ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
閑話「吾輩は神。この世界を創った存在である」
吾輩の名はゴウニーヤコバーン。この世界を造りし創造神である。最近吾輩の造った世界に新しい人間がやってきた。
その者はこことは別の世界の記憶を持っておるが、肉体はこの世界で生を受けているという変わった人間だ。年齢もまだ成人していない十二歳と幼いが、言葉遣いや態度の諸々が前世に引っ張られておるのか少しばかり……否、かなり不遜な物言いをする小僧だ。
ところで、吾輩には少し変わった趣味がある。それは、小説を書くことだ。小僧が元々いた前世の世界にインターネットと呼ばれるものがあり、その中のサイトの一つに【小説家をやろう】というWeb小説投稿サイトがある。
そこでは数多くの作者が創造した数多くの物語が投稿されており、その数は数万作品にも及んでいる。そのサイトにこの吾輩も物語を書いているのだよ。ただし、その内容は空想の創作された物語ではないがね。
「さて、読者の反応はどうだね?」
そう独り言を呟きながら吾輩は、サイトの管理ページの感想一覧をクリックする。そこに記載されていた内容を読んでいくうちに徐々に苛立ちを覚える。
曰く「主人公の実力を隠す意味がわからない」だの「あのケモ耳少女が仲間になるのは頂けない」だの、挙句には「作者の言葉を作品に入れると世界観が壊れて萎える」だのと好き勝手に宣う。
「まったくもって度し難い連中だ。なら貴様らでそういう作品を書けばよいではないか! 作る側の身にもなってみろというものだ!!」
画面上に表示された読者の心ない一言に悪態を吐きながらも、それが作者の傲慢であるということもなんとなく理解している。読者は作者の作り上げた作品に対し、批判したり称賛したりできる権利を有している。これは読者自身が持っている当然の権利だ。
だからといって、一生懸命考えて作り上げたものを面白くないだの、もっとこうすればいいのではだのと頭ごなしに否定される作者側からすれば堪ったものではない。
「なら書かなければいいのでは?」という考えが浮かぶかもしれないが、それはそれとして別の問題が浮き彫りとなってくるのである。例えば、服が汚れるからという理由で一日中全裸で過ごすというのは、対外的にも衛生的にも倫理的にも何かしらの問題がある。それと同じで、読者に批判されたくないからといって小説自体を書かないという選択を取るのは愚の骨頂だ。
だからこそ吾輩は読者に対し、書き込まれた感想を物語に投影するという形を取ることで、意趣返しのようなことをしている。単純に「面白くない」、「ここをこうすればもっと良くなる」などの意見を述べることは問題ではないし権利としても認められているが、書き込む側としてもそれ相応の覚悟を持って書き込むべきだと苦言を呈したいのだ。……少なくとも、コメントをネタにされるくらいの覚悟は。
何か物を生み出すというのは、それだけで尊敬すべきことであるしどれだけの苦労と労力が創造者の手に掛かっているのかということを理解すべきである。
それは小説のみならず、漫画・アニメ・ゲームその他諸々のすべての作品や創造物と呼ばれる類のものは、創造者たちの血の滲むようなたゆまぬ努力と成果によって読者や利用者の目に届いているのだ。
そんな影の苦労も知らず、ただ純粋に何の苦労や努力もしていないコメントや感想を付ける連中の心ない言葉に、クリエイターたちがどれだけ心を痛めているのか、その思いは筆舌に尽くしがたい。
かといって、コメントや感想を付けるなというわけではなく、作品一つ一つに対して敬意を払うべきであり、ここが面白いという長所や絶賛すべき点を挙げるべきなのである。
仮にその作品が気に入らなければ、その作品を見たり読んだりしなければいいだけの話であり、その選択権は他でもない読者に委ねられているのだ。俗に言う“文句があるなら見るんじゃねぇ”である。
にも拘らず、何を勘違いしたのか読者たちはこれ見よがしに批判的な意見や感想を列挙し、あたかも「見てやっている読んでやっている」という上から目線甚だしい態度でコメントを書いてくる。はっきり言って不愉快極まりないものであり、作者のやる気が削がれる忌むべき以外の何物でもないと断言する。
