カレカノごっこ。
49
…渉は、なんで伊吹くんだって分かったんだろう。
私が疑問に思っていると、渉は言葉を続ける。
「だって俺に言えないってことは、そーゆーことなのかなって。
新奈はなんでも俺に話してくれるのに、皆藤ってやつのことは全然言わないじゃん。
それは俺の気持ち知ってるから、気を遣ってるんだろ?」
「そんなんじゃないよ…」
私はただ、誰にも言わないでって言われたから、言わなかっただけで。
渉の気持ちがどうとか、そんな考えてる余裕なんてなかった…。
「…早く具合よくなるといいな」
「うん…」
渉は何か言いたそうにしていたけど、それ以上掘り下げて聞いてくることはなかった。
もっと私のこと罵ってくれてよかったのに。
まだあんなやつのこと考えてたのかよ。って。
皆藤が体調悪くてもお前に関係ないだろ?って。
言ってくれればいいのに。
そう言わない渉に甘えてしまっている。
結局私が心配したところで、伊吹くんの体調が良くなるわけじゃないし。
どんな状況にいるのか全然分からないから不安だけど…。
でもきっと大丈夫。
私はまた伊吹くんが学校に来れるようになってくれたらそれでいい。
でもそれから3日が経っても伊吹くんは学校に来ることはなかった。
さすがにクラスメイトも伊吹くんが休みすぎってことで、ざわざわし始めていた。
水島くんも伊吹くんのことを色々聞かれて大変そうだ。
「井上さん、ちょっといい?」
昼休み。
桃々と教室でお弁当を食べ終わった時に、水島くんが私に声をかけてきた。
私は頷いて水島くんについていった。
何が起こったのか分からない桃々はキョトンとしている。
でも私には心当たりがある。
きっと、伊吹くんとの電話の話を聞いちゃったからだ。
もう一回口止めされるのかもしれないと思った。
水島くんについて行った先は学校の屋上。
今にも雨が降りそうな空模様で、屋上にいる生徒はいなかった。
フェンスの前で立ち止まった水島くんは、こっちを振り向いた。
「井上さん、これの色違い持ってる?」
水島くんが私に見せてきたのは、水族館で伊吹くんとお揃いで買ったブレスレットだった。
「…どうしてこれを水島くんが?」
「やっぱ持ってるんだー。そっかー、やっぱ井上さんだったかー」
水島くんは何かを納得したように頷いていたけど、私にはなんのことだかさっぱり分からない。
「伊吹、このブレスレットを一緒に探してる時、倒れたんだよね」
「え…?」
「あいつさ、腎臓の病気なんだって」
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