今日も期間限定彼氏に脱がされています
第15話 お前、セックスは好きか?
「……」
「……はぁ」
古賀はドアノブを握りながら大きくため息をついた。
「お前、この後の予定どうなってる?」
「え、特に会議とかなくて今日は定時に帰るつもりだったけど……」
「俺もこの後は会社で大きな予定入ってないんだよなぁ」
私の返事に落胆したように、古賀は再び深くため息をついた。
「ってことは最悪、明日まで誰もここには来ないってことか」
「そ、そんな……」
この密室で古賀と一晩過ごさなければならないなんて、一体どうしたら……私はそんな気持ちでいっぱいになり、古賀からさっと離れて物理的な距離を取った。
「……」
「……」
私が離れたことに何も反応せずに古賀は立ったままうつむいてじっとしており、私たちはしばらく無言で呆然と部屋の中で立ち尽くしていた。この沈黙はいつまで続くのか……余計に気まずい気持ちになった私は、閉じ込められる前に古賀が発した言葉を思い出してこの沈黙を破った。
「えっとそうだ、古賀さっき、何か話があるって言ってなかった?」
古賀はゆっくりと顔を上げて私をじっと見つめる。
「あぁ、話な」
そう言って古賀は私に近づくので、私は思わず後ずさりしてしまい古賀に壁ドンされるような体制になってしまう。古賀は私の目をじっと見つめながら顔を近づけて話し始めた。
「お前、セックスは好きか?」
突然『セックス』という言葉を古賀が口にするので、私は動揺してしまい、一気に赤面する。
「セ、セセ、セックス!?」
またここで突然交わることになってしまうんじゃと思った私は、思わずギュッと体を強張らせて身構えた。
「俺はセックスが好きだ。お前とのはすごく……いい」
ここでもしたいなんて言い出すんじゃないかと私は怪訝な顔をして話を聞いている。
「だから、ずっとしていたいし今だって……したい」
古賀は真剣な顔で話を続ける。
「すればする程、通じ合うものがあるっていうか、お互いを高め合うことができるっていうか――」
「ちょっと、な、何言ってるの急に!?」
もう、突然何言ってるの古賀は……と驚きながら、私は目をまん丸くして古賀を見つめながら話を遮った。
私は古賀がまた自分勝手なことを言い出したことに腹が立ってきて、古賀を責め立てる言葉が止まらなくなってきた。
「前にも言ったけど、それって好きな人とするものでしょ?古賀はするのが好きだから好きじゃない人とでもいつでもどこでもできるのかもだけど」
遂に心の中の怒りが爆破して、私は古賀を涙目で睨みつけた。
「私は好きな人じゃないと気持ちよくなんてない……!」
すると古賀は何かを探るような視線で私に問いかけてきた。
「お前、俺とのセックス、ずっと我慢してやってたのか……?」
「……!!」
果たして私は我慢していたんだろうか……初めから何故かとろける程に気持ちよくて、遂にはそれを夢にまで見て、甘い声を上げて全身で古賀を感じまくっていた淫らな自分。そんな姿が脳裏に生々しく浮かんできて、私は言葉をつまらせて耳まで真っ赤になり俯いた。そんな私を見て、古賀はガクっと肩を落としながら言葉を続けた。
「お前にそういう態度取らせちゃってるのって、全部俺のせいだよな」
「そういう態度……?」
「俺のこと、最近避けてるように見える。俺がお前の気持ちに気づかないで勝手にセックスしまくってたから……」
「え……?」
「俺だけ気持ちよくなっててすまない」
「は?」
そういうことじゃなくて……ともう突っ込む気も失せつつあるその時、古賀が思いもよらない事をポツリポツリと話し始めた。
「お前のこと考えてるつもりだったんだ」
寂しそうな声と一緒に古賀の口から言葉がこぼれ落ちる。
「俺が巻き込んだ仕事のことでお前が悩んでいるのをどうにかしたくて……そんな沈んだ顔のお前を見ていられなくて気持ちよくなるようにって努力してるつもりだった……」
