カレカノごっこ。
24
照れ隠しもかねて、私も自分が持っていたブレスレットを取り出して、伊吹くんの腕を手に取った。
ちょっとびっくりしている伊吹くん。
そんな伊吹くんの腕に、私の持っていたブレスレットをつけた。
つけ終わると、伊吹くんは顔を隠した。
今、伊吹くんがどんな表情をしているのか分からない。
でも。
「嬉しい」
口元を両手で押さえながら、そう言った伊吹くんも、顔が赤くなっているような気がした。
伊吹くんは私のことが…好き…?
私の煩悩が勘違いを加速させる。
伊吹くんはなんで私にそんな表情してくれるの?
なんで私をデートに誘うの?
もしかして、もしかしてって、期待が膨らんでしまう。
ってか期待って…。
これじゃ私、伊吹くんのことが好きみたいじゃん…。
「…え!?」
「ん?」
「あ、うんん、なんでもない!お揃いだねー!記念に写真でも撮っとく!?」
自分の思考をかき消すように、ぺらぺらと言葉が出る。
「写真撮るかー」
伊吹くんはそう言って、私の横に来て腕を出した。
今距離が近くなると、心臓の音とか色々困るんですけどー…!
なんで写真とか言っちゃったんだ私!
そう思いながらも頑張って平常心を装って、私もブレスレットが見えるように腕を出した。
するとおもむろに伊吹くんの手が、私の手を下から握った。
っっ…!
手汗がやばい…気がする…!
今、顔を見られるとやばい気がする…!
伊吹くんは2人のブレスレットの写真を撮ると、すぐにその写真を私に送ってくれた。
私はこんなに動揺しているのに、伊吹くんの動きは至って平常だった。
やっぱりカレカノ気分味わっているだけ…?
もう、本当に伊吹くんが何考えてるか分かんない!
でも、写真を撮り終わっても手は繋がれたまま…。
「あの、写真取り終わったから手、離していただけますか…?」
「うーん。やだ」
「っっ…!…だだこねないで…」
「もう少しだけ」
ねえ、伊吹くん。
伊吹くんは、カレカノ気分を味わいたいだけかもしれない。
恋愛を面倒なところ全部抜きにして楽しみたいだけかもしれない。
でも私は、その面倒な感情が芽生えちゃいそうだよ…。
なんで伊吹くんを好きになっちゃいけないの?
なんで好きになっちゃダメって言った人に、そんな顔するの?
いつもより伊吹くんが色っぽく見えるのは、私の気持ちの問題?
伊吹くんの本当の気持ちが知りたいよ。
「みんなのところに戻ろっか」
そう言った伊吹くんが切なそうに見えるのは、やっぱり私の願望なのかな。
私の手から伊吹くんの手が離れて、途端に名残惜しくなる。
伊吹くんは今どんな気持ちでいるの?
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