【短編】傾国の悪女は、王太子殿下を誑かして、本気で国盗りをするそうです。

笛路

最終話




 夜会に参加するたびに噂がどんどんと酷くなります。
 私の管轄下にある領地と違い、様々な思惑が渦巻く王都ではこういった噂は独り歩きしやすいです。

「やぁ、傾国の悪女さん」
「あら、美女に目が眩んだ、色狂いの王太子さん」
「色狂いは出てないだろ……」
「さっき聞きました」
「…………チッ」

 どうやら『色狂い』はお気に召さないようです。

「私はアマンダ一筋だからな」
「っ、もう。そうやって誂わないでくださいませ」
「本気なんだがな?」
「っ!」

 熱のこもった視線を向けられ、心臓がドクリと跳ねてしまいます。
 こういった会話では、どうやってもカイザー殿下に軍配が上がってしまいます。

「ところで。凄い目でこっちを見ている不敬罪のバカ息子がいるが?」
「最近、チラチラと現れるようになりまして」
「素早く消すか、じわじわと消すか、悩ましいところだな」
「まぁ、怖い。どちらにしても消されるのですね」

 クスクスと笑いながら、カイザー殿下にある提案をしました。

「噂を、事実にしてみませんか?」
「…………どの?」
「傾国の悪女は、王太子と結婚して、国盗りを狙っているそうで――――っ 」

 言い終わる前に、全身が締めつけられていました。王太子殿下の抱擁によって。

「楽しそうな顔をして。国盗りとは恐ろしい」
「ふふっ。その割に殿下も楽しそうですわね」
「愛しい女が、手に入るのだからな。だが領地はいいのか?」

 現実的ではなかったのですが、一つの方法を思いついたのです。
 女侯爵。
 様々な条件がありますが、お父様が病に倒れている今、一時的に私が爵位を持ち、次代に引き継がせることは法律上可能ではあります。
 それは当国の法律上、王太子妃になっても可能だとエンダーが教えてくれました。
 そこだけは、なんとなくカイザー殿下の手の上のような気もしますが、まぁいいです。

「私が細かな手出ししなくとも運営していけるシステムは作り終えましたので」
「ならば、その手腕と知識、しかと国にも活かしてくれるんだな?」

 なぜか勝ち誇ったようにカイザー殿下が笑われます。

「私は厳しいですわよ? それに黒い噂も沢山出るかも?」
「覚悟の上だ、愛しい人」
「では、国盗りしてみますわ。……渋々ですよ? 渋々」



 ―― fin ――



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