“お客様は神様です”などという言葉や慣習が一時期蔓延したことがあったが、その時代はもはや終わったのである。客が店を選べるように、店も客を選べる時代なのである。
最近見た地球のニュースで、とある弁当屋に酔った客が来店し些細なことで口論となった挙句、店員に向かって罵詈雑言の暴言を吐いた上あろうことか小銭をその店員に投げ付けるという事件が起こった。
その客は店員に対し「こっちは客だぞゴルァ」だのという常時高圧的な態度で威圧し、心ない暴言を連呼したらしい。その時の状況を聞くだけで、対応した店員がどれだけ傷ついたのかは想像に難くない。
吾輩にとって批判的なコメントや感想を残す読者はこういった連中と同じであり、権利として認められていたとしてもそうすべきでないことは理解できるはずだ。
“自分がされて嫌なことは人にはするな”や“人の痛みが理解できる大人になりなさい”などと幼稚園や小学校の先生に教わったはずなのにもかかわらずそのような行動を取ってしまうことに神として呆れと驚きを隠せないのである。
よく小説でも魔王やそれに準ずる存在が「人間は愚かな生き物である」だの「人間は滅ぶべき種族」だのと宣っているが、それもあながち間違っていないので完全否定できないのが悲しいところではある。
今一度考えてみてほしい、そのコメントを残す必要はあるのか? そのコメントを書くことで自分が作者の立場だったらどう思うのか? どんな思いを抱くのだろうか? よく考えてみて欲しい。
もし吾輩の言葉が理解できないのなら、自分が物を作るという立場になってみればいい。そうすれば吾輩たちの気持ちが少しでもわかるはずだ。
何気ない一言がどれだけの人間を傷つけているのか、それを知って自分に何ができるのか、もう一度コメントを書く前に考えてほしい。
「まあ、作者は作者で自分勝手に暴走するところがある故、とどのつまりどっちもどっちと言えなくはないのだがな……」
読者が自分本位なコメントや感想を残すのであれば、作者は作者で自分の世界観を読者に押し付ける自己中心的なところがあると言える。そういった意味では読者と作者は永久に相容れない存在であると言えなくもない。
だからこそ、読者と作者の最も適切な距離感は、作者は自分が面白いと思うものを提供し、その作品を読んだ読者は面白ければ称賛または読み続け、面白くなければ他の作品を探しに行くという選択がお互いに損をしない方法なのではないだろうか?
読者は無駄な時間を取られなくて済むし、作者は不快なコメントを見なくて済むというお互いにとって利点があると吾輩は考えている。不味い飯を出す飲食店は、改善案を出したとしても不味いものは不味いし、そのうち客足が途絶えていずれ閉店することになるだろう。黙っていても廃れるものに対し、わざわざ鞭を打つような真似をするのは酷と言えるのではないだろうか?
「とりあえず、これから様子を見て駄目そうだったら感想の受付を停止しよう。まあ、もし駄目だった時の最終手段としてだがな……」
世の中綺麗ごとで成り立っているなどとは言わないが、少なくとも自分の目の届く範囲では、そういった目を背けたくなるようなことに時間を割くようなことはしたくないのである。
「よし、そうと決まれば次の話を執筆するとしよう」
誰にともなく呟いた吾輩は、端末に向かって執筆作業を再開する。この先読者たちがどんな反応を見せるのかはわからないが、それでも自分ができる精一杯で作品を書いていくことに尽力しようではないか。
後に投稿した小説のコメント欄で「糞つまらん」や「糞話のデパート」などと揶揄され、吾輩が憤慨したのは言うまでもない事であった。吾輩と読者の戦いは、まだまだ終わらないようである。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【作者の一言】
コメント欄で「世界観が壊れるような内容」と言われたので、なら作者の言葉自体を世界観の一つとして組み込んでやったぜ( ̄д ̄)ノ
というのは冗談だ。次回は真面目に異世界ファンタジーを書こう……。でも、ちょっとだけすっきりした自分がいる。反省もしないし後悔もしていない(^▽^)/
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