ゴミ屋敷令嬢ですが、追放王子を拾ったら溺愛されています!
第四十話
斬られる覚悟を決めていたベアトリクスだが、予想外の音に驚いて目を開ける。
目の前には大きな背中があって、ユリウスの太刀を受け止めていた。
「え……ミカエル様?」
突然現れた居るはずのない人物に目を見開くベアトリクス。しかしルシファーに驚く様子はなかった。
「くっ。居ると思ったぜ、ストーカー野郎」
「あなたがもたついているからベアトリクス様に危害が及ぶところでした。感謝してほしいですね」
「……ミカエル・フリザードか」
剣をいったん引いたユリウスが低い声で唸る。騎士団長である自分と名を並べる国民的英雄ミカエルの名は彼の耳にも届いていた。
「騎士団長様にお見知りおきいただけて光栄です。……ルシファー、ここはわたしが引き受けます。実に不本意ですが、立場上あなたはここを離れた方がいいでしょう」
「おまえ、たまにはいいこと言うんだな」
こんなやつだったか、とルシファーがにやりと笑う。ミカエルは眉をしかめた。
「勘違いしないでください。ベアトリクス様の誕生日に争いは無用だということです」
「……恩に着る」
「わっ! ちょっ、ルシファー!?」
ルシファーは素早い動きでベアトリクスを両手で抱え、ミカエルと瞬時に視線を交わす。彼がユリウスに剣を打ち込むタイミングで一団の横を走り抜けた。
「おいルシファーにゴミ屋敷! 逃げるのか!」
ミカエルと打ち合いながら二人に向かって咆哮するユリウス。ミカエルをかわして追いかけようという動きを見せるが、蛇のようにしつこい斬撃がそれを許さない。
「あなたの相手はわたしですよ、ユリウス殿下。明日から青竜討伐の遠征に出ますので、いい準備運動になりそうです」
普段の穏やかな物腰とは一転してミカエルの金の瞳はぎらぎらと怪しく光っていた。獲物を定めた銀狼のようにユリウスを捉え、華麗に剣を振り上げた。
◇
ベアトリクスを抱えたルシファーはあっという間に屋敷へ帰り着いた。
そして屋敷に張り巡らした結界を確認し、守りを強化する魔法陣をいくつも展開して警備を補強した。
「兄上はしつこい。気位の高い男だから十中八九仕返しに来るだろう。外出するときは俺が常に護衛をする。危険だから極力一人にならないでくれ」
「申し訳ありません。わたくしが不敬をしたばかりに」
「いいや、いいんだ。兄上は昔から嫌味な奴だから気にしてはいないが、おまえが庇ってくれて嬉しかったし、ハイキックをかましたときは胸がすいたぞ」
ルシファーは悪戯っぽく笑い、よくやったとベアトリクスの頭を優しく撫でた。
「でも、ルシファーはクロエ様の元へ行くのよね? ユリウス様のことでずっとここに留まるわけには……」
「急ぐ話ではない。師匠にとって数年は誤差だから大丈夫だ」
「大魔法使い様はほんとうに規格外ですわね」
顔を見合わせて笑い合うと、ルシファーははっと顔を赤くしてゴホンとわざとらしく咳をした。
「その……。さきほど店で言っていたことはほんとうか?」
「お店で? ……あっ!!」
ルシファーの表情と恥ずかし気な物言いから、彼女は自分が告白をしてしまったことを思い出した。
目の前には大きな背中があって、ユリウスの太刀を受け止めていた。
「え……ミカエル様?」
突然現れた居るはずのない人物に目を見開くベアトリクス。しかしルシファーに驚く様子はなかった。
「くっ。居ると思ったぜ、ストーカー野郎」
「あなたがもたついているからベアトリクス様に危害が及ぶところでした。感謝してほしいですね」
「……ミカエル・フリザードか」
剣をいったん引いたユリウスが低い声で唸る。騎士団長である自分と名を並べる国民的英雄ミカエルの名は彼の耳にも届いていた。
「騎士団長様にお見知りおきいただけて光栄です。……ルシファー、ここはわたしが引き受けます。実に不本意ですが、立場上あなたはここを離れた方がいいでしょう」
「おまえ、たまにはいいこと言うんだな」
こんなやつだったか、とルシファーがにやりと笑う。ミカエルは眉をしかめた。
「勘違いしないでください。ベアトリクス様の誕生日に争いは無用だということです」
「……恩に着る」
「わっ! ちょっ、ルシファー!?」
ルシファーは素早い動きでベアトリクスを両手で抱え、ミカエルと瞬時に視線を交わす。彼がユリウスに剣を打ち込むタイミングで一団の横を走り抜けた。
「おいルシファーにゴミ屋敷! 逃げるのか!」
ミカエルと打ち合いながら二人に向かって咆哮するユリウス。ミカエルをかわして追いかけようという動きを見せるが、蛇のようにしつこい斬撃がそれを許さない。
「あなたの相手はわたしですよ、ユリウス殿下。明日から青竜討伐の遠征に出ますので、いい準備運動になりそうです」
普段の穏やかな物腰とは一転してミカエルの金の瞳はぎらぎらと怪しく光っていた。獲物を定めた銀狼のようにユリウスを捉え、華麗に剣を振り上げた。
◇
ベアトリクスを抱えたルシファーはあっという間に屋敷へ帰り着いた。
そして屋敷に張り巡らした結界を確認し、守りを強化する魔法陣をいくつも展開して警備を補強した。
「兄上はしつこい。気位の高い男だから十中八九仕返しに来るだろう。外出するときは俺が常に護衛をする。危険だから極力一人にならないでくれ」
「申し訳ありません。わたくしが不敬をしたばかりに」
「いいや、いいんだ。兄上は昔から嫌味な奴だから気にしてはいないが、おまえが庇ってくれて嬉しかったし、ハイキックをかましたときは胸がすいたぞ」
ルシファーは悪戯っぽく笑い、よくやったとベアトリクスの頭を優しく撫でた。
「でも、ルシファーはクロエ様の元へ行くのよね? ユリウス様のことでずっとここに留まるわけには……」
「急ぐ話ではない。師匠にとって数年は誤差だから大丈夫だ」
「大魔法使い様はほんとうに規格外ですわね」
顔を見合わせて笑い合うと、ルシファーははっと顔を赤くしてゴホンとわざとらしく咳をした。
「その……。さきほど店で言っていたことはほんとうか?」
「お店で? ……あっ!!」
ルシファーの表情と恥ずかし気な物言いから、彼女は自分が告白をしてしまったことを思い出した。
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