ゴミ屋敷令嬢ですが、追放王子を拾ったら溺愛されています!
第二十二話
裏路地に連れ込まれたベアトリクスは、そのまま倉庫のような場所に引きずり込まれた。強い男性の力で後ろ手に縛りあげられ、口には布を噛まされる。
この人たち、慣れているわ。そう感じるような手早い動きだった。
地面に転がされた彼女を、二人は下品な表情で見下ろした。
「ひひっ。これでいいだろ。おい、俺は前々から言ってただろ? ゴミ屋敷令嬢は上玉だって」
「疑って悪かったよ。ちゃんと女の匂いがするな。こいつなら心配するような家族もいねえし、ちょうどいい」
「~~~~~~っ!!」
性的な目で見られて背筋がぞっとする。声にならない悲鳴を上げ、最後の抵抗とばかりに足で男の顔を蹴り上げる。
しかし震えによってキレの失われた蹴りは簡単に避けられる。それどころか、ポロリとハイヒールが脱げて素足が見えてしまった。
「おっと。ずいぶん活きのいい令嬢だな。でもな、無駄だぜ。というか逆効果だな。……綺麗な足だ」
「すぐ好くなるから暴れるな」
もう駄目だ。ベアトリクスはぎゅっと目をつむった。
ルシファーは荷物番をしているし、もし帰りが遅くて探してくれたとしても、ここを突き止めるには時間がかかるだろう。
――もっといっぱいゴミを拾ってから死にたかった。志半ばで死ぬなんて、しかもこんな薄汚い人間に穢されて人生が終わるのかと思うと、悔しくてたまらなかった。
男たちの性急な手が襟元にかかり、ビクッと身体に緊張が走る。
「――――いてっ!! なんだ!?」
「こら噛むなっ! クソ犬が! あっち行け!」
男たちが慌てふためき、ドレスを掴んだ手が荒々しく離れる。ほとんど同時に獣がうなるような低い声が聞こえた。
何事かと目を開くと、男たちの足に噛みつく黒い犬が目に飛び込んできた。
犬は男たちがベアトリクスを離したことを認めると、彼女の前に立ちふさがり、男たちと相対した。グルルと喉を低く鳴らし、頭を下げる姿勢を取って威嚇している。
「ははっ! 守ってるつもりか? すげえなこりゃ」
「ゴミ屋敷令嬢様の飼い犬か? 王子様にでもなったつもりでいるんだろうな、この犬は。阿保らしい」
噛まれた足を気にしつつも男二人は全く懲りていない。邪魔に入った犬を始末しようと、倉庫内に落ちていた角材を拾い上げる。
ぽんぽんと二、三度手のひらに角材を打ち、にやりと笑う。
「動物虐待はしたくないんだけどなぁ~。俺ら今、すっごく腹減ってて機嫌わりぃの。悪いね、ワンちゃん」
「食らえッ!」
振りかぶった二人。
それは黒い毛並みに紫の瞳を持つ犬に勢いよく振り下ろされ――
「!?!?」
――たはずだった。
美しく真っ二つになり、宙に舞う角材。
目を見開く男二人の前には、剣を横に凪ぐルシファーの姿があった。
この人たち、慣れているわ。そう感じるような手早い動きだった。
地面に転がされた彼女を、二人は下品な表情で見下ろした。
「ひひっ。これでいいだろ。おい、俺は前々から言ってただろ? ゴミ屋敷令嬢は上玉だって」
「疑って悪かったよ。ちゃんと女の匂いがするな。こいつなら心配するような家族もいねえし、ちょうどいい」
「~~~~~~っ!!」
性的な目で見られて背筋がぞっとする。声にならない悲鳴を上げ、最後の抵抗とばかりに足で男の顔を蹴り上げる。
しかし震えによってキレの失われた蹴りは簡単に避けられる。それどころか、ポロリとハイヒールが脱げて素足が見えてしまった。
「おっと。ずいぶん活きのいい令嬢だな。でもな、無駄だぜ。というか逆効果だな。……綺麗な足だ」
「すぐ好くなるから暴れるな」
もう駄目だ。ベアトリクスはぎゅっと目をつむった。
ルシファーは荷物番をしているし、もし帰りが遅くて探してくれたとしても、ここを突き止めるには時間がかかるだろう。
――もっといっぱいゴミを拾ってから死にたかった。志半ばで死ぬなんて、しかもこんな薄汚い人間に穢されて人生が終わるのかと思うと、悔しくてたまらなかった。
男たちの性急な手が襟元にかかり、ビクッと身体に緊張が走る。
「――――いてっ!! なんだ!?」
「こら噛むなっ! クソ犬が! あっち行け!」
男たちが慌てふためき、ドレスを掴んだ手が荒々しく離れる。ほとんど同時に獣がうなるような低い声が聞こえた。
何事かと目を開くと、男たちの足に噛みつく黒い犬が目に飛び込んできた。
犬は男たちがベアトリクスを離したことを認めると、彼女の前に立ちふさがり、男たちと相対した。グルルと喉を低く鳴らし、頭を下げる姿勢を取って威嚇している。
「ははっ! 守ってるつもりか? すげえなこりゃ」
「ゴミ屋敷令嬢様の飼い犬か? 王子様にでもなったつもりでいるんだろうな、この犬は。阿保らしい」
噛まれた足を気にしつつも男二人は全く懲りていない。邪魔に入った犬を始末しようと、倉庫内に落ちていた角材を拾い上げる。
ぽんぽんと二、三度手のひらに角材を打ち、にやりと笑う。
「動物虐待はしたくないんだけどなぁ~。俺ら今、すっごく腹減ってて機嫌わりぃの。悪いね、ワンちゃん」
「食らえッ!」
振りかぶった二人。
それは黒い毛並みに紫の瞳を持つ犬に勢いよく振り下ろされ――
「!?!?」
――たはずだった。
美しく真っ二つになり、宙に舞う角材。
目を見開く男二人の前には、剣を横に凪ぐルシファーの姿があった。
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