6時30分になったので俺と咲良一家は家を出て車に乗り込んだ。
　だが、この移動が俺にとってかなり嫌なものになった。
　なぜかというと、おばさん、葵さん、咲良に沢山質問して来たからだ。
「そういえば、火夏君の好きな人ってどういう子なの？」
　と聞かれたので俺は咲良を見つめながら口を開いた。
「俺の好きな人は、誰にでも優しくて、花にたとえると桜みたいな感じで、こっちがイラッとするほど鈍感で、学校で女神認定されています。」
　と答えると咲良以外の3人は、「あー。そういうことか」という顔をしたが咲良はこわばった笑みを浮かべると
「ヘ、ヘー。全く分かりません。み、皆は、分かりますか？」
　と言われ、俺は内心"お前だ！！"と思っていたが何もいわず無言を貫き通した。
　すると、咲良は気まずくなったのだろう。
　空気を変えるように質問して来た。
「火夏、火夏はモテますけど、その好きな人とは何か進展はあったんですか？」
　それを聞いて俺は内心
(く、空気が変わらない。だ、誰が咲良に指摘して欲しい。切実に。)
　と慌てていた。
　すると、見兼ねたおばさんが
「じゃあ、今までに何人に告白された？」
　と良く分からい話題を振った。
　言うか言わないかを悩んでいるとおばさんの声が頭に響いた。
『火夏君、あの子の質問に答えたくないのならこっちの質問に答えて、あの子にも恥ずかしい思いをさせるから。』
　それを言われて俺は口を開いた。
「えっと、４０人ぐらいですね。」
「そうなんだ。咲良は？」
　と、急に話題を振られた咲良はキョトンとしながら答えた。
「え、え、わ、私ですか？私は３２人ぐらいです。でも本気で言われているのかは分かりませんけどね。」
　俺はその言葉がツッコミを入れたいことが沢山あったが、一番に思ったことは
(咲良は、そんなに告られていたんだな。)
　そんだけ告られて一度お試しで付き合ったのが最低最悪な男だとは・・・男を見る目はないんだろうか？
　と、思っていると咲良は頬を膨らませて
「もう、私の話よりも、火夏の好きな人の話です。」
　と、怒ったように言われ、俺はため息をついて口を開いた。
「咲良、もう俺の好きな人の質問はやめろ。じゃないと、その口を塞ぐ。」
　と言うと、咲良は良く分かっていないらしくキョトンとして聞いて来た。
「あのぅ、その塞ぐのは、勿論手ですよね？」
　俺は、首を横に振ると自分の唇に触れる。
　その行為で咲良はこちらの言った意味が分かったのだろう。
　顔が真っ赤になって、慌てていた。
「ひ、火夏、わ、分かりました。もう、聞きません。」
　と話していると〇〇温泉に着いた。
　なので車から降りて、〇〇温泉の敷地に入った。






　男風呂に入った俺とおじさんは湯舟に入っていろいろな話をしていた。
「火夏君、すまないねぇ。母さんと葵は男の子が欲しかったからどうしても火夏君みたいな男の子がいるといろいろと質問したくなるんだよ。だから、許してくれないかい。」
　と言われたので、俺は
「いや、おばさんと葵さんは大丈夫です。・・・ただ、好きな人に好きな人を聞かれるのは嫌ですね。」
　と言うと、おじさんは苦笑して
「やっぱり火夏君は咲良のことが好きなんだね。・・・うちの咲良は確かにかなりの鈍感だからね。だけど咲良のことを諦めずに頑張ってくれないかい。」
　と言われ俺は
「はい。分かっています。それに俺は咲良のことを諦められないので今度こそ、咲良の心が俺に向くように頑張ります。なので、俺が咲良のことが好きなことは咲良には黙ってて下さい。」
　と頼むとおじさんは
「うん。分かったよ。」
　と頷いてもらったので俺はホッとしてため息をついた。
「火夏君、もうそろそろ上がろう。」
「はい。」
　と頷くと湯舟から上がった。




　それから、１５分後、俺とおじさんは男風呂から出ると、女風呂にいる3人を待っていると父が、俺とおじさんのいる所に来て
「火夏、久しぶりだな。」
「久しぶり」
　と互いに言っていると父はおじさんに
「飛龍さん、火夏がお世話になってます。すみません。直子の旅のせいで、飛龍さんに火夏を預かってもらって」
　と言っているのを聞いて俺は怒りが込み上げて来た。
(母さんは旅をしているのではなく、家出をしているはずだ。なのに旅だと言ったということは母さんの家出の原因は父こいつが原因なのか。)
　そう思っている間にも父とおじさんの会話が進む。
　そしておばさんの声で自分が考えことで周りが見えていないことに気づいた。
「あっ、高瓦さん、どうしてここに？仕事は？」
　と父とおばさんが話ている間に俺は咲良を隠すように咲良の前に立った。
　何か嫌な予感がしたからだ。
　なのでおばさんと父が話ている間に借りた車の鍵を持って咲良を連れて先に車に戻った。