ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
70話「諸々の確認事項と二階層のボス」
「食った食った。やっぱ、モンスターの肉は美味いな」
そう言いながら、少し膨らんだお腹をぽんぽんと叩く。少し行儀が悪い気もするが、誰も見てないだろうしこれくらいいいだろう。
魔法で解体した角ウサギの肉は、完璧な血抜きができているため品質がかなり高い。シンプルな塩と胡椒の味付けのみで美味しくいただくことができるのである。
角ウサギの肉の味の感想はこれくらいにして、そろそろ二階層の攻略の続きを再開したいところだが、肉が美味すぎたため少しばかり食べた量がオーバーしてしまった。今しばらくお待ちいただきたい。
「ふう、そういえば鑑定が解析に進化したんだよな。これで今まで見れなかった情報が見れるかもしれない……」
ダンジョンの攻略を再開する前に、新しく進化したスキルの確認をするべく【解析】を使って解析自身を調べてみることにした。
【解析】:【鑑定】スキルの上位互換で、生物以外の詳細を知ることができる。レベルが上がることで、希少性の高いものや隠蔽系のスキルを看破できる確率が上がる。
……ほほほーう、これはかなり使えるスキルなんでないかい? さらに解析のスキルを詳しく調べていくと、様々なことがわかってきた。
まず鑑定だった頃と比べると、鑑定した相手の健康状態を知ることができるようになっていた。試しに俺を鑑定してみると状態という項目に健康と満腹という文字が表示された。
この結果から、相手の持病や本人すら気付いていない病気を早期に発見できるようになり、この世界で生きていくための安全性が僅かに上昇した。しかしながら、現在回復する手段がポーションなどの魔法薬しかないため、できるだけ早めに回復魔法を覚えたいところだ。……覚えられればの話だがな。
次に魔法系のスキルを調べてみるため、光魔法と闇魔法を解析すると以下の情報が出てきた。
【光魔法】:光の属性を持つ魔法を使用できる。
《習得魔法》ライト、ライトアロー
【闇魔法】:闇の属性を持つ魔法を使用できる。
《習得魔法》ダーク、ダークアロー
光魔法に関しての情報は以上だが、ここで改めて魔法についていくつかの説明を付け加えておく。
この世界での魔法は、特定の呪文を唱えることでそれに対応した魔法が発動するというのが常識とされているが、実際のところそうではない。例えば火魔法で火の球を相手にぶつける魔法といえば【ファイヤーボール】だが、何もファイヤーボールと唱えなくとも火の球をぶつける魔法は使うことができる。
仮に【フレイムボール】と唱えたとしても、その呪文によってもたらされる結果は【ファイヤーボール】と唱えた時と同じく火の球をぶつけるというものなのである。
よくファンタジー小説で“魔法を使うにはイメージ力が大事だ”という言葉がある通り、頭の中でイメージしたものを魔力を消費することで物理現象として再現できる技術、それが魔法なのである。
つまり、火の球をぶつける魔法にしろ、辺り一帯を氷の世界に変えてしまう魔法にしろ、大事なのはそれを頭の中でイメージするということで、それさえできていれば呪文の名前はあまり関係がないのだ。
そして、先ほど表示した光魔法のライトとライトアローというのは、この世界で一般的に使われている汎用的な魔法名であり、ぶっちゃけたところ【シャイン】でもいいし【シャインアロー】でも問題なく発動してしまうということだ。
重要なのはイメージ力であって、特定の決まった詠唱や呪文ではなく、いかに頭の中で思い描けているかということなのだから。
俺がこの法則に気付いたのは、レンダークの街を出発してからしばらく経ってからだったのだが、今まで使っていた呪文に不便さを感じたことはないので、特に気にすることはなかった。
「もしかしたらできるかもしれないから、一応試してみるか……」
光魔法と闇魔法を覚えたら、やってみたかったことがある。それは、この二つの属性の複合魔法が時空魔法なのではないかという検証だ。MMORPGなどでは、光と闇の二つの属性から時間や空間などに関係する魔法を覚える場合があった。今回ももしかしたらこの二つの属性のレベルが上がることで、そういった系統の複合魔法を覚えることができるかもしれないという結論に至ったのである。
「まずは光魔法のレベルを上げてみよう。てことで【ライト】」
ひとまず光と闇それぞれの魔法をレベル6にまであげるため、習得済みの魔法を連発していく。幸いなことに魔法を使っている間、他の冒険者の姿はなく誰にも気づかれずにレベル上げができた。
