ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
104話「いきなり難易度がイージーからハードになったんだけど、これ如何に?」
「さて、腹も満たされたし、改めて追いかけるとするか」
一言呟きながら、再び索敵スキルを使用して魔族の現在地を探る。すると、同じ場所から動いておらず、未だに準備中らしい。このまま待ってあげても問題はないが、とりあえず状況を確認するためにも、奴のいる場所へ乗り込むことにした。
「【ドリルマイン】」
唱えた呪文によって、大きなドリル状の物体が出現し高速回転をし始めたかと思ったら、そのまま地面を掘削し出した。圧倒的な高速回転によって、みるみるうちにダンジョンの地面が削られていき、ついには下の階層まで穴が貫通してしまう。
ドリルはそこで止まらず、そのままさらに下の階層へと掘り進めていき、奴のいる階層に到達するまでそれが続いたのである。
「よっと、ここが目的地か」
「き、貴様っ! どうやってここまで来た!?」
いきなり現れた俺に、戸惑いの表情を浮かべながら叫ぶ魔族に対し、冷静なトーンで答えてやる。
「二十階層からここまで掘ってきた」
「ば、馬鹿な! ここは五十階層だぞ!? 二十階層まで一体何階層あると思っているんだ!」
「三十階層ですが、何か?」
単純な計算で言えば、二十階層から五十階層までの差を引けば三十になるのだから、三十と答えてやる。……ん? そういうことじゃないだって? じゃあ、どういうことなんだ?
「そ、そんなことはもはやどうでもいいことだ。よくのこのことやってきたな。これでお前もおしまいだ!」
おっ、どうやら俺がサンドイッチを作っている間に準備が整っていたようだな。いやーよかったよかった。これでできてなかったら、また俺の料理コーナーが始まってしまうところだったぜ。
一体何が起こるのかと見守っていると、魔族が両手を前に掲げ出し呪文のような言葉を唱えた。すると、突然真っ暗な渦と共に魔法陣のような紋章がいくつも出現する。
「封印されし悪しき者よ、今こそその姿を現せ」
魔族がそう言うと、魔法陣が砕け散ると同時に渦の中から異形なる存在が姿を現した。その姿は、一言で表現すれば骨だ。何かの骨がゆっくりと渦の中から出てこようとしており、その雰囲気は禍々しいオーラに包まれている。
ここで通常なら、その骨が渦から出てこないように阻止する場面だが、俺はそこで待つことを選ぶ人間だ。魔族の切り札というのが何なのかこの目で確かめたかったというのもあるが、奴が口にした“復活”という言葉に引っ掛かりを覚えたからだ。
復活ということは、元々封印されていたり何かしらの理由で元の状態でなかったものを元に戻すということだ。つまり、封印している何かとんでもないものを呼び起こすということであり、ここで言うところの戦力的な切り札であることは間違いない。
「こいつは……骨のドラゴン?」
「そうだ。こいつはスカル・ドラゴンと言って、太古の昔に存在していた邪竜の成れの果てだ。あまりの凶暴さにかつて人族の英雄が仲間と共に封印してしまったが、今数百年の時を経て復活する時がきたのだ!」
「きたのだって……封印解いたのお前じゃん」
なんか、自然の摂理的な意味で封印が解けたような言い方だが、実際はあいつが人為的に封印を解いただけだからな。なんか気分が高揚しているのか、言ってることが妙に芝居がかってるんだよな。
とりあえず、初見の相手なので解析を使って調べてみた結果、返ってきた答えは予想外のものであった。
【名前】:スカル・ドラゴン
【年齢】:560歳
【性別】:不明
【種族】:アンデッド族・ドラゴン族
【職業】:なし(SSランク)
体力:53000
魔力:71000
筋力:SS+
耐久力:SS-
素早さ:SS
器用さ:S+
