魔女の秘密~魔女は、急の事態に戸惑う。

 次の日、火夏と遊園地に行く日になりました。
 私と火夏は8時に朝ご飯を食べて、9時に家を出ました。
 家から出ると、火夏は私が持っている鞄を見て
「咲良、その鞄重そうだが大丈夫か?・・・貸せ。」
 そう言って、鞄を持ってくれました。
「火夏、ありがとうございます。」
 と私は笑顔でお礼を言いました。
「ああ。」
 と言ってちらりと私を見ると火夏はすぐに私から視線を反らしてしまいました。
 彼の謎の行動を疑問に思いながらも私は口を開きました。
「火夏、今日は晴れて良かったですね。」
「ああ。そうだな。・・・だが、夕方から雨が降るらしい。」
 と彼に言われて私は"えっ"と彼を見ました。
「・・・えっ?雨降るんですか?」
 と、再度確認すると、彼に頷かれました。
「そんなぁー。私、傘持って来てないです。どうしましょう?」
 と一人落ち込んでいると急に頭をポンポンと軽く叩かれました。
 思わず火夏を見ると、彼は
「気にしなくても良い。・・・それに、俺が傘を持っているからそれに入れば良い。」
 と言って傘を見せてくれました。
「分かりました。一緒に入りましょう。」
「ああ。・・・ところで着いたら何に乗りたいんだ?」
 と聞かれて私は
「メリーゴーランドがいいです。」
 と答えると火夏は
「そうか。それに乗ろう。」
 と言うと彼は、急にこちらを見て
「手を繋ぎたいんだが、良いか?」
 と聞かれたので私は微笑むと
「はい。良いですよ。」 
 と許可を出すと、火夏は私の手をとりました。


 しばらくして、遊園地に着きました。
 なので、私は入場料を払うためにお財布を探しました。
「どうした?」
 と急に火夏に聞かれて私はキョトンとしながら
「えっ、お財布を探しているんですが。」
 と答えると、火夏は
「そうか。だが、今日は俺が払うから財布を出さなくてもいい。」
 と言ってくれたんですが、私は申し訳なくて、
「えっと・・・。良いんですか?払って貰っても。」
 と聞くと、「ああ。」と頷かれたので、私は素直に甘えることにしました。
「ありがとうございます。では、お願いします。」
 そして、火夏は私の分の入場料も払ってくれました。




 火夏目線
 遊園地の敷地に入った俺と咲良は早速メリーゴーランドの場所に向かった。
 だが、メリーゴーランドはかなり混んでいる。
「火夏、どうしますか?」
 と彼女に聞かれたが、俺はどういう意味で聞かれたのかが分からなかったので、
「何かだ。」
 と聞き返すと咲良は口を開いた。
「並ぶか他の場所に行くかです。」
 そう言われて俺は少し考えて、
「俺は他の場所に行きたいが、お前はどうしたいんだ?」
 と言うと彼女は、
「えっ、えっと、私ですか?私は、どっちでも良いですよ。」
 と困った顔をされたので俺は、
「咲良、俺が決めても良いのか?・・・俺は、お前と一緒なら、どっちでも良いんだ。ただ、俺はお前に我慢をしてほしくない。だから、お前の意見を聞きたい。・・いいか?」
 と言うと、咲良は苦笑して、
「・・・大げさですねぇ。・・・私も他の場所に行っても大丈夫です。」
 と言われたので俺は、
「他の場所に行こう。」
 そう言って彼女を見た。
 彼女は胡桃色の髪を横に一つでくくってリボンでまとめ、服は白いブラウスに茶色の短パンを着ていて良く似合っている。
 朝から何度も見ているのに、その度に頬が熱くなるのを感じて俺は咲良から目を逸らして何もない場所を見る。
 すると、彼女は悲しそうに聞いてきた。
「火夏、どうして朝ごはんの時から私を見てから他の場所を見るんですか?・・・ひょっとして、どこか可笑しいからですか?」
 彼女はまた変な誤解をしていたので、俺は慌てて否定した。
「ち、違う。お前はどこも可笑しくない。むしろ良く似合っているんだ。・・・だから、顔がにやけるから顔を逸らしただけだ。だが、それで傷つけてしまったのならすまない。」
 と謝ると咲良は真っ赤な顔で、
「・・・だ、大丈夫です。」
 と言われたので、俺は咲良の手を引いてメリーゴーランドの列を素通りした。
「どこへ行きますか?」
「そうだな。ジェットコースターに乗るか?」
 と何気なく聞くと彼女は慌てて
「い、嫌です。ジェットコースター、乗りたくないです。」
 その言葉で俺は咲良が絶叫系が苦手だということが分かった。
 だが、念の為に確認する。
「咲良、お前は絶叫系は苦手なのか?」
 すると咲良は恥ずかしそうに
「はい。実は、怖いものは全て苦手でして。・・・あっ、あそこに行きたいです。」
 と言って咲良が指差したのは、変装ができる小屋だった。
 その小屋の看板には、『コスプレ、女装、男装も可能。』と書かれていた。
 俺はその文字を見て思わず咲良を止めた。
 なぜなら、自分も女装をさせられるかもしれないからだ。
 俺は小6まで女装で暮らしていたが、やっぱり嫌なものは嫌だった。
「い、いや、咲良、あそこはやめた方がいい。」
「?なんでですか?コスプレができるんですよ!コスプレ、楽しそうじゃないですか。私はやりたいです!」
 と咲良に目を輝かせて説得されたが、俺が無言で考えている間に悲しそうにしていたので、俺は慌てて口を開いた。
「な、なら、咲良だけコスプレをすれば良い。俺は見るだけだ。」
 咲良は、溜息をついて、
「はい。分かりました。火夏がそんなに嫌なら私だけ楽しみます。でも、絶対に着いてきて下さいね。」
 と頼まれたので俺は「ああ。」と頷くと小屋に向かって歩き出した。
 







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