カレカノごっこ。

咲倉なこ

2



「彼氏?」


皆藤くんの言う、彼氏とは誰のことか分からなかった。

だって、私には彼氏という存在の人がいないから。


「ほら、2組でいつも迎えに来るヤツいるじゃん」

「あー、渉のこと?」


渉(わたる)とは幼なじみで、家が近いって理由でよく一緒に帰っている。

もうそれが習慣になっていて、なんの疑問も持たずに一緒に帰っていたけど。

確かによく一緒にいるせいか、渉が彼氏だと勘違いされることは何回かあった。

まさか皆藤くんにまで勘違いされてるなんて。


「渉、放課後用事ができてしばらく一緒に帰ってないんだ。ってか彼氏じゃないし」


そう返事をすると、なぜか変な間が空いた。

不思議に思って皆藤くんの顔を見ると目が合う。


「彼氏じゃないの?」

「違うよ。ただの幼なじみ」

「そーなんだ」


クラスメイトにまで勘違いされてたなんて。

やっぱり他のクラスの男子と一緒に帰るって、そう誤解をされてもおかしくないってことなのかな。

日誌を書き終わったのに、なぜか皆藤くんは帰ろうとしない。

不思議に思いながらも、私は帰る準備を続ける。


「じゃあ、ちょっとお願いしたいことあるんだけど」


教科書をカバンにつめ終える頃、ずっと窓の外を眺めていた皆藤くんが口を開いた。


「なに?日誌のお礼に何でも聞いちゃうよ!」


早く帰れることにテンションが上がっちゃって、勢いで何でも聞いちゃうなんて言ってしまった。

そんな私を見て皆藤くんはくすっと笑った。




「じゃあ───
今から俺とデートしない?」





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