魔女の秘密~魔女は、急の事態に戸惑う。

次の日 火夏目線

 次の日、俺は、いつもの習慣通りに、5時半に起きたので、身支度を整えてから、居間に行くと、栗さんが、お弁当と朝食を作っていた。
 なので、俺は、栗さんに朝の恒例挨拶をする。
「栗さん、おはようございます。」
 その声に、栗さんも挨拶してくれたので、俺は
「すみません。今日は、ちょっと用事があるので、咲良さんよりも早く行きます。」
 と言うと、栗さんは、
「えっ。…朝ご飯食べる時間はあるかな?」
 と言われたので、俺は
「あります。ありがとうございます。」
 と、お礼を言うと、栗さんは、
「じゃあ、ご飯をついたら、おかずを持っていって食べてね。」
 と言われたので、俺は言われた通りにご飯をついでから、お茶碗とおかずをテーブルに持って行く。
 そして、食事を始めた。


 そして、食べ終わると、食器を洗ったり、テーブルを拭く。
 そして、洗面所に行くと、歯を磨く。
 そして、自分の部屋に戻ると、学園に行く準備をして、栗さんの家から出た。
 
 学園の教室に着くと、鞄から自分の荷物を出していると昨日夜にこっそりコンビニで買って来た、弁当の代わりのパンが入っていないことに気づいた。
(・・・パンがない。何故だ?昨日入れたはずだ。とりあえず買ってくるか?だが、今買いに行くとショートホームルームに間に合わない。仮に異空間で買いに行ったとしても意味はないだろう。・・・ハァー、今日は昼飯は無しか。)
 そう思い溜息をこぼす。
 すると、戸が開き、咲良が教室の中に入って来た。
 てっきり自分の席に行くと思いきゃ、何故か俺の席まで来ると彼女は、手に握っていた小さな鞄を差し出してきた。
「これは何だ?」
 と聞くと、咲良はこちらをキッと睨んできた。
「・・・。お弁当です。・・・って、どうしてパンを持って行こうとしていたんですか!・・・知っていますよ。そりゃあ、いきなり他人の家庭の中に入って、気を使って遠慮してしまうのは仕方ないことだと思います。だけど、私達は、気を使って遠慮されたくないんです。だから、遠慮しないで下さい。私達は、どんなあなたでも受け入れますから。」
 と、言われ俺は、呆然としていたが、すぐに
「あ、ああ。分かった。・・・弁当を届けてくれてありがとう。」
 と、お礼を言うと彼女は微笑んで
「約束ですよ。もう遠慮しないで下さいね。」
 と言われ、俺は小さく微笑むと口を開いた。
「ああ。そうだな。その代わり咲良も何かあったら、俺にも言ってくれないか?じゃないとおかしいだろう。困った時はお互い様なのだから。」
 咲良は笑顔で頷いた。
「そうですね。分かりました。私も何かあったら高瓦君にも言いますね。・・・その時はお願いしますね。」
「ああ。ありがとう。」
 と、一度お礼を言うと、そのまま言った。
「早速だが、呼び方が違う。」
 すると、彼女はさっきと打って変わってキョトンとして
「高瓦君?」
 と、火夏という名ではなく苗字で呼ばれたので俺は彼女に
「高瓦君ではなく火夏と呼んで欲しいんだが。」
 と言うと、彼女は慌てた様子で口を開いた。
「えっ、今学校ですよ。」
 と、言われたが、俺は「だから?」と言うと咲良は、
「それって家にいる時だけの話じゃないんですか?」
 と言われて、やっと俺は自分と彼女の思っていることが違うことに気づいた。
「すまない。俺は、学校でも火夏と呼んで欲しいんだ。・・・良いか?」
 そう頼んで彼女を見ると、彼女はこちらを睨んでいた。
「ど、どうした?」
 と、恐る恐る聞くと、彼女はこちらを睨むのを止めるとため息を零し口を開いた。
「えっと、昨日も言ったじゃないですか。私は、高瓦君のことが好きな人達からイジメられて、相手を退学にしたくないんです。それに、私がそれでイジメられて、相手を退学にしたら、出て行かないといけないんですよ?」
 と言われ、俺は溜息をついた。
 そのルール、まだあったのか。
 昨日、彼女に謝られたので、そのルールは無くなっていると思っていた俺は、そう思った。
 それに、彼女が考えていることは、さすがに考えすぎだろう。
 名前を呼び合うことでイジメとか・・・。
 それに、それを言うなら俺だって同じことになるはずだ。
 なぜなら、俺と彼女はこの学園のアイドルなのだから。
 ─────雪のように白い肌に、高く小さな鼻、大きく丸い垂れ目は紫色、そして、胡桃色の髪をハーフアップにし、余りを腰まで流している。
 そんな可愛い容姿で、しかも、成績優秀、おまけに部活で舞を楽しそうに、なおかつ優雅に舞う姿に、咲良はこの学校の生徒には、第一女神の称号である天照大御神あまてらすおおみかみ様と呼ばれている。
 因みに、校則では、アイドルの生徒をイジメたりしたら、追放される。
 だから、第一女神の咲良をイジメる奴がいたら、この学園から追放される末路が約束されているのである。
 だから、彼女をイジメる奴はいないのである。
 と、思っていると咲良が真っ赤な顔で、
「た、高瓦君、ど、どうされました?か、顔に何か付いてますか?」
 と、聞いてきたので、咲良を見すぎていたのだろう。
「すまない。・・・とりあえず、お前は俺の名前を呼んでもイジメられなければいいんだろう。」
「はい。・・・でも。」
「でも、何だ?」
 彼女の煮え切らない態度に俺は少しイラッとしてしまい、少し口調がきつくなってしまったので、意識して優しい口調で、
「咲良。俺は絶対にお前がイジメられないようにするから俺の名前を呼んで欲しい。・・・・頼む。」
 と頼むと咲良は沈黙していたが、すぐに
「そこまでして私に名前を呼んで欲しいんですね。分かりました。火夏。」
 その最後の言葉に俺は咲良を見ると彼女ははにかむように微笑んでいた。
 そんな彼女の笑顔に見とれてしまいながらも口を開いた。
「あ、ありがとう。俺の名前を呼んでくれて。俺は約束を守るから。」
「はい。よろしくお願いします。」
 と頼まれたので俺は、
「ああ。分かった。」
 と頷くと、彼女は自分の席に戻ってしまった。




