魔女の秘密~魔女は、急の事態に戸惑う。

 咲良が家に帰ってしまってから30分後、俺は教室で授業を受けていた。
 そして、授業中俺は後悔していた。
 何故あの時、咲良を抱きしめてしまったんだろう。
 19歳の誕生日の日に彼女に触れると、彼女と一緒にいられないことは分かっていたのに。
 だが、あの時は言葉ではどうにも出来なかった。
 そのため、俺は言葉ではなく行動で咲良を落ち着かせようとしてしまった。
 その結果、咲良は白うさぎになってしまった。
 あの時に行動に移す前に咲良を落ち着かせる方法がきっとあったはずなのにそれをしなかったから。
 咲良に謝りたい。
 そう強く思った。
 そして俺は咲良に早く謝る為に早退することにした。
「先生」
 と呼ぶと先生は
「なんですか?高瓦。」
 と聞かれたので俺は口を開いた。
「先生。すみません。急用を思い出したので早退させて下さい。」
「そうですか。急用なら仕方ありませね。気をつけて帰るのですよ。」
 と俺は先生から許可を得ると、鞄に荷物を詰めて立ち上がった。




 そして俺は校門から出ると、学校の近くの公園まで走った。
 公園の敷地に入ると俺は魔術師が使うチョークを使って魔方陣を描いた。
 このチョークは魔力や霊力、神力を持つ者にしか見えず、描いた物も見えないのだ。
 そこに、自分にしか見えなくなる呪文を唱える。
 そして、俺は描いた魔方陣の外に出ると、言霊呪文を唱えた。
『その陣より、自転表れよ!!』
 その呪文を唱えると、俺の家に置いてあった自分の自転車が表れた。
 これは自分で使える魔術と陰陽道を組み合わせることで出来る"呼び出し魔法"なのだ。
 この呼び出し魔法のメリットは取りに行かなくても呪文を唱えるだけで手元に届くこと。
 で、デメリットは自分の物しか呼び出し出来ないことである。
 まぁ、今はこんな感じだがいつかはもっとすごい魔法を開発したいと思っている。
 とりあえず俺は、呼び出し魔法で呼び出した自転車に乗り、急いでおばさんの家に帰った。
 話は変わるが俺には、異空間で道を作って移動することが出来るんだが、それはデメリットが多過ぎるので今回は使わないことにした。
 理由は、早く帰り過ぎておばさんに怒られない為である。
 まぁ、勝手に早退すること事態怒られることなのだが、俺はおばさんに怒られることはどうでもよかった。
 ただ、咲良に怒られて嫌われないかが心配なんだが、とりあえず謝り倒そうと思う。
 
 家に着くと俺は自転車から降りると魔術で白札を取り出すと口を開いた。
『自転車よ、この白札に入り給え。急々如律令!!』
 その言霊が成功したらしく自転車は無事に白札に吸い込まれた。
 なので俺はその白札を鞄の中に入れて、家の中に入った。
 玄関で靴を脱いでいると足音が聞こえて来たので廊下を見ると、おばさんが仁王立ちでこちらを睨んでいた。
「火夏君、授業はどうしたの?」
「・・・早退してきました。咲良は落ち着きましたか?」
 と聞くとおばさんは無表情で、
「火夏君、悪いけど今日は咲良に会わないでくれる?」
 と、一方的に告げると居間に戻って行くおばさんに俺は慌てて引き止めた。
「待って下さい。・・・何故、咲良に会ったらいけないんですか。咲良が白うさぎになってしまったのは俺のせいなんです。だから無事に人の姿に戻るまで、傍に居させて下さい。」
 と言うと、おばさんはいつもの面白がる表情に戻ると俺に謝ってきた。
「ごめんなさい。火夏君。これだけはダメなの。私としては会わせてあげたいんだけど、高瓦さんに止められているから。」
 と言われ、俺はおばさんに聞いた。
「おばさん、おばさんは父に何を止められているんですか?」
 するとおばさんは、
「火夏君は、咲良のことが好きでしょう?」
 と、当たり前なことを聞いてきたので俺は頷いた。
「はい。確かに俺は咲良のことが好きで愛しています。・・・ですが、それに何の問題があるんですか?」
 と聞き返すと、おばさんは俺に服を着替えると自分の部屋に来るように言うと、おばさんの部屋に帰っていった。
 


 それから5分後、俺は服を着替えるとおばさんの部屋に行った。
 そして、おばさんの部屋の中に入ると俺は口を開いた。
「おばさん。俺の質問に答えて下さい。」
 と言うと、おばさんは俺に座るように言うと立ち上がった。
 そして、俺が自転車を出した魔方陣とは違いかなり複雑な魔方陣を畳の上に描きだした。
 ちなみに、魔方陣を描いた物は俺が使ったチョークと同じ物だった。
『高瓦直子ちゃん、今すぐこの陣より表れよ!!」
 とおばさんが呪文を唱えると、パァーと金色の光が溢れだし、俺の母・高瓦直子が表れた。
 そして、俺を見ると、
「久しぶり、火夏。」
 そう言って家出をする前に良く見せていた笑顔を零した。
 それから3時間、咲良に謝りたいから帰ったにも関わらず、母とおばさんから18年間俺に秘密にされていた秘密を聞かされることになった。
 





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