魔女の秘密~魔女は、急の事態に戸惑う。

 その日の昼休み、咲良が弁当を持って俺の席の前に来て口を開いた。
「火夏、一緒に食べて良いですか?」
「ああ。・・・咲良、何か欲しい物はあるのか?」
 と聞くと何故か彼女は強張った笑みを浮かべて口を開いた。
「な、なんでですか?」
 と困惑している声音で聞かれたので俺は慌てて口を開いた。
「い、いや、ただ聞いてみただけだ。・・・だから、気にしなくても良い。」
「はい。・・・あのぅ、火夏の誕生日はいつですか?」
 そう言ってスカートのポケットから手帳とシャーペンを出した咲良に俺は
「12月25日だが・・・。」
 と答えると咲良は、感心したように口を開いた。
「へえー。すごいですねぇ、クリスマスに誕生日って・・・。あっ、火夏は何か欲しい物でもありますか?」
 急にそんなことを聞かれても困る。
 そもそも、何故今日が誕生日の咲良に俺の欲しい物を聞いてくるのか。
 と思ったものの、咲良はとても真摯な眼差しでこちらを見ていたので俺は少し考えて、
「ある。」
 とだけ伝えておいた。
 するとやっぱり咲良は気になるらしく
「なんですか?」
 と聞いてきたので俺は黙り込んだ。
 何故かというと、俺の欲しい物は咲良なんだ。
 本当は咲良とあんなことやこんなことをしたいのだが、今それをしてしまうと咲良が困ることになってしまう。
 だから俺のなかでは、大学生になったらあんなことやこんなことをしようと思っている。
 と悩んでいると、咲良が何かを思ったらしく急に声を小さくして
「そ、そんなに高い物なんですか?欲しい物って?」
 と聞かれたので俺は、
「高くない。・・・ただ貰える物ではないんだ。」
 と言うと、彼女は首を傾げたが、俺は気にせず言葉を紡いだ。
「俺が欲しい物は物ではなくて、ただ、お前の恋人として堂々と一緒にいれるこの日々が続けば良いと思うのと、いつまでもお前と笑い合いながら生きていきたいんだ。だから、貰える物ではないんだ。」
 そう言って彼女を見ると、彼女はふわりと微笑んで口を開いた。
「そうなんですね。・・・私もその気持ち分かりますよ。なので、私も火夏のその願いを叶えられるようにしますね。・・・ところで、どうして今日は朝から一度も触って来ないんですか?」
 と聞かれて俺は内心驚いて咲良を見る。
 確か、保健の授業でその理由を習ったはずなんだが・・・。
 そう思ったところで保健の授業は男女別で習うことを思い出した。
 なら、まだ習っていない可能性が出てきたのでそれを確認する為に口を開いた。
「お前、まだ習っていないのか?」
 と聞くと彼女は首を傾げて
「何を何の授業で習うんですか?」
 と聞いてきたので俺は"やっぱり習っていないんだな。"と思いながら短く答えた。
「魔女の仕組み、保健の授業で。」
「?火夏?分からないのでその話詳しくお願いします。」
 と言われたので俺は頷いて確認した。
「ああ。咲良、今日が19歳の誕生日だろう。」
 と言うと咲良は何故か首を傾げて
「えっ、何故それを・・・。知っていたんですね。でも、なんで知っているのですか?確か私、言ってなかったですよね。」
 と聞いてきたので俺は淡々と事実を口にした。
「それはおばさんから聞いた。・・・それで話は戻るが、魔女は19歳になった日に異性に触れられると動物になる。」
「えっ?動物になるんですか?・・・それってずっとですか?」
 と聞かれ、俺は
「いや、一日だ。」
 と答えると咲良はため息をついて、
「なら、大丈夫じゃないですか。一日だけならどうにかなりますよ。それに明日は休みですし。」
 と楽観的な彼女に俺は内心呆れながら静かに首を横に振ると口を開く。
「いや、ダメだ。確証がないから。」
 すると彼女はニヤリと笑うと
「では、ちょっと実験してみましょうか。」
 そう言って彼女は、自分の弁当をさっそく開いてその中に入っていたウィンナーを箸で摘むと俺の口に持っていって口を開いた。
「はい。口を開いて下さい。」
 と笑顔で言われ俺はとっさに身を引いて、
「さ、咲良、な、何を・・・。」
 と聞いたが、咲良は少し悩むそぶりをすると恥ずかしそうに下を向いて、
「火夏、あーんです。」
 と言われ俺はドキッとして咲良を見つめながら口を開いた。
 咲良は俺の口の中にウィンナーを入れて来たのでそれを咀嚼していると、
「ど、どうですか?」
 と咲良が聞いてきたので俺は咀嚼したものを飲み込むと口を開いた。
「うまい。だが、お前、今の皆に見られていたんだが良いのか?」
 すると彼女は「えっ」と呟くと周りを見渡した。
 そして、その場にいた全員に目を逸らされていた。
 その行動で咲良は俺が言ったことが本当だと分かったらしく、真っ青な顔で謝ってきた。
「ご、ごめんなさい。・・・ど、どうしましょう。火夏のことが好きな人にイジメられたら。」
 と呟く彼女に俺はため息をついた。
 いや、イジメられないだろう。
 と内心でツッコミを入れ、咲良を見ると真っ青な顔でぶつぶつと呟いていたので慌てて口を開いた。
「咲良、落ち着け!俺は全く気にしてないし、イジメもありえないからとにかく落ち着いてくれないか。」
 と彼女に言ったが彼女は聞こえていない様子だったので俺は席を立つと咲良の隣に移動すると咲良を抱きしめた。
 そして、口を開く前に咲良からモクモクと煙が出てきたので慌てて咲良から離れた瞬間、
「ポン!」
 と音がなり、咲良が視線からきえた。
 慌てて咲良を捜そうとすると足元から咲良の声がした。
 なので下を見ると、そこには白うさぎがいた。
「・・・・・。咲良なのか?」
 と思わず聞くと白うさぎが口を開いた。
「そうですよ。火夏、私は何の動物になっていますか?」
 と聞かれたので俺は「白うさぎだ。」と答えると白うさぎ(咲良)はお礼を言ってきた。
 俺は白うさぎ(咲良)を抱き上げると自分の席の椅子の上の置く。 
 そして、白うさぎ(咲良)その場を動かないように言うと俺は先生を呼びに職員室まで誰にも見られないように走った。


 先生は咲良を見て、
「飛龍さん、19歳になったのね。おめでとう。じゃあ、お迎えを呼びに行って来るわね。あっ、飛龍さん、今日の24時に元に戻るからね。」
 と言ってまた職員室に戻って行った。
 それから20分後、咲良は学校を早退してしまった。


 




 


 
 

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