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ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく

こばやん2号

69話「二階層へ」



「え? 嘘だろ?」


 扉の先にはある程度の広さの空間があり、反対側には先に行くための扉があった。その扉も入ってきた扉と同じくらいとても大きい。それを守るかのように扉の周辺にはモンスターが陣取っていて、次の挑戦者を今か今かと待ち受けていた。


 その姿はまさに異形なる存在と言っても過言ではなく、見る人が見れば禍々しいと言える雰囲気を纏っている。常に決まった形をしておらず、俗にいうところの不定形という言葉で表現できる。そう、そいつの正体とは――。


「スライムですか、そうですか」


 こちらに気付いたスライムが、まるでぷっちんしたプリンのようにふるふると揺れている。……そういう目で見れば、実に美味しそうだ。
 大きさは通常のスライムよりも二回りほど大きく、目算で二メートル弱ほどの大きさだ。しかしながら、相手が最弱のスライムとあって拍子抜けもいいところであった。


 ボスというだけあって、もしかしたら特殊な個体なのかという可能性も考慮して鑑定を使って見たのだが、表示された結果は以下の通りだ。



【名前】:ビッグスライム

【年齢】:0歳

【性別】:不明

【種族】:スライム種

【職業】:なし(Eランク)


体力:300

魔力:30

筋力:E+

耐久力:E

素早さ:E-

器用さ:F

精神力:F+

抵抗力:F-

幸運:E-


【スキル】:体当たりLv2、物理耐性Lv2、吸収Lv1



 うん、まあ、一階層のボスならこれくらいだよね。わかってた。わかっていましたとも……。
 ビッグスライムの他にも通常サイズのスライムも何匹かいたが、それでも俺の脅威とは成り得ない。


 完全に舐めプ状態だが、一応油断はしないようにせめて範囲魔法を使って倒すことにし、スライムたちに向かって片手を突き出した。


「【アイスミスト】」


 ビッグスライムたちを真っ白な霧が包み込み、しばらくすると霧が霧散した。消えた霧から出てきたのは、凍り付いて動かなくなったビッグスライムたちの成れの果てであり、所謂一つの死骸というやつだ。


 戦闘をさせてもらえず、気付いた時には絶命していたスライムたちを哀れと思いながらも、残った死骸から素材となるスライムの核を取り出していく。
 取り出す際スライムの体が凍っていたため、若干手がかじかんでしまったが、とりあえず一階層のボスを攻略できたのでよしとする。


「てか、最初のボスとはいえ三分も掛からなかったな」


 あっけなく終わってしまったことに物足りなさを感じつつも、早く終わるに越したことはないという相反する感想を抱きつつ、次の階層に行くための扉を潜る。


 扉の先には、次の階層に降りるための階段と転移ポータルが設置されていた。一応次に来た時のために転移ポータルに触れてから、二階層に続いている階段を下る。螺旋状となっている階段を下り、たどり着いたその先には草原が広がっていた。


「二階層は草原フィールドってところか」


 MMORPGでもよくあることだが、ダンジョンというのは何も洞窟がずっと続いているものではない。ダンジョンによっては、山や海、森や砂漠などといった特定の環境を投影したタイプのダンジョンも存在する。おそらくだが、今回のこの草原もそれに該当するのだろう。


「モンスターは……ダッシュボアとスライム。あとゴブリンに、あれはウサギか?」


 二階層へとやってきた俺は、ひとまず周囲の様子を見てみた。一階層と比べると冒険者の数は減ってはいたものの、ちらほらと姿が見受けられることからまだ狩りの効率自体は良いとは言えない。
 草原にいるモンスターは見たところ一階層にもいたスライム・ゴブリンの二種に加えて、レンダークの街にいた時によく狩っていたダッシュボアとウサギ型の額に角を生やした見たことがないモンスターがいた。たぶん一角ウサギとか角ウサギという名前で呼ばれてそうな見た目だ。


 よく見てみると、先に一階層のボスと戦っていた二人組の冒険者もダッシュボアを狩っていた。特に絡む意味もないため、冒険者のいない方へとそのまま進むことにする。


「お、ウサギだ。さっそく鑑定鑑定っと」


 初見のモンスターだったので、鑑定を使って調べてみると予想通りウサギ型のモンスターは【角ウサギ】という名前で、Eランクのモンスターだった。風魔法で一撃で仕留め、そのまま魔法で解体して毛皮と肉と角と魔石を入手する。


