その日の放課後、部活の時間が来ました。
　私は部活の衣装に着替えに更衣室に向かいました。
　そして、衣装に着替えると部室に向かいました。


　
　部室に着くと私は火夏を探しましたが、見つかりませんでした。
　実は今、雅楽部は文化祭まで本番と同じ服装で練習しているんです。
　その服装というか、実は男子は女装をするんです。
　そして、去年火夏を見た時は余りの美しさに感動して泣き出す部員が続出しましたが、私は小学生の時の友達・高瓦夏子たかがわらなつこちゃんに、似ていますね。と、のんきに考えていました。
　と、去年のことを振り返っていたら、後ろからドンドンと音がしたので後ろを見ると、私の後ろの教卓の影から火夏(まだ女装をしていない)が、手招きしてきました。
　でもそれが、私にしているのかが良く分からなくて、自分を指差すと、彼は頷いたので、私はこっそりと火夏の所に行きました。
「どうしたんですか？」
　と、聞くと火夏が急に、
「咲良、助けてくれないか？」
　と、頼んで来たので、私は首を傾げて口を開きました。
「？火夏？何から助ければ良いんですか？」　
　と、聞くと、一言。
「女装から。」
　と、言われて私は火夏に呆れて、ポカンとして言いました。
「もう何を言っているんですか？皆も、女装しているじゃないですか。嫌だとは思いますが、我慢して下さい。」
　と、途中から頼むと彼は深い溜息をつくと
「ああ。分かった。」
　と面倒そうに言うと女装をしに更衣室に向かって歩き出しました。




　しばらくすると女装を終らせた彼が帰って来ました。
　私は火夏にばれないようにこっそりとケータイを取り出すと彼から、隠れて写真を撮りました。
　そして撮り終わると早速お姉ちゃんとお母さんに送りました。
　ケータイを閉じると、誰かが肩を叩いてきたので、私は周りをキョロキョロすると、引きずった悲鳴を上げました。
　なんと、肩を叩いてきたのは、さっき隠れて写真を撮った火夏だったんです。
「ひ、火夏、どうしたんですか？」
　と、聞くと彼はムッとしたらしく
「咲良、ちょっと来い。」
　と言われ、私は少しビクッとしながら火夏の後をついて行きました。
　ついて行くと舞の練習部屋に着きました。
「火夏、どうしたんですか？」
　と聞くと、彼はムッとして言いました。
「咲良、さっきケータイで写メを撮っていただろう。ケータイを出せ。」
　と言われて、私は
「嫌です。」
　と、断ると火夏は溜息をついて、
『ケータイを出せ！』
　と言霊を唱えました。
　言霊とは、古代日本で、言葉に宿っていると信じられていた不思議な力で発した言葉通りの結果を現す力があるとされていました。
　そして、ここ魔術学校ではその力を言霊呪文として教えてくれます。
　なので、火夏は1年生の時に言霊呪文を学ぶクラスでした。
　よって、私の体は自分の意思とは反対に火夏にケータイを渡しました。
　そして、火夏が、自身の女装写真を削除し終えるのをただ見ていました。
「・・・。もう二度と女装の写メを撮るな。」
　と言って返されました。
「ひどいです。言霊を使って取り上げて勝手に削除するなんて。」
　と、自分のしたことを棚に上げて文句を言う私に火夏は、深い溜息を着くと
「そもそも、勝手に人の女装写真を撮るのが悪いと思うのだが。」
　と、正論(？)を言われて私は唸って、言いました。
「ううぅー。もう用は無いですね。部室に戻りましょう。」
「ああ。そうだな。・・・嫌な思いをさせてすまなかった。」
　と謝られて私は、
「・・・。分かりました。今日は、特別に水に流してあげます。二度と勝手に削除しないで下さいね。」
「ああ。なら、咲良も、女装写真を撮るな。」
　と言われたので、私は
「考えておきます。」
　と答えると部室に戻りました。