ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
45話「動き出す悪意」
ロランがオークの群れを倒した頃、それに気付いた者がいた。
~ Side ???? ~
「グォオオオオオ」
「ブヒ、ブヒブヒ?(いかがなされました。我が君?)」
一匹のオークジェネラルが、上位者である存在に向かって片膝をつきながら問い掛ける。
オークジェネラル以上の存在……それは、すべてのオークを従えるオークの王オークキングだ。
オークジェネラルよりもさらに大きな体格と威圧感を放ち、数多のオークを従える存在が今目の前にいる。
Aランク以上に分類されるモンスターは、冒険者の間で【絶対者】と呼ばれ恐れられている。
絶対者とは、モンスターの中でも破格の強さを誇り、数多くのモンスターを従えた存在である。
そのほとんどが人々を脅かす圧倒的な力と高度な知能を持ち合わせており、その存在自体が国を脅かす可能性すらある。
以前出現した絶対者はロードスライムというスライム種のモンスターだったらしいのだが、周辺諸国からかき集めたAランク冒険者のパーティー複数と一部のSランク冒険者でやっと討伐ができたほどだ。
尤も、スライムキングがSランクに分類されていたということもあり、それだけの大戦力が必要だったというのも頷ける。
そんな絶対者であるオークキングが、忌々しそうな顔を浮かべながら口を開く。
「テイサツニダシテイルドウホウガヤラレタ」
「ブ、ブヒブヒ!? ブヒ、ブヒブヒブヒ!(なっ、なんですと!? そ、そんな馬鹿な!)」
片言ではあるが、オークの頂点たるオークキングはその知能の高さ故に他種族の言葉を操ることができる。
それを理解できるオークジェネラルもまた非凡な存在であるのは間違いないが、そんなオークジェネラルがオークキングの言葉に驚愕を露わにする。
自分と同じオークジェネラルが倒されてしまったことにも驚きを隠せないといった感じだったが、すぐに王の御前であることを思い出し平静を取り戻す。
しかしながら、自分を入れてたった五匹しかいないオークジェネラルのうちの一匹が何者かに敗れたという事実は変わらず、王に今後の方針を問い掛ける。
「ブヒブヒブヒブヒ?(それでいかがいたしましょう?)」
「ノコリノドウホウヲヨビモドセ。スベテノセンリョクヲモッテ、ドウホウノカタキヲウツ」
このオークキングを頂点とする群れには、側近となるオークジェネラルが五匹おり、その下に通常種のオークを従えている。
五匹のオークジェネラルのうち二匹を拠点拡大を目的とした偵察に出し、残りの三匹を王の身を守る護衛として配置していたのだが、偵察に向かった二匹のうちの一匹がやられたことで危機感を覚えたオークキングが一度すべての戦力を終結させる判断を下した。
この考えにはオークジェネラルも賛成で、相手の戦力が少なくともこちらの主力級であるオークジェネラルを倒せる以上、出し惜しみをするわけにはいかない。
偵察部隊の部隊長を務めていたオークジェネラルが率いていたオークの数は、通常の数よりも少なかった。とはいえ、オーク自体も決して弱いわけではなく、寧ろモンスター全体の強さから見れば真ん中より少し上くらいというのが人間から見たオークの見解だ。
オークと人間を比べれば、モンスターであるオークの方が圧倒的な戦闘力を有していることは間違いないが、人間には冒険者などという存在がいることを彼らは知っている。
一部の冒険者の中にはたった一人でオークの群れと互角に渡り合う猛者がいるため、今回のオークジェネラルもその冒険者に倒された可能性が高いとオークキングもオークジェネラルも判断したようだ。
「ブヒ。ブヒブヒブヒ、ブヒブヒブヒ!(御意。我らのすべてをもって、我が君に勝利を捧げまする!)」
「ドウホウガモドリシダイ、シングンヲカイシスル。ソノコトヲスベテノドウホウニツタエルノダ」
「ブヒッ!(はっ!)」
王の下知を受けたオークジェネラルは、すべてのオークにその旨を速やかに伝達する。
モンスターとはいえその情報統制は人間と何ら遜色なく、瞬く間に王の下した命令が末端のオークにまで伝わった。
王の命令が発せられてから、残りの偵察部隊のオークジェネラルの群れに伝令が到着するまで三日、そしてすべてのオークが集結するまでにさらに四日を要したが、これでオークキングが率いる軍勢が出揃った。
オークたちの本拠地からレンダークの街までの到達時間は、大体五日から七日ほど掛かる。
準備がすべて整い、いざ人間のいる街へと進軍しようとしていたその時、空からオークの軍勢を見下ろす者がいた。
「ふーん、予定よりも少し早かったけど……想定の範囲内ではあるわねー」
見た目は妙齢の女性だが、実際はこの世に生を受けて少なくとも二百年は経っている世界の歴史を知る生き字引の一種族である。
表面積の少ないボンテージのような服に身を包み、種族としての特徴である褐色の肌に頭部には二本の角が生え揃っている。
腰まで伸びた長い髪をうなじから頭に向かってかき上げる。その際均整の取れた艶めかしい体が強調され、着衣から零れ落ちそうなほどの大きな胸がふるりと揺れる。
彼女の種族は、言わずと知れた世界に破壊と混沌をもたらす存在としてその歴史に名を刻んできた者……即ち、魔族である。
魔族の彼女が、なぜこれから街を襲撃しようとしているオークの軍勢を見下ろしているのかは想像に難くない。
数年という時を要し、彼女はたった一匹のオークを見守ってきた。そのオークを陰から支援し、徐々にその数を増やしていった結果、一匹だったただのオークはオークの王として、今この場に君臨するにまでに至ったのである。
しかしながら、彼女の目にはそのオークに対して情というものは一切なく、ただただ何の力も持たなかったゴミがある程度使える道具になったという僅かばかりの興味の色しか浮かべていない。
「わたしがここまで手を掛けてあげたんだから、人形は人形らしく精々踊ってちょうだい」
彼女の言葉が届いたのかは不明だが、その言葉が放たれたとほぼ同時にオークの軍勢がレンダークの街へ向け進行を開始する。
オークキングを筆頭にその下には四匹のオークジェネラルが控えており、さらに部隊のリーダーを務める通常種のオークの精鋭が一定数のオークを従えいくつもの部隊を編成している。
その総数は五千という途方もない数まで膨れ上がっており、人間の軍に換算すればその戦力は一万にも匹敵する。
それだけオークというモンスターは侮れない存在であり、まかり間違ってもオークの群れを単独でどうにかしてしまうというのは、常識の範囲を逸脱していると言って間違いはない。
「あの豚どもが人間の街を蹂躙するところを考えるだけで……嗚呼、感じてきちゃうっ」
そう呟いた彼女が舌なめずりをしながら自身の体を艶めかしくしならせる。
残念ながらその姿を見たものは皆無だったが、目鼻立ちの整った美女と言っても差し支えない彼女がそれをやれば実に絵になることだろう。特に男性であれば見惚れて動けなくなってしまうほどには……。
オークの軍勢が進行を開始したのを見届けた彼女は、どこかへと飛び去って行った。彼女の理想とする結末を信じて疑っていないようだが、完璧と思われた計画はとある一人の人間によって狂わされることになることをこの時の彼女は知る由もなかった。
この事実をレンダークの冒険者ギルドが知ることになるのは、ロランがオークジェネラルを狩った日から十日後のことになるのであった。
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