カレカノごっこ。
31 嫉妬。
月曜日。
教室に入ると、伊吹くんの姿が目に入った。
もう来てる。
1人で席に座って、スマホを触っている。
気まずいと思いながらも、自分の席について「おはよ」と挨拶をする。
「…おはよ」
伊吹くんは、きょとんとした顔で私を見た。
それからは何も喋らないまま。
教室ではいつも通りだった。
そしてお昼休みに桃々を屋上に誘って、伊吹くんとの関係を桃々話した。
この関係を終わらせたことも。
桃々は不思議な顔をしながらも最後まで聞いてくれた。
「ごめんね、今まで言えなくて」
「本当だよ。寂しかったなー」
「ごめん!」
「言ってくれたから、もういいけど」
桃々はそう言いながらも、曇った顔色をしていた。
「新奈はそれでいいの?」
「え?」
「だって今の新奈、すごい悲しそうだよ」
表情に出さないようにしていたのにな。
確かに寂しいのは寂しいよ。
でもそんなこと言ってこんな関係続けてたら、本当に取り返しがつかなくなるから。
「もういいの!だって好きにならないでって言ってる人とデートなんておかしいもん」
「まあ、そうだけど。でも皆藤くんなりの事情があったんじゃないの?」
「いや、事情って。軽い気持ちだったんだよ。実際誘ってくる時も軽かったし」
私がデート辞めたいって言ったらあっさり了承したし。
それくらい軽い関係だったんだよ。
「ま、新奈が決めたことには口出さないけど」
桃々はそう言ってジュースを飲む。
「でも自分の気持ちも大事にしなきゃだよ?」
桃々が何を言いたいのかピンとこなかった。
自分の気持ちって…?
「頭で考えてばっかりじゃなくって、気持ちね!ハート!」
「分かったけど…」
自分の気持ち。
私自身が今なにを考えているか。
よく分からなかった。
お昼休みが終わって、桃々と教室に戻る。
教室の入り口付近で渉とすれ違った。
「新奈、今日委員会でしょ?」
「あ、うん」
「俺も委員会で部活ないから、一緒に帰ろ」
「うん、分かった」
渉と喋り終わるか終わらないかの時に、後ろから伊吹くんが教室に入って行った。
私の横を通り過ぎていく伊吹くん。
”分かった”
たった一文で私たちの関係は終わった。
こんなにあっさり終わるなら、直接言った方がよかったかな。
って、とめて欲しかったとでも言いうの?
言い出したのは自分のくせに。
その後も、やっぱり伊吹くんとは話さないまま。
いつもと何も変わらないのに、ずっと胸が苦しかった。
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