次の日、学校に行くために汽車に乗った私は座る席を探しました。
　ですが、椅子は全て埋まっていて座ることが出来ませんでした。
　なので、吊り革に掴まっていると、お尻に何かが当たった感覚がしました。
　最初は荷物が当たっただけですと思っていたのですが、次の瞬間、太ももを撫で上げられてぞっと鳥肌が立ちました。
(だ、誰か助けて下さい。怖いです。)
　と思いながら耐えていると、
「おい、貴様何をしている。早くその汚れた手を退けろ。」
　と聞き覚えのある声が聞こえると、太ももに触っていた手が離れて行きました。
　


　私は一安心すると、火夏にお礼を言いました。
「火夏、助けて下さってありがとうございました。」
「ああ。大丈夫か？」　
　と、火夏が心配そうに聞いて来てくれたので、私はこれ以上心配をかけないように口を開きました。
「はい。大丈夫です。」
　なのに、火夏は厳しい表情で、
「ならいいが、一応気をつけていろ。」
　と言うと、火夏は向こうに行ってしまいました。　






　遡ること15分前、実は咲良が吊り革に掴まる前から俺は汽車に乗っていた。
　そして、ふと前を見ると咲良が吊り革に掴まっていたんだが、その顔色が真っ青になっていることに気づいた。
(なぜ真っ青なんだ？)
　と疑問に思って、咲良を遠目で見てみると咲良の後ろにいた男が咲良の太ももを撫で上げていた。
(このままだと大変だ。早く助けに行こう。)　
　と思い座席を立って咲良の斜め後ろに行くと口を開いた。
「おい、貴様何をしている。早くその汚れた手を退けろ。」
　と言うと、咲良の太ももに触れていた男は舌打ちをすると逃げるようにどこかに行ったが、あの男が咲良に恐怖を与えたことに俺は腹を立てていたので、男の後ろ姿を睨みつけた。
　が、それを知らない彼女に真っ青な顔でお礼を言われ俺は
「ああ。大丈夫か？」
　と聞くと彼女は弱々しく
「はい。大丈夫です。」
　と答えた。
　きっと彼女は、俺にこれ以上心配かけないようにそう言ったものの、怖かったのだろう。
「ならいいが、一応気をつけていろ。」
　本当は咲良が心配で一緒にいたかったが、荷物を置いて来てしまったので座席に戻った。
　座席に戻ってしばらくすると汽車が止まった。
　もう降りる駅だった。
　なので俺は汽車から降りた。
　そして、汽車から降りると咲良を探した。
　彼女は汽車から降りたところだった。
　そして、咲良の大親友の桜咲が来て一緒に駅を出ていくのが見えた。
　俺も駅を出て学校に向かって歩きながら考えた。
(俺がたまたま気づいたからどうにかなったんだが、俺がいなかったら、どうなっていたんだろうか。例えば俺ではなく他の男だと恋敵が増えていただろうし、誰も助けに来なければ咲良はもっと恐怖のどん底に突き落とされていただろう。・・・もう咲良を危険な目に合わせたくはない。だが、どうすれば良いのだろう。)
　と悩んでいると後ろから呼ばれた。
「火夏、おはよう。朝から良かったね。咲良に、カッコイイ所を見せれて。」
　と言い出した花崗に俺はイラッとして花崗を睨みつけて口を開いた。
「お前、良くそれが言えるな。被害に合った咲良の気持ちを考えろ。」
　すると花崗は苦笑して
「ごめん、ごめん。」
　と謝られて俺は、花崗に
「もう二度と言うな。今度言ったら殺す。」
　と言うと、先に校内に入った。


　そして、しばらくしてふと解決作を思いついた。
(そうか。俺が咲良を守れば良い。)