カレカノごっこ。

咲倉なこ

61 正直に。



今日は休日。

久しぶりに休日に渉と会う。

なんか変な感じ。

渉の家に行くと、私服で出てくる渉が新鮮だった。


「渉ってそんなファッションセンスだったっけ」

「え、なんか変?」

「うんん、似合ってる」


私たちはそのまま近所の公園へ向かった。

今日は私から渉を誘った。

話したいことがあったから。

ちゃんと言わなくちゃいけない。

渉の気持ちにちゃんと向きあって考えた、自分の本当の気持ちを。


「私ね、渉に感謝してるんだ」

「え。俺、なんかしたっけ?」

「ずっと仲良しの幼なじみでいてくれたことに、感謝してる」

「なんだよ改まって。どうしたんだよ」

「だから、これからも幼なじみでいたい」

「……やっぱ俺、振られるの?」

「うん、振る!だって私、渉のこと大好きだから。だから振る!」

「…すげーーー矛盾してる」

「ごめんね、渉」

「別に謝んなくていいから」


やっぱり渉に対しての気持ちは、恋愛のそれとは違った。

小さい頃から一緒に遊んでくれた、気の合う友達。

いつでも私を守ってくれる優しいお兄ちゃん。

変なところは怖がりで、守ってあげたくなるような弟。

私にとって、渉はそんな存在。


「これからも幼なじみでいたい」

「それは無理かな…」

「…そっか」


ある程度は覚悟していた。

もう仲良しの幼なじみでいられなくなるのが怖かったから、私は渉への返事を躊躇していた。

でも私は渉の気持ちに答えることができないから、こうなっても仕方なんだ。


「新奈に好きな人がいなくなったら、また仲良くしてあげてもいいけど?」

「あはは、なにそれ。もしかしてワンチャン狙ってる?」

「狙ってる」

「だから無理だって言ってるのに」

「無理って言うな。10年後、どうなってるか分かんないだろ」

「どんな先まで見据えてんの」


私は呆れながら言うと、渉は笑った。


前に渉から恋愛的なニュアンスの言葉を聞いた時、どういう反応をしていいのか分からなかった。

だけど今はやっと、友達としてちゃんと返せている気がする。


「俺も新奈に言わなきゃいけないことがあるんだ」

「え、なに?」

「駅で急にキスしてごめん」

「…あ〜、あれね」


やっぱりあれ、キスだったんだ。


「なんか、線路挟んで見つめあってる新奈と皆藤見てたら、いても立ってもいられなくて」


そうだったんだ。

そんなところを渉に見られていたのかと思うと、すごく恥ずかしい。


「新奈の了承も得ずに、本当にごめん」

「ホントだよ。あーあ、私のファーストキスだったのになー」

「え?!」


渉のびっくりしている顔を見ると、なんだかおかしくなってきた。


「別にもう気にしてないよ」


謝るのは私の方だよ。

ずっと渉の好意に甘えて来たのに、その気持ちに答えられない私が悪いんだ。


それからは、たわいもない話をして。

渉は幼なじみはもう無理って言ってたけど、今まで通り普通に話してくれた。

つくづく、渉の優しさを感じた。


「俺、やっぱサッカー部に入ることにした」

「本当?」

「うん、やっぱりサッカー好きだから」

「そっか。応援してる!」

「だからもう、放課後一緒に帰れない」

「うん」

「別に新奈に気を使ってるわけじゃないから」

「分かってるって」


最後の最後まで、渉は優しかった。



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