ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
138話「新しい料理のために」
「ローランド様、お帰りなさいませ」
「ただいま、何か変わったことはなかったか?」
「いえ、特にはございませんでした。こちらお預かりした維持費となっております」
屋敷に戻った俺は、ソバスに出迎えられた。話を聞いてみたが特段変わったことはないとのことで、屋敷を出る前に渡していた大金貨十枚の残りを渡してくる。
それは何かあった時のためにソバスに預けておくと言って、俺はソバスに大金貨の入った皮袋を突き返し、急ぎ敷地内にある工房へと向かった。
こちらの工房では、主にグレッグ商会に納品する商品の材料を錬金術が使える職人ゴーレムたちの手によって量産している。以前には実現できなかった空気中の魔力を動力源に変換できるシステムが実現できたことで、半永久的に錬金術を使い続けることができるようになっているため、物理的な介入か俺が指示を出すまで指示された素材を量産し続けるのである。
「よし、今日はあれを作るぞ。てことで、久々のローランドのイケイケメイキングのコーナー!!」
久しぶりの物作りとあって、少しテンション高めでお送りしておりますが、そこはご愛敬ということで一つよろしく。さてさて、今回俺が何を作り出そうとしているのか、答えを先に言う前に今の料理の現状についての話をしていこうと思う。
現在、俺ができる調理の種類というのは大体二種類で、それは“焼き”と“煮る”である。前世の地球では料理における主な調理法として確立されている方法は四種類あった。先に紹介した“焼き”と“煮る”の他にも“揚げる”や“蒸す”という調理法が存在している。
揚げるというのは、主に食物性の高温の油を使って調理する方法だが、現状魔物などの肉から動物性の油を抽出することはできるが、揚げるという調理に向いているのは動物性の油よりも植物性の油なのだ。
であるからして、現在“揚げる”という調理法は植物性食物油の欠如により実行が困難な状況となっている。
ならば、もう一つの“蒸す”というのはどうだろうか? これは単純に蒸すための調理器具が存在せず、今まで他のことに気を取られ過ぎていたがために調理器具の開発を行う時間がなかったのが要因となっていた。
だがしかしだ。いろいろと始めた新しい事業も軌道に乗り始め、自分の時間が取れるようになったため、このタイミングで“蒸す”という調理法を行うための調理道具の開発に着手しようと考えたのである。
「となれば、一番簡単なのはせいろだな」
せいろとは竹や木を編んで作られた蒸すために使われる調理器具で、主に中華料理によく使われているものだ。具体的な料理としては、焼売や小籠包などが挙げられ中から溢れ出す肉汁はそれはもう美味で……コホン、失礼話が脱線しかけてしまった。閑話休題。閑話休題っと。
そんなこんなで、今回はそのせいろ作りに取り組もうとしたのだが、問題なのはせいろ作りに向いているとされる竹がないということだ。この世界にも竹やそれに酷似した植物は存在しているだろうが、今のところ発見には至っていない。
だから、今回は最低限蒸し料理ができるレベルのせいろを通常の木で作ろうと考えている。ひとまず、ストレージから適当にぶち込んでおいた木を取り出す。ちなみに、この木は木工人形の材料としても使われる木だったりする。
「丸型と四角型があるがどっちがいいかなー?」
「ムー?」
スカル・ドラゴンの一件以来、ほったらかしにしていたプロトを久々にストレージから引っ張り出すと、好き勝手に徘徊し始める。徘徊に飽きてきたところでちょうど俺のところにやってきたのでさっきの質問を投げかけてやると、手を顎の辺りに持ってきて小首を傾げる仕草を取った。うん、お前はそれでいいよもう。
そういえばプロトで思い出したが、スカル・ドラゴンの時に使用したロボレンジャーがどうなっているのかといえば、現在クールダウン中でストレージの肥やしとなってしまっている。尤も、ストレージ内での時間経過がないため、スカル・ドラゴンと戦った直後のまま時が止まってしまっているのだがね。いずれ引っ張り出して調整しなければなるまい。
再び俺の“やらなきゃいけないことリスト”に新しい項目が増えたところで、現実逃避するかのようにせいろを作っていく。とりあえず、今回は簡単な四角型のせいろをお試しで作ってみることにして、慣れてきたら丸型の方にも挑戦してみようと思う。……なんか、この調理器具も販売目的で作り始めている気がするのは俺だけだろうか?
そんな細かいことは、どこか宇宙の銀河の彼方に放り出しておいて、さっそくせいろの外枠となる部分を作っていく。形自体は四角なので、パズルのように隙間なく嵌め込む部分さえ気を付ければ基本的には簡単にできるはずだ。
ひとまず外枠部分を嵌め込むための嵌め込み部分と、その相方となる突起のような形をした部分を加工し、四角の枠組みになるようにしていく。底面部分には、十数枚の薄目の木の板を紐で結んだ小さなすだれのようなものを敷けるようにするための数センチ幅の板留めを加工の時に作っておき、そこにそのすだれモドキを入れる。
あとは、同じものを数組作り他のものを積み重ねても空気が漏れ出ないよう注意しながら加工をして、最後に蓋となる部分を作ればせいろの完成である。
「一応できたが、果たしてせいろとしての機能を果たせるのだろうか」
前世の記憶の中にあるせいろのイメージを頼りに作っただけなので、果たしてこのせいろモドキが調理道具として上手く機能しているのかがわからない。となってくれば、それを確認する方法は一つしかない。
そうと決まればすぐに行動に移し、俺はその足で厨房へと向かった。道中使用人の何人かとすれ違ったが、その中に国王のスパイである正規メイドのステラとメイド見習いのマーニャの組み合わせであった。
俺の姿を見つけると、軽く会釈してくれた。そう言えばこいつらにスパイがバレてることを言ってなかったな……。国王には、スパイが潜り込んでいたことを話していたが、実際に潜り込んでいる二人にそのことを言ってなかった。最近いろいろと忙しかったからか、そのことを完全に失念していた。
「ちょっといいか」
「なんでございましょうか?」
「国王に伝言を頼みたい。正式にお前とマーニャの二人をこの屋敷の使用人として雇い入れたいから、いくらで譲ってくれるかと」
「仰っている意味がわかりません」
「であれば言い換えよう。国王の間諜であるお前とマーニャを諜報に長けた使用人として正式に雇うことにした。だが、お前らは国王の直属の暗部だろ? なら、お前らを引き抜くには国王の許可が必要だと思うんだが?」
「……」
俺の投げ掛けにステラは押し黙ってしまった。おそらくは気付かれていないとでも思っていたのだろうが、見た目の立ち居振る舞いなどから一般人としてごまかせても、俺の超解析のスキルはごまかされない。
「ま、お前たちが嫌ならば無理にとは言わん。だが、話だけは国王に持っていっておいてくれ。じゃあ、一応給金は払ってるから仕事サボるなよ?」
それだけ言って、俺は再び厨房を目指した。
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