勇者デリバリー~毒舌少女と純情王子の冒険譚~

花宵

20、偽物の王子

「フレアランスシャワー」


 次の瞬間、天から火の矢が降ってきた。
 火が弱点のワーフウルフは一目散に逃げだした。


「マコト様、大丈夫ですか?」


 心配そうに駆け寄って来た王子様。
 全然簡単な魔法とちゃうやん、このハイスペック野郎め。


「シェド……遅いよ」
「すみません、少々用事があって遅れました」
「助けてくれて、ありがとう」


 そう言って、あたいは王子様に抱きつく。
 王子様はあたいを抱きしめ、優しく頭を撫でた。


「よく、ここが分かったね?」


 あたいは王子様の後頭部に手を回した。


「探すのに苦労しましたよ」


 そして、彼の耳元で囁くように言った。


「で、アンタは一体誰だい?」
「何をおっしゃっているんですか、マコト様」


 あたいは、ポイズンダガーを王子様のうなじに押しあてる。


「いつまでしらを切るつもり?」


 王子様はククっと喉で笑った後、あたいの腕の中から消えた。

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