勇者デリバリー~毒舌少女と純情王子の冒険譚~

花宵

7、純情王子

 気がつくと、あたいは綺麗なドレスに身を包んでいた。
 よぼよぼの婆さんに案内されて入った部屋には、美味しそうな焼き菓子と紅茶の香りが漂っている。


「申し遅れました。私はサウスザント王国第一王子、シェルフィードと申します。親しみを込めてシェドとお呼び下さい」
「却下」


 さっき貴様呼ばわりしてましたよね?
 あたいの事殺しかけましたよね?
 ……胸、見ましたよね?


「よければ、勇者様のお名前もお聞かせ願えませんか?」
「クレイジーピエロ」
「素敵なお名前ですね」


 正気か?  嫌みか?  お世辞か。
 というか、これはテメェの呼び名だよ。


「あたいの名前は如月マコト、何で急に態度変えたん?」
「あなたが勇者様だと分かったからです」
「あたいが言っても信じへんかったやん」
「お恥ずかしながら、男性と間違えてしまったもので」
「胸見て態度変えたんだ……」
「ほ、本当に申し訳ありませんでした」


 おいおい、そんな頬を赤く染められたらこっちまで恥ずかしくなんだろ。お願いだからやめてくれ。

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