カレカノごっこ。

咲倉なこ

6


そんなこんなで、いつの間にか駅前のカフェに着いていた。

学校から駅までの距離って、こんなに短かったっけ?

あっという間にカフェについてびっくりしてる。

お店の中は混み合っていたけど、窓際の席が1つだけ空いていた。


「空いててよかったな」

「そうだね」


ここのカフェはパンケーキが売りで、私はこのパンケーキをずっと食べてみたかった。

お店の中はふんわりと甘い香りに包まれていて、それだけで幸せな気分になる。


「何にする?」


席に座ってメニューを開く。

パンケーキは何種類かあって、どれにするかすごく悩む。


「このベリーのやつもおいしそうだけど、はちみつも食べたいなー。悩む!」


メニューとにらめっこしながら、どっちらがいいかを真剣に考える。


「皆藤くんは決まった?」

「皆藤くん、じゃなくって?」


あ、そうだった。


「い、伊吹くんはどれにする?」


やっぱりまだ名前で呼ぶことに慣れない。


「俺はベリーのやつにするから、はちみつ頼みなよ。シェアしよ」

「へ?いいの」

「なにが?」


皆藤くんはきょとんとした顔で私を見た。

私の食べたいものに合わせてくれてるのかな。

だとしたらさすがに申し訳なさすぎる。

だって皆藤くんもこのお店、来てみたかったんだよね?


「私に合わせなくてもいいよ?せっかく来たんだし好きなもの頼んでよ」

「俺もその2つのどっちにしようか迷ってたんだよね。奇遇だね」


って皆藤くんは頬杖をつきながら笑う。


「実はシェアとか憧れてたんだ。だから本当、気にしないで」


そう言って皆藤くんは更に優しく微笑んだ。

男子はシェアとか嫌がるもんだと思ってた。

だって、渉はいつも嫌がってたから。

いつも私が一口貰おうとすると、食べたいなら自分で頼めよって言ってた。

渉以外の男子とはあまりしゃべったことがないから、男子はみんなそうなんだと思い込んでた。

皆藤くんみたいなタイプもいるんだ。


「好きな女の子と好きな食べ物をシェアできるなんて、最高に幸せじゃん?」


好きな女の子、か。

うっかりドキッとしてしまう。

皆藤くんはデート気分を味わっているだけなのに。

でもそんな言葉がさらりと出てくるなんて、本当にデートが初めてとかずっと疑う。

なんか私も彼女っぽいこと言った方がいいのかな。


「私も好きな男の子とシェアするの憧れてたんだ!嬉しい」


どうだ。

やっと可愛い女の子が言いそうな言葉を言えたと思ったのに。

皆藤くんの顔は一瞬、曇ったように見えた。

でも、それは気のせいだったと思えるくらい一瞬のことで、皆藤くんはいつのまにか笑顔になっていた。


「今、ちょっとだけキュンとした」


ほら、またそんなこと言って。

これは自分に好意があると勘違いされてもおかしくないからね?

好きになってほしくないんだったら、そんなセリフ言わない方がいいのに。



「カレカノごっこ。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く