【短編】傾国の悪女は、王太子殿下を誑かして、本気で国盗りをするそうです。
2話
「女性に暴力を振るうなど…………。大変申し訳ないことをした」
「伯爵、お顔を上げてください」
「婚約の解消も全てそちらの希望通りにして構わない。息子が不適格だったと事実とともに公表しよう。他に何か希望はあるかい?」
これはチャンス。
にこりと微笑んで交渉の時間よ。
細かな理由は伏せ、侯爵家の存続的な事情から円満での解消をしたと公表して構わないと伯爵に伝えました。
この若い執事をくれるなら。
「エンダーをか……」
「お前! いつの間に男を誑し込んでいたんだ! こんなやつを私の代わりにしようというのか」
「あら? 彼は貴方の代わりにはなりようがないわ。彼のほうが優秀過ぎて」
「っ!」
イーライ様が近くにあった花瓶を掴んだ瞬間、エンダーがイーライ様に回し蹴りを食らわせていました。
……回し蹴りを。
「伯爵様、大切なご子息に怪我を負わせてしまいました。私と妻と息子は、本日付けでクビということで構いませんか?」
「えっ……あぁ、うむ」
全く予期していなかった怒涛の展開ですが、流れには乗っておきましょう。
「あら、では三人とも我が家で今日から雇いますわね」
「えっ……あぁ、うむ」
このあと、伯爵は暫くの間『えっ……あぁ、うむ』しか言いませんでした。
侯爵家に戻り、エンダーとその妻と息子を雇ったと執事のトニーに報告をすると、勢いよく頭を抱えられました。
「俺、執事なんですけどぉぉぉ!? 執事増やすって意味不明なんですけどぉぉぉ!? しかも婚約破棄ぃぃぃ? 意味不明なんですけどぉぉぉ!?」
「うるさいわよ?」
数時間後にエンダーと妻のオリビア、息子のカイを出迎えるまで我が家の執事の落ち込みようは尋常ではありませんでした。
そして、迎えた後は、絶望していました。
「若いって言ったのに、俺より年上ぇぇぃ! 嫁、若ぇぇぇぇ!」
「うるさいわよ」
エンダーは四二歳、オリビアは二七歳、カイは八歳でした。ついでにトニーは三六歳で未婚、彼女もいない。つまりは、ただのヒガミね。
エンダーはトニーのサポートを。トニーが何かもちゃもちゃ言っていましたが無視でいいです。
オリビアは侍女をしていたとのことですが、あまりの手際の良さに昇格をと思い打診しましたが、本人は今のままがいいとのことで、そのまま継続しての侍女を。
カイは庭師の見習いとのことでしたが、とても聡明な子だったので、どうせならと一般知識を勉強させることにしました。
午前中は勉強、午後は町の子たちと遊んで普通の生活というものを知っておくようにと。
「さて、侯爵領をきっちり運営していくわよ」
「はいっ」
「はい」
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コメント
amegahare
侯爵家や伯爵家の優雅な暮らしぶりを想像しながら読んでみました。一族の繁栄を絶やさないようにするためには、色々な策略が必要そうだと感じました。展開を予想できなかったので、おもしろかったです。