転生した公爵令嬢はVUCAを生きる

Mo×5

11グレイス王妃、張り切る side A

夕食会の次の日。
私の部屋ではちょっとしたイベントが起きていた。

ソフィアとヴィーは私が起きる前にもう出かけてしまっていたらしい。私は疲れが溜まっていたのか、ソフィアがヴィーに起こされたのを瞬間見ていたが、睡魔に勝てず二度寝をした。
そして起きたらもう昼過ぎだった。

お腹がすいたなー。何かお願いしたら、ご飯作ってくれるのか、それとも抜きになるのか。宮殿の仕組みのさじ加減がよくわからない。

果物とかおやつ、残ってないのかしら。
宮殿に来て、しかも王女が、いきなりこんなひもじい思いをすると思わなかった。
昨日の夕食会に出てたお菓子とりんご、とっておけばよかったー。

そんなことを考えているうちに、私の部屋に侍女たちが入ってきた。そして運ばれる大荷物。
私は頼んだ覚えがないのに、この荷物の山は一体何なんだろう。

「ルイーズ王女殿下、こちらの荷物は約2週間後に開催される王女殿下の成人式に必要な物になります。中身をご確認いただけますでしょうか」
侍女のリーダーらしい人物が私にお願いをしてきた。
「この部屋に運ばれてしまうと、部屋が狭くなってします。他の部屋に置いておけないの?」
「大丈夫でございます。ご確認が終わりましたら、また荷物運び出しますので、ご安心ください」
あぁそういうこと。
目に見えるこの山の検品は、私の仕事ってことね。

「では、確認すべき荷物を取り出して、教えていただけますか」

「承知いたしました」
侍女達はてきぱきと箱を開け、様々なの服装品を取り出して、私に確認を求める。
「こちらはナブー産の真珠を50粒使いました髪飾りでございます。なお同じ大きさ、色の真珠を50粒集めるには、約5年の年月がかかります。こちらの少しピンク掛かった真珠は珍しく、エライの職人によるデザイン加工がなされ、品のある仕上がりとなっております。お気に召されましたでしょうか?」

「まず最初に確認をしたいのだけれど、全部で何品を本日確認するのかしら?」
「本日は、200品、大体10日で1000品ほどをご確認いただく予定です」
ちょっと待った。
200品、全部の商品説明を聞いて、全部OKを出さなきゃいけないわけ?
そもそもこの作業に、意味がある?

「見なくても大丈夫。皆さんのことをとても信じているわ。では、全部承認とします。以上」

はい終了。皆さんも重い荷物をここまで運んで、いちいち説明をして、私の承認もらうとか、とんでもない作業でしょ。
みんなで業務効率しましょ。
私あんまりおしゃれに興味がないから大丈夫。反対に、出されたもの、よほど変でなければ、なんでも着るから。食事も出されたもの、大々食べますから。

「まぁ、そんなことではいけません。全てご趣味に合うかどうか、ご確認いただきます」
グレース王妃が部屋の中に入ってきた。
この方、王妃の風格と品格を持ちなんだなぁと思った。だって、まるでラスボス。
横にはミカエル王子がいた。

「あのね、ルイーズお姉ちゃまと呼んでもいい?」
「えー、いいわよ」
「やったー。ルイーズお姉ちゃま。このお品物はね、お母様が選んだものだよ。一品一品、厳選して選んだんだよ。それにね、僕も色選んだりしたんだよ」
ミカエル王子はニコニコしながら言った。

「王妃殿下、私のためにご尽力いただき、どうもありがとうございます。私は修道院がなかったせいか、あまり服装品にはこだわりがございません。ですので、王妃殿下が選んでくださったものを身に付けたいと思います」

「分りました。では、一緒に選びましょう」
グレース王妃は嬉しそうに商品が収められている箱に近づいていく。
王妃様だけで選んで頂きたかった……

「これはどうかしら?とてもお似合いだと思うんだけど。この商品について説明できるものはいらっしゃるのですか」

「僭越ながら、私がご説明いたします」
・ ・ ・・ ・ ・
「両方ともに素敵ね。こちらは両方使っていただきましょう」
グレース王妃と侍女は意気揚々とやりとりをしていた。

王妃は10年前にカミーノ王国が滅びた時に、弟であるセルゲイと共にラーウィック公国へ逃げてきた王女。父に助けられた時は瀕死の状態だったとお聞きしている。

そして18歳で結婚、翌年ミカエルを出産。
凄いご苦労があったのだろうなぁと思った。
そんな方が楽しそうにしているのを見ると、私も楽しくなってくる。
みんなが幸せになってくれるといいなと思った。

「グレース王妃殿下、本当にありがとうございます。昨日、『ミカエルのために、犠牲にさせてしまったのは本当に申し訳なく思っています』と仰いましたけれど、全然そんなことありませんから。だから私のためにとか思わず、ご自身の好きなことをして下さいね」

「ルイーズお姉ちゃまは、あんまり楽しそうではないけれど。ちょっと疲れて来ちゃった?全然楽しくない?」
「そんなことないわよ。楽しいわよ。みんなが来てくれて嬉しいのよ」
「本当に来てくれて嬉しいと思ってる?」
「思っているわよ。グレース王妃殿下もミカエルも来てくれるなんて思わなかったから。私を喜ばせようと思ってくれていることがとても嬉しいよ」
「本当?だってさー、僕が生まれたせいで、お姉ちゃま達が修道院に入れられたんでしょう。だから本当は、僕のこと嫌いなんだと思ったんだ」
ミカエルは泣くのを我慢する顔をしていた。

「ミカエルのことを嫌いなわけないでしょ。だって、ミカエルはかわいい弟だよ。ソフィアもそう思ってると思うよ」

家族って不思議だなと思う。
昨日まではほとんど話したことも会ったこともない血の繋がった人。
でも、会うと何か目には見えない何かが繋がっていることを感じる。それに、相手のことを思いやって何かをすることができる関係であれば、たとえ血が繋がっていなくても、家族になれるんだなぁと思う。

グレース王妃もミカエルも私の大事な家族だ。

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