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ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく

こばやん2号

114話「イザベラのご先祖様と今後のナガルティーニャの動向」



「お初にお目にかかります。わしは、このオラルガンドの冒険者ギルドのギルドマスターをやっとります。イザベラというものでございます。かの大賢者様にお会いできたこと、とても光栄に思っておりますですじゃ」


 平伏したイザベラが、そのようなことを言い始める。というか、ナガルティーニャってそんなすごいのか?


「ローランドきゅん? なにその“なんでこんな奴が敬われてるんだ”的な蔑んだ視線は!? ああ、でもそれはそれでゾクゾクするから、あたしとしてはアリと言えばアリなんだけどね」


 これである。この性根も価値観も何もかもが腐りきった人間のどこに敬う要素があるというのだろうか? ただ一つだけ認めることがあるのなら、今の俺よりも強いというただ一点のみだ。


 まあ、顔はいいから黙っていれば美少女モドキのようなものに見えなくはないが、魂から腐りきっている性根は隠すことはできないため、どちらにせよお近づきになりたくない人間であるこそに変わりはない。


「これ小僧! このお方をどなたと心得るか!?」

「ただのショタ好きのロリババアだ。まあ、ちょっとは実力があるとは思うが、それもいずれ俺がこいつを倒せるようになるまでのほんの短い時間に過ぎない」

「この無礼者が!!」


 俺の正直過ぎる感想に、激昂したイザベラが持っていた杖を振るってくるが、その程度の攻撃では俺に届かず難なく躱す。第三者が聞けば暴言と捉えられかねない言葉だが、当の本人であるナガルティーニャは気にした様子は一切ない。


 まあ、俺がこいつと過ごした三年間で吐いた悪態に比べれば可愛いものだと考えているのだろうな。いや、寧ろご褒美とすら思っているのではないだろうか?


 俺への説教を諦めたイザベラが、再びナガルティーニャに媚びを売り始めたのだが、その話の内容は些か興味深いものであった。


「大賢者様、わしの五代前のご先祖様が大賢者様の弟子でございまして。ヘカテーという名に聞き覚えはございませんか?」

「ヘカテーってあのヘカテーかな? 長い紫髪の女の子で物凄く大きいとんがり帽子を被ってた子だね。あとおっぱいがめちゃめちゃデカかった」

「そのヘカテーで間違いございません」


 イザベラが語り始めた話では、今から約二百五十年前に魔族が人間に向けて宣戦布告をし、人間を支配下におくべく大規模な侵攻が勃発した。その猛攻に人間の国々は窮地に追いやられた。


 魔族の侵攻を止める者は誰もいないかと思われたその時、一人の少女が現れた。その少女こそ今目の前にいるナガルティーニャその人であり、彼女の出現によって魔族たちは瞬く間に劣勢に立たされ、当時の魔王を打ち滅ぼすという決定的な一打によって魔族を追い返すことに成功したのだ。


 その当時ナガルティーニャに追随していた一人の女性魔法使いがおり、その人物こそイザベラの五代前の先祖であるヘカテーだったらしい。


 魔族を退けたのち、ナガルティーニャはオラルガンドのダンジョンに籠り、その弟子であるヘカテーは自身の魔法使いとしての力を後世に伝えるべく、ナガルティーニャから教わったことを自分の弟子に伝えていったそうだ。


「あの子かー。確か物凄い生真面目な子だったんだよねー。その癖、おっぱいが大きいから男の子にモテてたんだけど、本人はずっと“私は師匠一筋ですから”とか言ってたなー。あ、でも一応彼女の名誉のために言っておくけど、ヘカテーはその気は一切なかったからね」

「いや、そこは心配してないから。仮にその気があるなら、なんでイザベラの婆さんが存在してるんだよ……」

「あ、そっか。それもそうだねー。ふふふ」


 ヘカテーとの思い出話に、ちょいちょいとある身体的な一部分を強調するのは何故なのだろうかと思ったが、彼女の胸を見て納得がいった。具体的には明言しないが、一言だけ言わせてもらうのなら、確かにナガルティーニャのは小さいな……。


「ローランドきゅん? 一体何を考えているのかな?」

「お前のおっぱいはちっぱいだと思ってな」

「まさかのストレートにぶつけてくるとは……さすがローランドきゅん、そこに痺れる憧れるぅー!!」

「やかましい! 」


 それから、イザベラとのヘカテーの思い出話に花を咲かせるナガルティーニャであったが、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまい気付けば結構な時間が経っていた。


 その間俺はどうしていたかというと、次にグレッグ商会で販売する予定の商品についての構想を練り上げていたところだ。次の商品はやはりあれで決まりだな……。


「もうこんな時間になってしもうた。いやはや、楽しい時間というのはあっという間に過ぎてしまいますな」

「ホントだね。じゃあ、あたしはこれで帰るよ。機会があったらまた会いましょう」

「その日を楽しみにしております」


 二人が別れの挨拶を済ませるのを確認したところで、無言で部屋をあとにする。というか、途中から俺いらなくねとか考えていたが、商品の構想がいい感じに纏まりかけていたので、そのままその場に居座る形になってしまったのだ。


「さて、時間的にはそろそろ夕飯時か……」

「そうだね、どこで食べようか?」


 なんでお前がここにいるんだという思いを乗せた全力のジト目を向けてやるも、小首を傾げながら“どうしたの?”というあざとい仕草をする。ちくせう、なかなか様になってるじゃねぇか。


「おい、ナガルティーニャ。お前、これからどうするんだ?」

「……どうとは?」

「結界の外であるこの世界に出てきたということは、何か新しい目的ができたってことだろ? それとも何の目的もなしにあそこから出てきたとでも?」

「……」


 俺の追及に、沈黙を持ってナガルティーニャが答える。だがしかし、その沈黙が如実に物語っている。俺の問いが是であるということを……。


 今まで一人で過ごしてきた彼女にとって、今の時代の世界がどうなっているのかそれを見て回るのも悪くないだろう。仮に面倒事に巻き込まれても、彼女に勝てる存在などそうそういないだろうしな。


「まあ、とにかく今まで引きこもってた分この世界を観光するのもいいんじゃないか? 俺の目的もこの世界を見て回ることだしな」

「なら、あたしの用事が済んだら一緒に世界を見てまわ――」

「だが断る!!」

「まだ言い終わってないよ!?」


 冗談ではない。こんな腐った死体……もとい、女子と一緒に行動するなどどんな羞恥プレイだ。それに俺は、一人旅が好きなんだ。どっかの異世界ファンタジー小説に出てくるような、可愛い女の子とのキャッキャウフフなハーレムスローライフを送る主人公ルートなんて真っ平ごめんだ。


「じゃあこうしよう。俺とお前で別々の場所を見て回るんだ。そして、何年後かに集まってどこを旅してきたかを自慢するというのはどうだ?」

「それいいね。うん、気に入った。じゃあ、最後の別れに抱きしめてディープキスを――ふがっ」

「お前は、学習するということを知らないのか……?」


 最後の最後までふざけた奴だが、不思議とこいつとの漫才は嫌いではない。かといってずっと一緒にいたいわけではないがな……。


 その後、俺のアイアンクローを受けたナガルティーニャが、床に転がってぴくぴくとしていたが、見なかったことにして俺は夏の木漏れ日で夕食を食べた後自宅へと帰宅した。

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