私は古賀の話を聞きながら、私としている時の古賀の様子を思い浮かべていた。大きく包み込む手、甘く私の胸先を含む口元、柔らかく重ねてきた唇、大きくて広い背中……。初めは強引だったかもだけど、その後は私が気持ちよくなるように一生懸命してくれていたのかも知れない。私があんなに快感に溺れてしまったのは、古賀を体だけではなく心でも受け容れていたからなのではないか……。古賀の姿を思い出しているとそんな考えが一気に全身を駆け巡り始める。私はずっと靄がかかっていたように不明瞭だった古賀に抱いている気持ちの輪郭が、だんだん見え始めていた。しかし古賀は悲しそうな声で話を続ける。
「それなのに俺はお前の本当の気持ちに気づかずにひどいことをしてしまった。気持ちよくなんかなかったよな……」
古賀は深くため息を付いて床をじっと見つめた。
「好きでもない俺とのセックスに付き合わせて、本当にすまなかった……」
そう言って、古賀は私に頭を下げた。私に頭を下げる古賀の姿がゆらゆらと目の前で揺れる。私は涙が目から溢れていることに気づいた。何故だろう、『好きでもない俺』という言葉が、小さな小石がカランと透明な瓶の中で転がるように私の心の中で響く。好きでもない……?違う、古賀、違うのそうじゃないの……。
「んっ……うっ……」
私は自分の気持ちを言葉にしようとするが、意図せず大粒の涙を流して嗚咽を初めてしまい、言葉にならない。古賀はその声を聞いてバッと顔を上げ、泣いている私を見ると更に悲痛な表情になった。
「今だってこんなにお前を泣かせてしまって……俺はどうしてこんなに……」
古賀は頭を片手で自分の髪の毛をクシャっとしながら苦々しくつぶやいた。
「最低な男なんだ」
さらに弱々しく古賀は言葉を続けた。
「だからもう、お前に関わらないほうが良いのかもしれない……」
このままでは古賀が遠くに行ってしまう、本当の私の気持ちを伝えないと、と私の心の叫びは、ざわざわとした焦りを帯びていた。私は嗚咽を抑えながら必死に古賀に呼びかける。
「こ、古賀、そうじゃないの」
「……?」
「最低なんかじゃないよ」
「最低じゃない……ってことは」
古賀は顔を上げて私の目をまっすぐに見つめる。
「気持ちよかった……?」
「いや、そういうことでもなくて」
どうして古賀との行為が気持ち良いか気持ちよくい良くないかということがここで出てくるのか、古賀はそれが気持ちと比例しているとでも思ってるのかな?と私は不思議になりながら言葉を続けた。
「あのね、古賀」
「私、嫌――」
思い切って古賀に伝えようとしたその瞬間、部屋の扉の鍵がガチャっと開く音がした。私は咄嗟に自分の口を抑える。そして間もなくして扉が開いた。
「あれ?」
中に入ってきたのは別部署の社員。私たちは慌てて仕事をしている風を取り繕い、古賀は笑顔で別部署の社員に話しかけた。
「あーよかった、ここで資料探していたら閉じ込められちゃったんですよ」
別部署の社員は驚いた顔をして会話を返す。
「うわ、そうなんだ!ここ電波悪いから携帯も通じが悪いし俺、ここに来てよかったわ~」
「はい、ありがとうございます……助かりました」
私も古賀に合わせてお礼を言い、涙が見えないように頭を下げ、古賀と共に部屋から出た。古賀は私の顔を心配そうに覗き込む。
「沖村……その……平気か?」
私は密室から出たことで、急に現実に戻されたような気分になって恥ずかしさがこみ上げてきた。
「うん、平気……」
「そっか。で、さっきのだけどお前何か言いかけて――」
古賀が私が言いかけたことの続きを聞いてきた時、遠くから古賀を呼ぶ声がした。
「いたいた、古賀―!」
古賀の部署の男性社員だ。
「お前どこいってたんだよ~、携帯繋がらないし、探したぞ」
「あぁ、ごめん。ちょっと資料室こもってた」
「ちょっと急ぎで必要なデータがあってさ、ちょっと今からいいかな」
そう言って古賀は男性社員に促されて廊下を有るき出し、何回も私の方を振り向くがどんどんその姿は遠くなっていった。
古賀、私気づいたよ。嫌なんかじゃないの。本当は心も体も気持ち良かったんだって――ようやく自分の気持ちを理解できた私は、古賀の後ろ姿を少し微笑みながら眺めていた。
