勇者デリバリー~毒舌少女と純情王子の冒険譚~

花宵

21、謎の男

「どこで気付いたのだ?」


 突如、背後から聞こえる声。


「強いて言うなら最初から違和感あったなぁ」


 ガス欠寸前の体に鞭を打って、戦闘体勢をとる。


「ほう」


 偽王子は片方の口角を持ち上げ、
面白おもしろそうにこちらを眺めている。
 シェドと同じ顔なのに、その表情はどこか艶っぽい。
 次の言葉を待つように微動だにしない所を見ると、今は攻撃してくるつもりはないようだ。
 あたいは構えてた武器をホルダーに収めた。


「約束もしてへんのに用事で遅れたとか、そのくせ何故探すのに苦労するわけ?  矛盾してると思わへんか?」
「確かにな」
「極めつけは、ベタベタ触ってくる所やな。シェドはそんなこと出来へんもん」
「ふむ、この短時間でそこまで見抜くとは思ったよりやるな」


 偽王子は、面白おもしろい玩具を見つけたかのように不敵な笑みを浮かべた。


「助けてくれたのは感謝する。で、アンタの目的は何なの?」
「クク、目的はもう果たした」


 そう言うと、偽王子は姿を消した。
 結局、シェドと同じ顔をした謎の男の正体は分からへんかった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品