カレカノごっこ。
26 帰り道。
水族館の帰り道。
渉と一緒に駅に向かう。
「渉の班はどこ見て回ったの?」
「あー、ペンギンのところとか」
「私たちと一緒じゃん!」
「そうなんだ」
あ、でも私は途中で抜けたんだった。
「桃々がね、ペンギン激写しててさー」
「うん」
「渉は写真とか撮ってないの?」
「撮ってない」
「そっか」
渉、水族館で歩き回って疲れているのかな。
いつもだったらくだらない話で盛り上がるのに、会話が切れてしまう。
「渉、疲れてる?」
「え?」
「だって、いつもより口数少ないから」
「あー」
ほら、いつもよりぼーっとしてるっていうか。
いつもの渉っぽくない。
「てか新奈、ペンギンのところにいなくなかった?」
もしかして墓穴掘った…?
「あー、ね!途中までいたんだけど、はぐれちゃって」
「ふーん。で、あいつと2人でいたってこと?」
「…え?」
「見ちゃったんだよね、俺。新奈とあいつが一緒にいるところ」
…それって多分伊吹くんのこと、言ってるよね。
「そーそー皆藤くんね!そうなの、一緒にはぐれちゃって」
「ふーん」
なんか、渉怒ってる…?
ってか、どこの現場を見たんだろう…。
「新奈ってさ」
「な、なに?」
「やっぱ何でもない」
渉は俯きながらそう言った。
「え、なに?気になるじゃん」
「…新奈って、俺に何か隠してない?」
「へ?別になにも隠してないと思うけど…」
もしかして伊吹くんのこと、なにか勘繰ってる?
でもわざわざ渉に言うことでもない気が…。
カレカノごっごしてまーすって言う?
それこそ変な目で見られそう…。
そのまま私と渉は会話を交わすことなく、駅に着いた。
何なんだろうこの空気。
でも私からなに言っても、会話は続かなさそうだし。
伊吹くんのこと聞かれても気まずいし…。
電車に乗り込むと、座る席は空いてなくて、渉と2人で手すりにつかまる。
その間も会話がなくて、ずっと気まずい。
だから、そのまま家に帰ると思ったのに。
近所の公園の前で、「ちょっと寄ってこ」って誘われた。
え…この空気で…?
って思った。
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