「……はぁ」
古賀はドアノブを握りながら大きくため息をついた。
「お前、この後の予定どうなってる?」
「え、特に会議とかなくて今日は定時に帰るつもりだったけど……」
「俺もこの後は会社で大きな予定入ってないんだよなぁ」
私の返事に落胆したように、古賀は再び深くため息をついた。
「ってことは最悪、明日まで誰もここには来ないってことか」
「そ、そんな……」
この密室で古賀と一晩過ごさなければならないなんて、一体どうしたら……私はそんな気持ちでいっぱいになり、古賀からさっと離れて物理的な距離を取った。
「……」
「……」
私が離れたことに何も反応せずに古賀は立ったままうつむいてじっとしており、私たちはしばらく無言で呆然と部屋の中で立ち尽くしていた。この沈黙はいつまで続くのか……余計に気まずい気持ちになった私は、閉じ込められる前に古賀が発した言葉を思い出してこの沈黙を破った。
「えっとそうだ、古賀さっき、何か話があるって言ってなかった?」
古賀はゆっくりと顔を上げて私をじっと見つめる。
「あぁ、話な」
そう言って古賀は私に近づくので、私は思わず後ずさりしてしまい古賀に壁ドンされるような体制になってしまう。古賀は私の目をじっと見つめながら顔を近づけて話し始めた。
「お前、セックスは好きか?」
突然『セックス』という言葉を古賀が口にするので、私は動揺してしまい、一気に赤面する。
「セ、セセ、セックス!?」
またここで突然交わることになってしまうんじゃと思った私は、思わずギュッと体を強張らせて身構えた。
「俺はセックスが好きだ。お前とのはすごく……いい」
ここでもしたいなんて言い出すんじゃないかと私は怪訝な顔をして話を聞いている。
「だから、ずっとしていたいし今だって……したい」
古賀は真剣な顔で話を続ける。
「すればする程、通じ合うものがあるっていうか、お互いを高め合うことができるっていうか――」
「ちょっと、な、何言ってるの急に!?」
もう、突然何言ってるの古賀は……と驚きながら、私は目をまん丸くして古賀を見つめながら話を遮った。
私は古賀がまた自分勝手なことを言い出したことに腹が立ってきて、古賀を責め立てる言葉が止まらなくなってきた。
「前にも言ったけど、それって好きな人とするものでしょ?古賀はするのが好きだから好きじゃない人とでもいつでもどこでもできるのかもだけど」
遂に心の中の怒りが爆破して、私は古賀を涙目で睨みつけた。
「私は好きな人じゃないと気持ちよくなんてない……!」
すると古賀は何かを探るような視線で私に問いかけてきた。
「お前、俺とのセックス、ずっと我慢してやってたのか……?」
「……!!」
果たして私は我慢していたんだろうか……初めから何故かとろける程に気持ちよくて、遂にはそれを夢にまで見て、甘い声を上げて全身で古賀を感じまくっていた淫らな自分。そんな姿が脳裏に生々しく浮かんできて、私は言葉をつまらせて耳まで真っ赤になり俯いた。そんな私を見て、古賀はガクっと肩を落としながら言葉を続けた。
「お前にそういう態度取らせちゃってるのって、全部俺のせいだよな」
「そういう態度……?」
「俺のこと、最近避けてるように見える。俺がお前の気持ちに気づかないで勝手にセックスしまくってたから……」
「え……?」
「俺だけ気持ちよくなっててすまない」
「は?」
そういうことじゃなくて……ともう突っ込む気も失せつつあるその時、古賀が思いもよらない事をポツリポツリと話し始めた。
「お前のこと考えてるつもりだったんだ」
寂しそうな声と一緒に古賀の口から言葉がこぼれ落ちる。
「俺が巻き込んだ仕事のことでお前が悩んでいるのをどうにかしたくて……そんな沈んだ顔のお前を見ていられなくて気持ちよくなるようにって努力してるつもりだった……」
