その日の昼休み、私は火夏と一緒にお昼のお弁当を食べています。
　ですが、今の私は火夏に罪悪感が満載で、味がしませんでした。
　なので、半分を食べたところでお弁当を鞄の中にしまいました。
「咲良、どうした。食力が無いのか？」
　と聞かれて私は下を向いて火夏に謝りました。
「火夏、ごめんなさい。」
「どうした？急に謝って来て。何かあったんだ。」
　と聞かれて私は火夏に謝った理由を言いました。
「朝のことなんですが、本当にごめんなさい。私なんかを庇ったせいで危険な目に合わせてしまって。」
　すると火夏は、溜息をついて口を開きました。
「咲良、朝の件は俺が勝手にしたことだから気にする必要は無い。それに、俺はお前だったからしたんだ。」
　と言われたので私は考えました。
　なんで火夏は、私なんかを助けてくれようとするんでしょうか？
　まさか、お母さんとお父さんに預かってもらっているからその娘である私に何かあったら困るから守ろうとしているんじゃ。
　と思うと悲しくなって、火夏に
「すみません。私に何かあったらお母さん達に追い出されて困るから助けてくれようとしているんですね。」
　と言うと火夏は、慌てて言いました。
「違う。俺は、おばさん達に追い出されるからお前を助けようとしたんじゃない。・・俺はお前が大切だから。だから、俺はお前を助けるんだ。」
　と言われて私は思わず言ってしまっていました。
「火夏、火夏はどうして私なんかを助けてくれるんですか？」
　すると火夏はお弁当箱を片付けると私を抱き寄せました。
「えっ、ひ、火夏？」
　と、真っ赤になって火夏を見ると火夏は真摯な眼差しで
「咲良、俺がお前を助けるのはさっきも言ったが、お前が大切で必要だから困っていたら助けるし、助けたい。・・・それにさっき私なんかと言っていたが、俺はお前の良いところをたくさん知っている。だから、俺はお前に私なんかとは言って欲しくない。」
　と言われ私は嬉しくてお礼を言いました。
「火夏、ありがとうございます。」
「ああ。」
　火夏は私を離すと、お弁当が入った鞄を持って立ち上がった。
　そして、まだ座っていた私に手を差し出した。
「咲良、もうそろそろ教室に戻ろう。」
　と言われたので私は笑顔でその手をとると頷きました。


　火夏目線
　教室に戻るとまた春風が咲良に話しかけているので、俺は咲良達の席に行った。
「春風、もう朝のことを忘れたのか？必要最小限咲良と関わるなと言ったはずだが。」
　すると春風は
「うるさい。これは俺と咲良の問題だ。高瓦には関係ないからとっとと自分の席に帰れ！」
　と、怒鳴って来たが、俺は涼しい顔で、
「これは俺にも関係がある。なぜなら俺は咲良の恋人だから。」
　といい返した。
　そして、俺は春風ではなく咲良を見る。
　彼女は一度キョトンとしていたが、すぐに俺のやった意味が分かると慌てて口を開く。
「そうなんですよ。内緒にしていたんですが、私は火夏と付き合っているんです。なので、私達に関わらないでください。」
　と彼女が言った後で俺は春風の様子を伺った。
　春風はひどく慌てた様子で口を開く。
「な、なら、付き合っているという証拠を見せろ！」
　と言われ不安になった咲良が俺を見つめる。
　それにすぐに気づいた俺は咲良の耳元でささやいた。
「咲良、大丈夫だから俺に任せてくれないか？」
　咲良は頷くと俺の手を握った。
　その手は微かに震えていた。
「そんなに証拠が見たいのなら見せてやる。良く見ておくんだな。」
　その台詞にかちんときたらしく春風はまた怒鳴った。
「良いから、早く見せろ」
　なので俺は咲良の唇と自分の唇が触れる寸前まで顔を近付けるとしばらくしてから顔を離した。
「これで良いか？」
　そう聞いてみると春風は呆然と立ち尽くしていた。
　まさかキス(ふり)をするとは思わなかったのだろう。
「そんな」
　と言って教室を飛び出した。
　ちらりと時計を見ると授業の5分前だったので俺と咲良は席についた。