【短編】傾国の悪女は、王太子殿下を誑かして、本気で国盗りをするそうです。

笛路

6話




 殿下にニコリと笑いかけます。

「この二人、とても優秀ですの」
「……そうか。今は侯爵代理として領地運営に力を注いでいると聞き及んでいる。優秀な人材が揃って良かったな」
「ええ――――」

 殿下の耳元に唇を寄せて、囁きます。

得意ですのよ。裏から手を回してズルい人ね」
「――――っ!」

 殿下のお顔を真っ赤に染めることが出来ました。
 してやったりな気分です。

「アマンダ…………新しい婚約者はもう決まったのか」

 殿下が急に真顔になり、ぽつりとそう呟かれました。

「まだそういったことは考えていませんわ。殿下こそ、そろそろ婚約者を決めねばならないのでは?」
「…………解ってて聞くのか?」
「ええ、解ってて聞きます」
「私が愛した唯一は、絶対に手に入らないからな。一生独り身だ」

 ――――っ 

 いつもなら誰に聞かれようと『そのうち適当なタイミングで』と、のらりくらりと躱すくせに。

「……そうですか。ではご機嫌よう」

 顔が熱くて。
 殿下の前を立ち去ろうとしましたら、サッと手を掴まれてしまいました。

「……私は、想い続けているぞ」
「っ! …………は、ぃ」

 この日は社交もそこそこに足早にタウンハウスに戻りました。
 こそこそと裏で動いていたカイザー殿下を戸惑わせるつもりが、完全に心を乱されてしまい少し悔しいです。

 そして、更に悔しいことに、あのバカ息子イーライがあの場にはいなかったはずなのに、どこかで聞きつけたのか、『世紀の悪女アマンダは王太子を誘惑している』『傾国の悪女』なんて噂を流し始めました。

 ――――傾国? 上等じゃない。



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