私は古賀の話を聞きながら、私としている時の古賀の様子を思い浮かべていた。大きく包み込む手、甘く私の胸先を含む口元、柔らかく重ねてきた唇、大きくて広い背中……。初めは強引だったかもだけど、その後は私が気持ちよくなるように一生懸命してくれていたのかも知れない。私があんなに快感に溺れてしまったのは、古賀を体だけではなく心でも受け容れていたからなのではないか……。古賀の姿を思い出しているとそんな考えが一気に全身を駆け巡り始める。私はずっと靄がかかっていたように不明瞭だった古賀に抱いている気持ちの輪郭が、だんだん見え始めていた。しかし古賀は悲しそうな声で話を続ける。
「それなのに俺はお前の本当の気持ちに気づかずにひどいことをしてしまった。気持ちよくなんかなかったよな……」
古賀は深くため息を付いて床をじっと見つめた。
「好きでもない俺とのセックスに付き合わせて、本当にすまなかった……」
そう言って、古賀は私に頭を下げた。私に頭を下げる古賀の姿がゆらゆらと目の前で揺れる。私は涙が目から溢れていることに気づいた。何故だろう、『好きでもない俺』という言葉が、小さな小石がカランと透明な瓶の中で転がるように私の心の中で響く。好きでもない……?違う、古賀、違うのそうじゃないの……。
「んっ……うっ……」
私は自分の気持ちを言葉にしようとするが、意図せず大粒の涙を流して嗚咽を初めてしまい、言葉にならない。古賀はその声を聞いてバッと顔を上げ、泣いている私を見ると更に悲痛な表情になった。
「今だってこんなにお前を泣かせてしまって……俺はどうしてこんなに……」
古賀は頭を片手で自分の髪の毛をクシャっとしながら苦々しくつぶやいた。
「最低な男なんだ」
さらに弱々しく古賀は言葉を続けた。
「だからもう、お前に関わらないほうが良いのかもしれない……」
このままでは古賀が遠くに行ってしまう、本当の私の気持ちを伝えないと、と私の心の叫びは、ざわざわとした焦りを帯びていた。私は嗚咽を抑えながら必死に古賀に呼びかける。
「こ、古賀、そうじゃないの」
「……?」
「最低なんかじゃないよ」
「最低じゃない……ってことは」
古賀は顔を上げて私の目をまっすぐに見つめる。
「気持ちよかった……?」
「いや、そういうことでもなくて」
どうして古賀との行為が気持ち良いか気持ちよくい良くないかということがここで出てくるのか、古賀はそれが気持ちと比例しているとでも思ってるのかな?と私は不思議になりながら言葉を続けた。
「あのね、古賀」
「私、嫌――」
思い切って古賀に伝えようとしたその瞬間、部屋の扉の鍵がガチャっと開く音がした。私は咄嗟に自分の口を抑える。そして間もなくして扉が開いた。
「あれ?」
中に入ってきたのは別部署の社員。私たちは慌てて仕事をしている風を取り繕い、古賀は笑顔で別部署の社員に話しかけた。
「あーよかった、ここで資料探していたら閉じ込められちゃったんですよ」
別部署の社員は驚いた顔をして会話を返す。
「うわ、そうなんだ!ここ電波悪いから携帯も通じが悪いし俺、ここに来てよかったわ~」
「はい、ありがとうございます……助かりました」
私も古賀に合わせてお礼を言い、涙が見えないように頭を下げ、古賀と共に部屋から出た。古賀は私の顔を心配そうに覗き込む。
「沖村……その……平気か?」
私は密室から出たことで、急に現実に戻されたような気分になって恥ずかしさがこみ上げてきた。
「うん、平気……」
「そっか。で、さっきのだけどお前何か言いかけて――」
古賀が私が言いかけたことの続きを聞いてきた時、遠くから古賀を呼ぶ声がした。
「いたいた、古賀―!」
古賀の部署の男性社員だ。
「お前どこいってたんだよ~、携帯繋がらないし、探したぞ」
「あぁ、ごめん。ちょっと資料室こもってた」
「ちょっと急ぎで必要なデータがあってさ、ちょっと今からいいかな」
そう言って古賀は男性社員に促されて廊下を有るき出し、何回も私の方を振り向くがどんどんその姿は遠くなっていった。
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