ゴミ屋敷令嬢ですが、追放王子を拾ったら溺愛されています!
第五十四話
驚いたのは、国外に退避していた王族と貴族たちである。
「ゴミが神隠しのごとく消えたらしい」
「疫病も急激に終息したとか」
「民が活気を取り戻しつつある」
そんな話題で騒然となった。
王ガイウスはしばらく様子を見ていたが、噂が真実だと判明すると、これ幸いと高らかに声を上げた。
「天は儂を見捨てなかった! さあ、我らの国に戻ろうではないか!」
「さすがは国王陛下、強運の持ち主だ! 早く戻りましょう!」
居候されていた隣国の王は、酒を飲んでは騒ぎ立てるグラディウスの客人たちに疲れ果てていたから、こちらもこれ幸いと彼らを送り出したのだった。
王たちがグラディウスを放棄してから、実に二年が経っていた。
◇
事件は国境門の前で起こった。
王の帰還だと声を張り上げてもグラディウス王国側の門が開かないのである。
「無礼者! 我が名はガイウス。ただちに開門せよ!!」
地鳴りがするほどの大声で王自ら命令を出すが、石造りに木製の扉がはめ込まれた荘厳な国境門はぴくりとも動かない。
「どういうことだ? ぐぬぅ、誰か行って開けるように話をしてくるのだ!」
「ははっ」
伝令の騎士が国境門に馬を走らせ、中にいる者に王の命令を伝える。
しかし、中から返ってきたのはひどく冷たい返事だった。
「この国に王はいない。したがって、開けることはできない」
それだけだった。
「貴様、ふざけるな! 命が惜しければ今すぐ門を開けろ!」
伝令の騎士が叫ぶも、中の者の声のトーンが変わることはなかった。
「ガイウス様は国を捨てただろう。今更戻って来てどうしようというのか」
「ぐぬぅ……」
仕方なく騎士は戻り、やりとりを王に報告した。
当然、ガイウスは激怒した。鼻息を荒くしながら次の指令を出す。
「ふざけおって……! 騎士たちよ、集まるがよい! 国境門と城壁を破壊するのだ!!」
「「御意ッッ!!」」
野太い声が地面を震わせる。木にとまっていた烏たちが驚き一斉に空へ飛び立った。
「国境門を突破するぞ!!」
「うおおおおおお!!!!」
副騎士団長の号令を合図に剣や槍を掲げた騎士団が馬を駆る。土埃が舞い、血気盛んな騎士たちが熱い叫び声を上げる。
中にいるのは無力な平民たちだ。騎士団長だったユリウスは居ると思われるが、それでも一人である。何千という軍勢を相手に太刀打ちできるはずはない。
ガイウスにとって、グラディウスに戻れないという想定はこれっぽっちも頭になかったのである。
「ゴミが神隠しのごとく消えたらしい」
「疫病も急激に終息したとか」
「民が活気を取り戻しつつある」
そんな話題で騒然となった。
王ガイウスはしばらく様子を見ていたが、噂が真実だと判明すると、これ幸いと高らかに声を上げた。
「天は儂を見捨てなかった! さあ、我らの国に戻ろうではないか!」
「さすがは国王陛下、強運の持ち主だ! 早く戻りましょう!」
居候されていた隣国の王は、酒を飲んでは騒ぎ立てるグラディウスの客人たちに疲れ果てていたから、こちらもこれ幸いと彼らを送り出したのだった。
王たちがグラディウスを放棄してから、実に二年が経っていた。
◇
事件は国境門の前で起こった。
王の帰還だと声を張り上げてもグラディウス王国側の門が開かないのである。
「無礼者! 我が名はガイウス。ただちに開門せよ!!」
地鳴りがするほどの大声で王自ら命令を出すが、石造りに木製の扉がはめ込まれた荘厳な国境門はぴくりとも動かない。
「どういうことだ? ぐぬぅ、誰か行って開けるように話をしてくるのだ!」
「ははっ」
伝令の騎士が国境門に馬を走らせ、中にいる者に王の命令を伝える。
しかし、中から返ってきたのはひどく冷たい返事だった。
「この国に王はいない。したがって、開けることはできない」
それだけだった。
「貴様、ふざけるな! 命が惜しければ今すぐ門を開けろ!」
伝令の騎士が叫ぶも、中の者の声のトーンが変わることはなかった。
「ガイウス様は国を捨てただろう。今更戻って来てどうしようというのか」
「ぐぬぅ……」
仕方なく騎士は戻り、やりとりを王に報告した。
当然、ガイウスは激怒した。鼻息を荒くしながら次の指令を出す。
「ふざけおって……! 騎士たちよ、集まるがよい! 国境門と城壁を破壊するのだ!!」
「「御意ッッ!!」」
野太い声が地面を震わせる。木にとまっていた烏たちが驚き一斉に空へ飛び立った。
「国境門を突破するぞ!!」
「うおおおおおお!!!!」
副騎士団長の号令を合図に剣や槍を掲げた騎士団が馬を駆る。土埃が舞い、血気盛んな騎士たちが熱い叫び声を上げる。
中にいるのは無力な平民たちだ。騎士団長だったユリウスは居ると思われるが、それでも一人である。何千という軍勢を相手に太刀打ちできるはずはない。
ガイウスにとって、グラディウスに戻れないという想定はこれっぽっちも頭になかったのである。
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