 そのまま奥へ奥へと突き進んでいる道中で、他のモンスターともエンカウントを繰り返したが、大したモンスターではないので瞬時に戦闘が終わってしまう。寧ろ倒したモンスターを解体するのに掛かる時間の方が長いくらいだ。


 気付けばモンスターの討伐数が二十を超え、それなりに素材も集まり始めた。奥に進んでいくにつれ、モンスターの構成も単独行動をしている個体が減り、二、三匹のグループを形成していることが多くなり始めた。


「あれは……転移ポータルか?」


 襲ってくるモンスターを返り討ちにしながら進んでいると、周囲が岩に囲まれた開けた場所が見えてきた。ちょうど地球にあったストーンヘンジのような雰囲気の場所で、中央には先ほどボスを倒した扉の先にあった転移ポータルが設置されていた。


 ここが二階層の中間地点か一区切りの休憩ポイントだと結論付け、さっそくポータルに触れて登録をしておく。どうやらこの場所は一種のセーフティーゾーンとなっており、この場所から周囲を見渡してみたところモンスターの姿が一つとして確認できなかった。これがMMORPGなら、ここでログアウトできるのだろう。


「モンスターが襲ってこないなら、ここで少し休憩していくか」


 気付けば俺がダンジョンに入ってからかなりの時間が経過しているため、一旦休憩を入れることにする。体力的には疲労は一切感じていないが、精神的な疲労は確実に溜まっているだろう。それに働き過ぎは前世の頃と変わらない感じがするので、強制的に休みを取らねばなるまい……。社畜駄目、ゼッタイ。


「そうだ。一応ステータスを確認しとくか」


 基本的にステータスの確認は、寝る前にチェックしている。レンダークからオラルガンドまでの十数日間の月日が経過しているが、大きな変化といえば各パラメータがS判定にまで上がったことと、各スキルがレベルMAXになったことで上位のスキルへと派生進化したことだろう。今の能力はこんな感じだ。




【名前】:ロラン

【年齢】:十二歳

【性別】:男

【種族】:人間

【職業】:元領主の息子・冒険者(Cランク)


体力:8000

魔力:10100

筋力:S

耐久力:S-

素早さ:S-

器用さ:S-

精神力:S

抵抗力:S-

幸運:S-


【スキル】


 鑑定LvMAX→解析Lv1(NEW)、身体強化LvMAX→身体強化・改Lv1(NEW)、気配察知LvMAX→索敵Lv1(NEW)、

気配遮断LvMAX→隠密Lv1(NEW)、魔力制御LvMAX、魔力操作LvMAX→(魔力制御と魔力操作が統合)魔道の心得Lv1(NEW)、

火魔法LvMAX、水魔法LvMAX、風魔法LvMAX、土魔法LvMAX→(火魔法・水魔法・風魔法・土魔法が統合)四元素魔法Lv1(NEW)、

炎魔法Lv9、氷魔法Lv9、雷魔法Lv9、大地魔法Lv9、光魔法Lv1(NEW)、闇魔法Lv1(NEW)、剣術LvMAX→真・剣術Lv1(NEW)、

格闘術LvMAX→真・格闘術Lv1(NEW)、集中Lv6、スキル習得率アップLv2、スキル熟練度アップLv2、分離解体Lv1(NEW)



 ……おろろ? 何か新しいスキルが出てるな。なんだこれは? というよりも、改めて見てみるといろいろと変わってるな。まあ、一つずつ見ていくとしよう。


 まずはさっきも言った通り各パラメータがアップして体力と魔力が増加し、各種能力値がS判定にまで上昇した。
 次に各スキルがレベル最大にまでなり、上位のスキルに派生進化している。スキルレベルの最大は十がMAXとなっていて、それ以上は上がらない代わりにさらに強力な上位のスキルに進化するようだ。


 そして、場合によっては複数のスキルが統合され、新たなスキルとして発現することもあるらしい。
 それに加えて、どんな条件かはわからないが、いつの間にか光と闇の魔法を覚えていた。解体を続けていたことが要因となったのか、分離解体というスキルも発現している。


「ここにきていろいろと変わり過ぎだろ」


 自身の能力の変化に戸惑いつつも、とりあえずお腹が空いていたので、ダンジョンで手に入れた角ウサギの肉を焼いて食べることにした。

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