カレカノごっこ。
21
お昼ご飯も食べ終わって、午後からは桃々が目当てのペンギンのところまで来た。
「めっちゃ可愛い!」
おおはしゃぎの桃々。
確かにめちゃくちゃ可愛い。
なのに泳ぐのが早くて、ギャップがすごい。
もう少しでペンギンのふれあいイベントの時間だから、それまで少し待つことになった。
桃々がペンギンを激写している間、後ろで微笑ましく見守っていると、肩をとんとんとされる。
振り向いて見てみると、伊吹くんだった。
「なに?」
私がそう言った瞬間、私の腕を掴んで引っ張る伊吹くん。
「え!?なに?ちょっと!」
「しー!」
口に人差し指を当てて、私に”喋るな”と言ってるみたいだった。
どんどん、桃々たちのいるペンギンのところから離れて行く。
班のみんなはペンギンを見ていて、私たちがいなくなったことに誰も気がついていない。
「伊吹くんどうしたの!?ペンギンのふれあいタイム始まっちゃうよ?」
「このまま2人でデートしよ」
「はー?!」
「だから、デート!」
そう言って伊吹くんは私の腕を引っ張り続ける。
なんなの、この状況!?
私は誰かに見られてるんじゃないかと思って周りをキョロキョロ見渡す。
だけどうちの学校の生徒はいなさそう。
そうか、みんなペンギンかイルカのショーに集まっているんだ。
班でどっちを見に行くか揉めたもんな。
結局桃々の強い希望で、ペンギンの方に行くことになったんだけど。
「分かったから、腕離して」
私がそういうと、疑いの目を向ける伊吹くん。
誰かに見られて困るのは伊吹くんの方でしょ…?!
一度言ったら私の意見なんて聞いてくれない伊吹くん。
もう分かってるから。
私は観念して伊吹くんについて行くことにした。
突然のことに心拍数が上がっていくのが分かる。
今まで普通にしてたのに、なんで…。
私は伊吹くんの背中を見ながら、ほんのり色づく頬を隠した。
結局、伊吹くんから連れてこられた場所は、カメのコーナーだった。
「カメ好きなの?」
「うん、大好き」
カメコーナーはほとんど人がいなくて、閑散としていた。
「ほら見て。止まっているように見えるけど、すごくゆっくり動いてる」
「あ、ほんとだ」
って、課外授業中に私は何をやってるの…?
冷静になればなるほど、おかしな状況に気づいてく。
「やっぱ桃々たちの所に戻ろう?」
「俺は新奈とデートしたい」
ゆっくり動くカメの目の前で。
ムードもクソもないけど、伊吹くんに目を見つめられて、やっぱりドキッとしてしまう。
「デートならまた今度、ね?」
「今がいい」
「もう!伊吹くん、いつもわがまま!」
「新奈は俺と一緒にいたくない?」
ずるい。
伊吹くんは本当にずるいよ。
「…分かった。ちょっとだけだからね」
私が観念すると、伊吹くんはくしゃっと笑った。
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