とある女神の処刑

　ここはとある世界の神界である。
　そして、あと、一刻後にとある女神が処刑されるのである。


　わたくしは、何故、処刑されてしまうのですか?
　わたくしは、断じて夏鷹なつたか様を殺してなどいないのに。
　むしろ、生きていて欲しかったですのに・・・。
　それに、わたくしが逃げられない様に桜子が神質になってしまっているし。
　桜子、こんな姉で申し訳ございません。
　夏鷹様、わたくしが貴方様を好きになってしまったばかりに、あんな残酷な目に合わせてしまって申し訳ございません。
　せめて、仇をとりたかったです。
　けど、わたくしが弱かったばかりに。
　仇を取ることも叶わず、わたくしが夏鷹様を殺したことにされてしまい、あともう少しで処刑されてしまう。
　　と牢の中に入れられてしまった女神・牡丹姫神ぼたんひめがみは、泣きながら、鉄格子の隙間の窓から見える月を見つめていた。
　ここは牢獄の中で処刑される彼女以外いない筈だった。
　そして、ついに彼女を処刑する神の足音が聴こえた。
　その足音は、当然の様に彼女が入れられている牢の前で止まった。
「牡丹姫神、処刑の刻限がきた。最後に言いたいことは無いか?」
 と言われた、牡丹姫神は、
「わたくしは、夏鷹様を殺してなどおりません。なのに何故わたくしは、処刑されてしまうのですか?」
　と、問い掛けると、
「それは、夏鷹殿を殺した殺して無いは関係なく、ただ、貴女には、我々の為に死んで貰わなければならないからだ。」
 と、非情なことを言われた牡丹姫神は項垂れ、今世を生き抜くことを諦めた。
　そして、神を殺すことが出来る毒を飲み干した。
　来世では、夏鷹様の生まれ変わりとわたくしの生まれ変わりは、幸せになれますように、桜子が無事に助かります様に、と願いながら、牡丹姫神は、１８年の女神人生を閉じた。




　それから、幾つもの時間、時空を越え、牡丹姫神の魂は日本の岡山県に流れついた。
　そして、とある魔女の子供になった。
　そして、自分が牡丹姫神という名の女神だったことを忘れ、飛龍咲良として生きていた。