カレカノごっこ。
62
月曜日、学校へ行くと水島くんに呼び出されて、また屋上に向かった。
今日は晴れていて、もうすぐ冬なのに心なしか暖かかった。
「伊吹に会えた?」
「うん、会えた。ブレスレット渡してきた」
水島くんは伊吹くんのこと、すごく気にしている様子だった。
「伊吹、なんか言ってなかった?」
「別に何も。でも私が行くとすごく嫌そうだった。もうくんなって」
「あいつ、ひどくない?」
「ひどいよねー。だから嫌がらせでまた行くんだ」
「え、井上さんって、そんなこと言うタイプなんだ?」
つい伊吹くんと話しているテンションで喋っていると、水島くんは毒を吐く私の言葉に驚いていた。
「よくよく考えたら腹立ってきて。なんで何も言ってくれなかったんだろーって」
「ほんとだよな。そんな大事なこと。俺もちゃんと言ってほしかった」
「心配かけたくなかったのかな?」
「同情されるのがイヤだったのかも」
私たちがいくら伊吹くんの気持ちを想像したって分からない。
結局、伊吹くんの気持ちは伊吹くんにしか分からないから。
「今日、俺伊吹のところ行くつもりだけど、井上さんも行く?」
「えー、水島くんが行くなら私は遠慮しとくよ」
「なんでよ。一緒に、なんで病気のこと言ってくれなかったのか聞きに行こーぜ?」
確かに1人で聞くより、水島くんが一緒にいてくれた方が安心だ。
私が1人で聞きに行くと、深刻な雰囲気になってしまいそうだし。
感極まってまた泣いちゃったりしたらイヤだし。
水島くんがいたら冗談っぽく明るくなんでも聞けそうな気がする。
でも。
「私と2人で行って彼女さんに怒られない?」
「え。俺の彼女、知ってんの?」
「伊吹くんがよく言ってたから」
私を最初にデートに誘った時も、伊吹くんは彼女ができたての水島くんのことを羨ましがってたもんな。
「こっわ。あいつ、井上さんに俺の話とかすんの?」
「蓮がー、ってよく聞くよ」
「ってか井上さん、いつの間にそんな伊吹と仲良くなってんの。なんか妬けるわ」
「水島くんってホント伊吹くんのこと好きだよね」
放課後。
伊吹くんの元へ向かう途中も水島くんとずっと伊吹くんの話をしていた。
水島くんから聞く伊吹くんの話はどれも新鮮だった。
水島くんがあまりにも楽しそうに話すから、本当に伊吹くんのこと、大好きなんだなーって思った。
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