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ゴミ屋敷令嬢ですが、追放王子を拾ったら溺愛されています!

優月アカネ

プロローグ

 大陸の辺境に位置するグラディウス王国。
 栄養の乏しい大地に、国土を囲む魔物の棲む樹海。厳しい立地のこの国に住まう人々が、屈強さを正義とする性質になったことは、ごく自然なことだった。
 王ガイウスは筋骨隆々とした剣士。そして国民も肉体自慢の騎士や冒険者が多く、血気盛んで陽気な国として知られている。

 ――その王城では今宵、王子たちの結婚相手を選ぶためともささやかれるような、大規模な舞踏会が催されていた。

 音楽に合わせてきらびやかなドレスが舞い、華やかな広間。貴族令嬢や令息たちが交流を深めているものの、多くの令嬢の視線は壇上の王子たちにあった。
 第一王子は既に結婚しているが、第二、第三、第四王子は未婚。それぞれの王子は宝石のように美しく、特に第四王子ルシファーは王国一の美男子と名高い。

 そんな中、人の群れから離れて、軽食コーナーにかじりつく令嬢がひとり。金髪碧眼の彼女は、ダンスも王子たちへのアピールも興味がないと言った様子だ。
 婚期を気にする両親によって無理やりこの場に放り込まれた彼女は、テーブルに並んだ料理を次々ほおばることに夢中だった。
 だから彼女は気づくのが遅れ、対処することができなかった。

 突如立ち上がった第四王子ルシファーが、「ああもう! こんな舞踏会のどこが楽しいんだ!? 俺はもううんざりだ!」と叫び、その手から次々と魔法を放出したことに。

 両手を天にかざし、呪いを含んだ魔法の雨を降らせるルシファー。
 響き渡る悲鳴に逃げ惑う足音。青い閃光が大広間を飛び交う。

「ははははは! どうだ! 結局おまえらは魔法に敵わないじゃないか!!」

 散り散りになり、あるいは身を守る群衆とは対照的に、事情の呑み込めないその令嬢は無防備だった。
 真っ直ぐ飛んだ一筋の閃光が、サラダを頬張る彼女の胸を貫いた。

「ううっ……!?」

 皿がしなやかな右手から滑り落ち、けたたましい音を立てて割れる。
 ゆっくりと床に膝をつく令嬢。

 なおも喚き散らすルシファー王子は兄たちと王に羽交い絞めにされ、広間から連れ出される。
 会場は騒然となり、もはや続行は不能と思われた。
 床に横たわる令嬢のもとには次々と人が集まる。彼女は急いで治療院に搬送された。

 そして、意識を取り戻された彼女に一つの事実が告げられた。それは、彼女が受けてしまったのは呪いの一種「何でも拾ってきてしまう」魔法だったこと。
 それが何を意味するのか、この時点では誰にも予想がつかなかった。とにかく命に関わるものでなくてよかったと、駆け付けた両親は安堵した。

 数年後――
 令嬢は巷で「ゴミ屋敷令嬢」と呼ばれていた。

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