そこからしばらく訓練すること一時間ほどで、二つの属性魔法がレベル6になり改めて解析で調べてみると、俺の予想通りあっさりと【時空魔法】を覚えてしまった。そのあまりのあっさり加減に「それでいいのか時空魔法よ」と思わず口に出てしまったほどだ。
覚えられたことは俺にとっては嬉しい誤算だったので、特に気にすることなく【時空魔法】の詳細を確認していく。
【時空魔法】:時空の属性を持つ魔法を使用できる。
《習得魔法》クイック、スロウ、ストレージ
レベル1の時点で覚えていたのは三つの魔法で、クイックとスロウは何となく効果がわかるので割愛するが、問題なのは残りのストレージという魔法だ。さらに解析スキルを使ってストレージという呪文の詳細を調べた結果、その能力に驚愕する。
【ストレージ】:亜空間に生き物以外の物を収納しておくことができる。収納している間は時間経過による劣化が生じない。収納可能な容量は、以下の計算式で決定される。
時空魔法のレベル×(術者の魔力÷1000)×10トン。 ※ただし、時空魔法のレベルがMAXになった時点で収納できる容量は無制限となる。
「マジかよ……これで新しい魔法鞄を買う必要がなくなったみたいだな」
ストレージという呪文のお陰で、今まで何かと苦労していた魔法鞄の容量を気にすることなく狩りができるようになった。試しに腰に下げていた魔法鞄をストレージに収納してみると、黒いブラックホールのようなものが出現し、そこに魔法鞄を突っ込むと問題なく収納することができた。取り出しも特に問題はなく、これで装備以外は手ぶらで行動することができるようになってしまった。
今のところストレージに収納しておける容量は、計算式に照らし合わせると約100トンになっている。これでも十分な容量なのだが、最終的に時空魔法のレベルがMAXになれば容量制限が無くなるため、できれば早めにMAXにしたいところだ。
ダンジョン攻略を開始してから、かなり有益な能力を覚えることができたことに内心で小躍りしたい衝動に駆られながらも、なんとかその思いを抑え込み、二階層攻略を再開することにした。
俺が転移ポータルのあるセーフティーゾーンに入ってから、すでに一時間以上が経過している。食事も取ったし、確認したいことも粗方完了したので、少しだけ急ぎ足で三階層を目指す。
今まで抱えていた問題が一つ解決したことで、攻略のモチベーションもうなぎ登りに上昇し、やる気も漲ってくる。そんな俺の相手をしなければならないモンスターたちが不憫だと思わなくもないが、そこは諦めていただきたい。
二階層のボス部屋に行く道中、まだ確認していなかった【分離解体】のスキルを試してみたのだが、これはかなり便利なスキルということが判明した。以前モンスターの解体は、解体ナイフによる手作業で行い、途中から魔法を使った解体に切り替えていたのだが、この分離解体スキルを使えば解体から素材を入手できるまで数秒と掛からないのだ。
このスキルを手に入れたお陰で、モンスターの討伐から素材を解体し収納するまでの時間が短縮され、さらに効率的な狩りができるようになったのである。
その後も俺の快進撃は留まることなく、向かってくるモンスターを素材へと変えていく。そうしているうちにあっという間に二階層を踏破し、気付けば一階層の時に見た大きな扉が見えてきた。
今回は並んでいる冒険者の姿はなかったため、そのまますぐにボスに挑むことができた。扉の先にいたのは、二十匹ほどのゴブリンの群れとそのゴブリンよりも一回りほど大きなゴブリンが三匹いた。解析で調べてみると、大きなゴブリンはゴブリンリーダーという名前で、普通のゴブリンよりも能力値と所持しているスキルのレベルが高かった。
「たまには、肉弾戦で戦ってみるか。ああそうだ。時空魔法のレベル上げにこれも使っておこう。【クイック】、【スロウ】」
いつも魔法で一撃必殺をしてしまっているため、体を動かすという意味で肉弾戦を仕掛けてみることにした。一応時空魔法も鍛えるため、クイックとスロウを使いこちらの動きを素早く相手の動きを遅くした結果、それは見事な完封勝利だった。
その惨状は弱い者いじめという以外の何物でもなく、奴らが俺の姿を捕らえた時にはすでに勝敗は決していた。まともに戦うことすらできなかったゴブリンが可哀そうだが、これも弱肉強食の世界なのである。
ゴブリンたちの死骸から素材を回収し、三階層に続く扉を潜る。二階層の時と同じように、そこには転移ポータルと三階層に下りるための階段がある。
「今日は様子見程度だし、これくらいにしておくか」
焦って攻略することはないので、今回のダンジョン探索はこれくらいにしておくことにする。転移ポータルに触れ登録を終えると、俺は攻略を切り上げ地上に帰還することにしたのであった。
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