが、いくらリリエールが優秀とはいえわずか数時間前に頼んだことを終えているはずもなく「そんなに早く揃えられる訳ないじゃないですか!!」と叫ばれてしまった。
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