精神力:C+
抵抗力:D-
幸運:S+
【スキル】: 身体強化・改Lv8、魔道の心得Lv9、四元素魔法Lv8、上位属性魔法Lv6、漆黒魔法Lv9、
超集中Lv4、天翔Lv3、威圧Lv8、魔法耐性Lv7、物理耐性Lv8、毒無効Lv4、幻惑無効Lv4、パラメータ上限突破Lv1、
ブレスLv8、呪い付与Lv7
【状態】:不死
……マジか。いきなり格上登場とか聞いてないぞ。難易度が一気に跳ね上がってしまったではないか! そう言えば、このパターンって漫画とかアニメとかでよくあるやつだったわ……。
さあて、困ったぞ。明らかに俺よりも強いステータスを持っている。パラメータ自体は物理特化で、精神力や抵抗力が低い数値であることから魔法関連が弱点に見えるが、スキルに魔法耐性があるため大きなダメージは与えられないと予想される。
かといって、物理攻撃が効果的と言えばそうではなく、どちらかといえば魔法の方がダメージが通りそうなイメージがステータスを見てわかる。
とにかく、今までにないほどの強敵だということは間違いないが、あの女魔族と比べるとどうかと問われれば、微妙なところではある。だがしかし、こちらの方が具体的な数字が見えている以上まだマシだとも言える。
それはそれとして、比較対象が不確定な要素を含んでいるため、確実なことが言えないのが正直なところではあるのだが、今は目の前の骨ドラゴンがあの女魔族より強いかどうかではなく、俺よりも強いかどうかの方が重要なため、脱線しかけた思考を元に戻す。
「グハハハハ、どうだ恐れ入ったか!」
「一つ、いいか?」
「なんだ命乞いか? 今更泣いて頼んでも許してはやらんぞ」
「そうじゃなくて、そいつはちゃんとコントロールできてるんだろうな」
「なに?」
そう、そこが重要なのだ。仮に目の前の骨ドラゴンがこの魔族の男の制御上にあるのなら、無駄に暴れることはしないだろう。だが、問題は制御上にない場合だ。
もし、あの骨がこの男の管理下になく好き勝手に暴れまわるだけの存在であれば、ここでなんとしても食い止めなければならない。あの骨がダンジョンの外に出てオラルガンドの街で暴れるようなことになれば、ひとたまりもない。
「試しになにか命令してみろよ? それとも、そんな大層なものを蘇らせておいて、ただそいつに縋ることしかできない負け犬なのかお前は?」
「ぐっ、言わせておけば……いいだろう。スカル・ドラゴンよ! あの小僧を殺せ。亡き者にしろ!!」
「グォォォォ……」
魔族が俺を殺すようスカル・ドラゴンに命令するも、ただ低い唸り声を上げるだけで、奴の指示に従うそぶりは見せない。やはり、制御できていないようだな。
「ええい、言うことを聞くのだ。誰のお陰で復活できたと思っているのだ。この役立たずの能無しが」
あーあー、それ死亡フラグなんだが。しかも、その能無しに自分よりも強い相手を殺させようとしていることをわかっているのかね。
俺が内心で呆れの感情を抱いていると、ここでスカル・ドラゴンに動きがあった。魔族の声に反応を示したのである。だが、それは奴の期待していた反応とは違っていた。
「グォォォォ」
「な、なにをしているのだ。さっさと小僧を殺せ!」
「グオオオオ」
「ち、違う。こっちじゃない!!」
あらあら、やっぱりそうなるのね……。まあ、アニメや漫画でもよくある展開だから驚きはしないが、実際それを目の当たりにする日が来るとは思っていなかった……。
「グオオオオ」
「ぎゃあああああ」
魔族を敵と定めたスカル・ドラゴンは、素早い動きで接近しその巨大な爪による攻撃を振り下ろす。骨だけとはいえ四メートルの巨体から繰り出される一撃は強力で、魔族の腕がいとも簡単に切断される。
スカル・ドラゴンはそんな魔族になんの興味も示さず、ただただ理不尽な暴力を叩きつけるだけの相手として認識しているようだ。
