勇者デリバリー~毒舌少女と純情王子の冒険譚~

花宵

4、調子にのった罰

 親父から逃げきったあたいは、とりあえず路頭に迷っていた。

 だって、目覚めたら異世界だよ?
 無一文だよ?

 いくらゲームとはいえ、あんまりやわ。
 チュートリアルぐらい用意せーや。

 おまけに使えるスキルは、盗賊仕様のものばかり。
 縄抜けとか、スリとか、目眩めくらましとか。
 どの辺が究極スキルなのか是非とも教えて頂きたい。

 唯一誇れるのは、速さだけ。
 うん、敏捷なら誰にも負ける気はせぇへんな。


 ぐきゅるるるる。


 そして、すこぶる腹減はらへった。
 ゲームなのに腹減はらへった。
 果実だけじゃ全然足りない。

 トボトボ森をさまよっていると、大きな屋敷についた。
 そして庭から美味しそうな焼き菓子の匂い。
 速さだけでなく、あたいは鼻も利くようになっていた。

 持ち前の究極の盗賊スキルを駆使し、難なく庭園に侵入。
 目標を視界に捉えて、色とりどりの焼き菓子を確認。
 偉そうな奴に、執事的な奴がお茶を淹れている。

 少しだけそのお菓子、あたいに分けておくんなし。


「秘技、目眩めくらまし!」


 自分で言ってて恥ずかしくなってもうた。
 でも、背に腹は変えられへんねや。
 煙幕的な物をその場に投げ入れ、あたいは目的のテーブルへ。

 焼菓子を片手に数個携え、逃げるはずだったんでさ。
 だけど、なんであたいは地面に寝転がってんだい? 

 そうか、ヘマやっちまったんすね。
 親父相手に調子こいて、俺つえェエエーって勘違いした罰。
 すいません、間違えました、俺はえェエエーでした。

 究極のスキルがあっても、あたいのレベルはまだまだひよっこ。
 使いこなせるわけなかったと言うことですかい。

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