魔女の秘密~魔女は、急の事態に戸惑う。

 私は、火夏と手を繋いで海辺に向かうと、何故か人が一人も居ないことに気付きました。
「あら?と、どうして、人が一人も居ないんでしょうか?」
 と、火夏に聞くと、彼は険しい表情で、
「咲良、念の為、結界を張っておけ。」
 と言われたので、私は首を傾げましたが火夏に再度言われたので慌てて呪文を唱えました。
『マジカル・クローバー、我を護る結界を張り給え!!』
 自分に結界を張ることが出来たので火夏に聞きました。
「火夏、何かあるんですか?」
「咲良、周りを良く見てみろ。魔女だろう。」
 と言われたので、私は魔力を瞳に纏わすと周りを見回しました。
 そうすることでやっと人が一人も居ないこと、火夏の顔が険しいことの理由に気付きました。
 海と空が赤紫色に染まっていたんです。
 その光景を目目の当たりにした私には、どこかで見覚えがあったので少し考えました。
 そして、思い出しました。
「はっ、まさかここに凶暴な人魚が・・・。」
 と呟き火夏を見ると、その呟きを聞いた火夏が無言で頷きました。
 魔界には、空と海が赤紫色に染まると凶暴な人魚がいると言われています。
 何故、魔界でそう言われているのかと言うと人魚は基本的に魔界の海に行けば会うことが出来る生き物です。
 ですが、人魚だっていつも機嫌が良い訳ではありません。
 人魚の機嫌が悪くなる時だってあります。
 そのときは、人魚が発しているオーラが教えてくれます。
 機嫌が良いときは、綺麗な黄金色。
 機嫌が普通の時は、ピンク色。
 機嫌が悪く、攻撃をしてくるときが凶暴なときで、赤紫色になります。
 そのオーラを見るときは、魔力等の力を瞳に纏わせると見ることが出来ます。
 私は、どこに凶暴な人魚がいるのかが分からなかったので海を見つめていると、突然、海から水柱が上りました。
「咲良、お前は下がっていろ。」
 と言われたので私は火夏からだいぶ離れた場所に移動しました。