「こ、このままでは……我はここで死ぬわけにはいかぬのだ。こんなところで死んでいい魔族ではないのだ!」
「グオオオオ」
「この一件が片付けたらアモン様のもとに帰還し、お褒めの言葉をいただくのだ!」
あーあーあーあー、死亡フラグの連発なんだが。こりゃ、もうだめだな……。
魔族の死亡フラグが引き金となったのかは定かではないが、もはや興が削がれたと言わんばかりに魔族を頭から飲み込んでしまった。ちなみに、魔族の断末魔の叫びは「アモン様ぁー」だった。
「うわ、食べられちゃったよ。なんかピク〇ンみたいだな」
前世でプレイしたことのあるテレビゲームに登場するキャラクターとよく似た光景だったため、思わずそんな感想が口をついて出てしまった。そのキャラクターも敵と戦う時よく食べられてしまうのだ。
「グオオオオ」
「おっと、そんなことを言っている場合ではないな……次は、俺の番だ」
魔族を飲み込んだスカル・ドラゴンが次に興味を示したのは俺だった。そりゃあ必然的に残ってるのは俺だけだし、おのずとこちらに意識が向くのは当然といえば当然だな。
どうやって戦おうか悩んでいると、いきなりスカル・ドラゴンが突っ込んできた。そのスピードは尋常ではなく、瞬く間に振り下ろされた爪が俺の目の前にまで迫ってきた。
「あ、危ない! ふう、危なかった。最初に奴の動きを見てなかったら直撃を食らっていたな……」
いきなりの奇襲をなんとか紙一重で躱した俺は、体勢を立て直すと同時に身体強化を全力で賭け、時空魔法の【クイック】と【スロウ】を唱える。自身に掛けるクイックは発動したが、やはり相手に効果を与えるスロウは抵抗されてしまったようだ。
「だが、諦めん! 【スロウ】!!」
「グオオオオ」
何度かスロウを放っていると、ようやく相手の抵抗を掻い潜ってスロウが発動する。しかしながら、それでも動きが少し鈍った程度の効果しか見込めず、相変わらずこちらが不利な状況は変わっていない。
「グアアア」
「はっ、ほっ、よっ、ちょ、ちょっと待てー。なんなんだこのいきなりのハードモードは!? 聞いてない!!」
スカル・ドラゴンの強力な攻撃を回避し続ける。だが、反撃のために放ったカウンターの攻撃は、効いているどころかこちらの拳に痛みが走った。
「ならば、魔法はどうだ? 【シャキードアイシクル】!!」
「ゴオオオオ」
魔族の炎の魔法をいとも簡単に飲み込んだ魔法を放つが、その魔法はスカル・ドラゴンの放ったブレスで掻き消えてしまった。それだけならまだしも、勢いのおさまらないブレスがこちらに襲い掛かり、危うく黒焦げにされるところであった。
「物理もダメ、魔法もダメ。いや、ブレスで掻き消されなければ、あるいは……」
それから、攻撃を隙を突いて魔法を当ててみたが、スカル・ドラゴンの持つ魔法耐性が邪魔をしているのか、有効的とは言えないダメージ量しか与えられなかった。それでも、確実にダメージは通っているようなので、魔法を主体に戦法を切り替えようとしたところで、その考えを破棄する。
「魔力には限りがある。このまま戦っていたら、魔力切れでこちらが先に戦闘不能になる」
作戦を考えている間にも、スカル・ドラゴンの苛烈な攻撃は止まることを知らず、回避を余儀なくされる。辛うじて避けられているとはいえ、いつ直撃してもおかしくない攻撃に嫌な汗が滲み出てくる。
「くそう、さっきまでイージーだと思っていたら、いきなりハードになりやがって! これがゲームだったら、とんだクソゲーだ!!」
そのクソゲーになるきっかけを与えたのは、他でもない俺自身だということを棚に上げ、この状況に悪態を吐く。一進一退の攻防が続く中、この状況に終止符を打つべく俺はとある切り札を切ることにした。
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