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今日も期間限定彼氏に脱がされています

ぴよももし

第9話 古賀の彼女と私の体

「古賀くん、最近雰囲気変わったよね」
「えっ!?」

 先輩の大谷さんとのランチ中に突然古賀の名前が登場したので、私は過剰に驚いてしまった。しかし大谷さんには私の動揺は伝わってないようだったので、私はごまかすように話を続けた。

「ま、前より話しかけやすくなりました?」
「うん、ぜんぜん違う。古賀くんってあまり話す方じゃなかったのに、最近は笑顔も増えたし、よく立ち話してるの見かけない?」

 大谷さんの話を聞いて、そういえばこの前見かけた時も、古賀は愛想よく社内で立ち話をしていて、私は見なれない古賀の笑顔のせいで妙に悶々としたっけなと思い出した。さらに大谷さんはワクワクしながら会話を続け、こう言った。

「だから彼女でもできたんじゃないかって噂になってたんだけど」

 彼女……?その単語を聞いた私の胸はズキンと反応した。

「この間、広報の新人ちゃんがね、古賀くんに彼女いるのかどうか聞いたんだって」

 私は楽しそうに進む大谷さんの会話の先にある展開に緊張しながら耳を傾けた。

「そうしたら、いるよって言ったんだって!」
「……」
『いるよ』という古賀が答えた事実。私は一瞬で頭の中が真っ白になるのを感じた。
「あの古賀くんに影響を与える彼女ってどんな人なんだろ、沖村は何か知ってる?」
「……いいえ」

 そうぼそっと私は答えながら、なぁんだ、古賀って彼女いるのにあんなことするんだ。……バカみたい。と心の中で、何かがすぅっと冷めていくのだった。
 大谷さんとのランチを済まして午後の業務をしていたら、いつの間にか夜になって残業時間に突入。気づくとフロアには私だけしかいなくなっていた。夢中でキーボードを打っていると背後から呼びかけてくる声がした。

「沖村?お前まだ残ってるのか?」

 古賀だった。

「ちょうど終わったとこ……」

 昼に大谷さんから聞いた話が脳裏をよぎる。彼女……いるよ……。私は古賀と深く関わるのはもうやめようと思い、お疲れ様といって古賀をあからさまに避けた。

「だから」
 そう言って、古賀の横を足早に通り過ぎようとしたその時、古賀が後ろから私の手をぐっと掴んだ。

「なんで避けるんだよ」

 古賀は私を後ろから抱きしめると、私の胸元を弄り始めた。

「や……っ」

 瞬く間に私の胸先は古賀の指で刺激され、私はその快感に抗えない。

「だめ……誰か来たら……」
「こんな時間じゃもう誰も来ねぇよ」

 古賀はそう耳元で囁くと、私の背中を立ったまま壁に押し付けて胸先を吸いながら、激しい手付きでショーツの中に手を入れて指で刺激し始めた。

「あ……うっ……」

 敏感な箇所を刺激され続けて意図せず漏れる私の甘い声。古賀の指先によって溢れてくるいやらしい音がフロア内に響いていく。私は古賀の激しい愛撫に溺れそうになった時、
「古賀くんの彼女ってどんな人なんだろう」という、昼に話した大谷さんとの会話が脳裏に蘇った。

「……私は」

 私はそっと古賀の肩に手を置いて、訴えかけた。

「好きな人じゃないと嫌だよ……」

 古賀は好きな人ではなくても良いのかもしれない、でも私はやっぱりこんな関係は割り切れないのだ。

「……」

 古賀は何も言わずに私の背後に回ると私の腰をぐっと両手で持った。

「こ、古賀……?」
「わかってるよ」

 そう言うと、古賀がピリッと何かの風を開けている音がする。古賀が避妊具を開けていることが分かった私がそうじゃないんだけど!?と慌てているうちに、古賀はぐっと私の腰を自分の腰と密着させた。

「待って……!!やめっ」

 私の静止はフロア内の闇に弱々しく消え、代わりに古賀がぐっと私の中に入ってきた。

「あ……っ、やだぁ……」

 言葉とは裏腹に、激しく打ち付けてくる古賀の下半身が与えてくる快感に応じて濡れていく私の体。私は突然の交わりに混乱しながら古賀に懇願した。

「あぁ……やめて……こ、こんなの……っ」

 しかし古賀の動きは止まらず激しい息遣いが背後から聞こえてくるばかり。誰もいない夜のフロアには、古賀と私の激しい息遣いと下半身がぶつかり合ういやらしい音が響いていた。私は後ろから激しく突かれ、その度に私の体を支配していく快感を感じて、敏感な反応が止まらなくなっていた。しかし古賀が私に与えてくる、どうしようもなく抑えきれない抗えぬ快感に溺れていくのと同時に、他に好きな人がいるくせに……という虚しい気持ちもこみ上げてくるのだった。

「んんぁ……っ」

 だんだんと快感が優って抗う言葉も少なくなってきた頃、私は思わす声を上げて頂点に達したのだった。
 古賀との激しい交わりが終わった後、私達は乱れた着衣を整えてフロアを後にした。古賀はどうして平然と私を抱けるのだろう……。私は全く心の整理がつかないまま古賀に問いかけた。

「古賀は……ちゃんと彼女がいるんでしょ?」

 古賀は怪訝な顔をして私を見つめる。

「沖村……?」

 私は虚しさで胸が一杯になり、古賀に言葉を投げた。

「だったらもう、私とこんなことしちゃダメだよ」
「え?沖村!!……何言っんだよ」

 古賀を置いて足早に歩くと、背後から呼び止める古賀の声が聞こえてきた。仕事のためだったんだもの、だからあんな風に無理やり抱かれても、そこに古賀が私を好きだという気持ちが微塵もなくっても、全然悲しくなんてないもの……と私は自分に言い聞かせるように振り返らずに古賀の声を振り切った。
頬に当たる風が妙に冷たい。私の頬には悔しいのか悲しいのか虚しいのか、整理のつかない涙が伝っていた。

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