 その後、花崗が来たので俺は小声で昨日のことを話た。
 全てを話終えると花崗は驚いているようで、
「は、あの咲良の家に居候?・・・大丈夫なのか?」
 と聞いてきた。
「・・・大丈夫なのか?・・・何のことだ?」
 と聞くと花崗は
「好きな子に手を出したくならないのか?」
 急にとんでもないことを言い出した花崗の口を慌ててふさくとそのまま咲良がいる方を見る。
 咲良は桜咲と話していた。
 おそらく聞こえていないだろう。
 そう判断し、安心して花崗に言い返す。
「大丈夫だろう。俺は咲良のことが好きだが、咲良は俺のことを何とも思っていない。そんな咲良に手を出せると思うか?・・・俺は咲良に嫌われたくない。」
「そうか。・・・とりあえず、咲良に好きになってもらえるように頑張れ。」
 と言うと花崗は自分のクラスに帰って行った。
 帰って行く花崗を見送ると俺は溜息をついた。
 実は高瓦火夏と飛龍咲良は保育園に通っていた時からずっと一緒にいたのだが、彼女は気付いていない。
 なぜなら、俺が保育園児の時から小学校6年生の時まで女として育てられていたからだ。
 その時に特に仲良くしていたのが彼女だったのだ。
 そして、いつからか友人から恋心へと変わっていったのだ。
 その気持ちに気付いて、母さんに頼んで中学1年生の時から男として生きることにした。
 だが、彼女にそのことを伝えたくなかった。
 だから、頑張って1から仲良くなろうとはしたが、残念ながら仲良くなれなかった。
 それどころか、咲良はあんな最低な奴とお試しで付き合ってしまっているし、まぁ、結局咲良が奴を振ったのだが、あの時は、何度彼女を諦めるかと自問自答したか。
 でも、彼女を諦めることは不可能だったのだ。
(だから俺は、今度こそ彼女を手に入れたい。)
 そう思っていると、先生が教室の中に入って来てショートホームルームがはじまった。

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