ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
157話「身分の高い人間の相手は、やっぱり身分の高い人間になってしまうんだな」
「お初にお目にかかります。私はセイバーダレス公国第二公女のアナスターシャと申します。以後お見知りおきくださいませ」
そう言いながら、とても優雅な所作でドレスの裾を摘まみながら片足を一歩引いてお辞儀をするカーテシーという西洋の文化的な挨拶をする。
それだけで、目の前にいる少女がただの少女ではないことを嫌というほど理解させられてしまう。
少女の見た目は十代中頃で、艶のある長いプラチナブロンドにおっとりとした目元が印象的で、とても愛らしいという感想が俺の第一印象だ。
十代中頃という年相応の体つきで、慎ましやかな肢体を持っているものの、彼女の放つ落ち着いた柔らかい雰囲気が逆に女性として大人びた印象を与え、逆に得も言われぬ魅力を放っていた。
「これはご丁寧に。俺はローランドという隣国シェルズ王国を拠点に冒険者をやっている者です。今日はこの首都に物見遊山でやってきたのですが、こちらの勲章を提示しましたところ、本物かどうかの確認ができないとのことで確認できる人を連れてくると聞かされいたのですが、まさかこの国の公女様が来られるとは思っておりませんでした」
一応この国の王族的な位置付けの人間なため、砕けた言葉遣いは避け、堅苦しい言葉を選んだ。……俺は一応空気は読める人間なのだ。たまに面倒臭くてやらないこともあるが、今回は初対面の身分の高い人物であるため、ミスリル一等勲章をもらったシェルズ王国の国王の顔を立て、国際問題にならないよう考慮した形だ。
栄誉あるミスリル一等勲章を授与した人間に問題があれば、それを与えた国に責任が及ぶ可能性も少なからずある。勲章というのは、そういった責任やしがらみが大なり小なり付きまとう面倒臭いといえば面倒臭いものであったりするのだ。
もちろんデメリットばかりではなく、ある程度の身分の保証を約束してくれるため、他国の最上級貴族並みの待遇を受けることができる。大概の場合勲章というものをもらうのは貴族が定石であったりするのだが、俺の場合は爵位と領地の叙爵を拒絶したため、平民の身でありながら最上級貴族や他国の王族並の身分を持っているという異質な存在なのだ。
それ故に、貴族にとっては自らの陣営に取り込むことで、自身の立場を大きくする道具として利用される可能性もなくはないが、その点はシェルズ王国の国王が目を光らせているため、シェルズ王国内にいる貴族たちが俺をどうこうしようなどという悪い考えを起こす輩は少ない。
しかし、今俺がいるのは国王の目の届かない他国にやってきているため、何か問題が起こった場合は俺自身で対処することになり、国として対処することを考えた場合後手に回る可能性が高くなってしまうのが現状であった。
「公女といっても、この国を治める大貴族の家の一つに過ぎませんので、あまり堅苦しい言葉遣いは必要ありません」
「では少しだけ、崩させていただこう。とりあえず、これがミスリル一等勲章だ。確認していただきたい」
「拝見します」
先ほどまで柔和な笑顔を浮かべていたが、まるで別人のような真剣な顔つきとなり、本来の仕事を開始する。彼女がここにやってきたのは、俺と世間話をすることではなく、俺の持つミスリル一等勲章が本物であるかどうかを確認するためだ。
彼女に勲章を差し出し、しばらく確認してから“ふぅ”と一息吐き出した後、勲章を差し出しながら確認した結果を伝えてくる。
「こちらは、紛れもなくシェルズ王国によって製造されたミスリル一等勲章で間違いありません」
「ならば、これで俺の身分が保証されたわけだ」
「はい、つきましては後日私の母にお会いしていただけないでしょうか?」
先ほどと同じような真剣な眼差しで懇願してくる彼女の顔を見ながら、思案に更ける。これはおそらく面倒事の予感がしてならない。
だが、仮に突っぱねるにしても、今後予告なくその面倒事に巻き込まれる可能性が高く、事情を知らない状態と知っている状態では天と地ほどの差が出てくることになるため、今この国で問題が起きているとするならば、それを解決するしないにしてもその事情を知ることは決してマイナスにはならないはずだ。
「ああ、会うだけなら構わないが……それだけではないのでしょう?」
「……詳しい話は、母上様からお聞きくださいませ」
「わかった。聞かせてもらおう」
その会話をもってアナスターシャはお役御免となったので、早々に元居た場所へと帰って行った。去り際に「またお会いしましょう」と言っていたが、その言葉の通り彼女とは何となくだがまた会う気がしていた。
ようやく、首都に入ることができた俺は、ひとまず拠点の確保といつもの“アレ”を確認するため、兵士から聞き出したおすすめの宿へと足を向けることにした。
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