 それから、水柱からつららが火夏に目かげて飛んで来ました。
(火夏、足手まといでごめんなさい。頑張って下さい。)
『いでよ、水剣!!』
 と唱えて火夏は、左手を前に突き出すとその手の前に魔法陣が現れました。
 火夏は、その魔法陣の中に手を差し入れると、何かを掴んで魔法陣から何かを取り出しました。
 その手に握られていたのは剣でした。
 私はその剣を見て愕然としました。
 何故ならその剣は、ただの剣では無いからです。
 その剣は、水の魔術または氷の魔術の攻撃を切りざくことが出来る、幻の剣なんです。
 因みに、学校の教科書に記されていたその剣の持ち主は、陰陽師の末裔である加茂家の一人だったはずです。
 それなのに何故火夏が持っているんでしょう?
 そうしている間にも火夏は飛んでくる氷柱を剣で弾きながら海に近寄りました。
 そして、いつの間にか現れていた凶暴な人魚の額に手を当てると口を開きました。
『この者を落ち着かせ給え!急々如律令!』
 私はその呪文を聞いて思い出しました。
 そういえば火夏が、魔法使い&陰陽師だったことに。
 そのことに気付いてしまった私は余りにも辛い真実にうつむきました。
(私は、このまま火夏と付き合ってても良いんでしょうか?)
 実は、歴史などが大好きな私は、学校の図書室で陰陽師で検索した結果、今の水剣の持ち主は父親のせいで55人の令嬢に狙われていると出ました。
 その時は、火夏が家に来る前だったので、“へぇー。そんなに格好いいんですか。”と思ってはいましたが、その55人の令嬢に狙われている人物が火夏だとは思っても見ませんでした。
(火夏のためを思ったら、私と別れて令嬢と結婚したほうが良いのではないでしょうか・・・。)
「咲良、どうした?」
 と急にいつの間にか隣にいた火夏に話しかけられて私は顔を上げました。
「咲良、どうしたんだ。大丈夫か。」
 と聞かれて私は慌てて口を開きました。
「は、はい。だ、大丈夫ですよ。」
 と言うと、彼は、ため息をついて口を開きました。
「咲良、何かあったんなら、素直に話した方が楽になると思うんだが。」
 と言われたので私は口を開きました。
「火夏、火夏は私と付き合ってても良いんですか?」
 と聞くと、火夏は
「咲良?急にどうしたんだ?」
 と聞いてきたので私は詳しく説明しました。
「火夏、貴方は、加茂家の末裔で水剣の持ち主ですね。あと、55人の令嬢に狙われてますよね。」
 と言うと彼は険しい表情で黙り込みました。
「咲良、その情報は全て正しいが、詳しい説明をさせてくれ。」
 と言われたので私は頷きました。
 火夏の口から本当のことを聞きたかったからです。
「俺は、お前の言う通り加茂家の末裔で水剣の持ち主だ。俺の父方の祖母が加茂家の末裔の生き残りだった。そしてあの水剣は、祖母から受け継いた。・・・で、55人の令嬢の件は、全て断るつもりだ。」
 と簡潔に告げられて、私は俯いて聞きたくないことを聞きました。
「火夏、どうして55人の令嬢を全て断るんですか?」
「それは、言わなくても分かってほしいが、俺がお前しか愛せないのと、お前が婚約者&恋人だからだ。」
 と言われたので私はキョトンとして顔を上げ口を開きました。
「えっ、恋人は分かりますが、婚約者ってなんですか?」
 と聞くと火夏は口を開きました。
「お前の誕生日の日に母が来ていただろう。その時に俺と咲良が産まれたときに俺と咲良を結婚させる約束をしたらしい。が、俺が成長した途端、父が結婚は認めない。と急にいいだし、それから母が家出した。」
「そうなんですか。・・・本当に私で良いんですか?」
 と聞いて見ると、彼は困った表情で口を開きました。
「良いも何も、俺はお前のことが小学生のときからずっと好きでやっと両思いになれたんだ。誰がそんな彼女を手放して他の女と結婚するんだ?・・・だが、お前が俺のことを嫌いになって別れたら、俺は一生独り身だな。」
 とまで言われて私は苦笑を零しました。
「私は火夏なら、一生独り身は無いと思いますよ。」
 と言うと彼は
「それはどういうことだ?・・・あぁ、俺と結婚してくれるということか?」
 と言われたので私は真っ赤になって
「えっ、そ、それは今は分かりません。でも、火夏は仮に私と別れても、もっと良い人に出会えて結婚出来ますよ。」
 とフォローしましたが、彼は何故かこちらをギロリと睨んで来ました。
「咲良、お前もう少し自分に自信を持て。」
 と言われたので私は首を傾げて言いました。
「えっ、持ってますよ。私、一応看護師目指してますし、自分を信じられない者に人や魔族の皆さんの命は預かれませんから。」
 すると、火夏はため息をついて口を開きました。
「そうではなく、女の自信の方を・・・。・・・咲良、とりあえず人魚を見てくれないか?」
 と言われたので、私は人魚の方を見ると、海と空が銀色に変わっていました。
 そう、先程説明し忘れていたんですが、人魚が落ち着いた時は銀色になります。
「うわぁー。本当に落ち着いたんですねぇ。」
「ああ。とりあえず泳ぐか?」
 と聞かれたので私は頷きました。
「はい。泳ぎましょう。」
 と言って、銀色の海に入って泳ぎました。
 
 その日の帰りには、すっかりご機嫌になった人魚は、火夏と私により、無事に魔界の海に帰りました。
 そして、焼きそば屋でアルバイトをしていた花崗君と一緒に家の最寄り駅まで帰りました。








 

 



 





 
 

 
 
 





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