悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きていきます。私にしか使えない魔法で、モフモフたちとスローライフ

末松 樹

挿話2 元生徒会長のローランド

 あれから二年か。
 長かったな気もするし、短かったような気もする。
 ルーシーと正式に婚約し、二人の時間を育んでいた間は良かったのだが、俺が魔法学園の卒業を迎え、ルーシーと毎日は会えなくなってしまったからな。
 ただ、それでも……

「ローランドさん。お待たせしました」
「いや、全く待っていないよ」

 こうして、謎の魔法で三日に一度は会いに来てくれたからな。
 ただ、初めてこの転移魔法を見た時は驚いてひっくり返ってしまったが。
 でもルーシーだから、まぁそういう事もあるか……と思ってしまったけど。
 世界で唯一の木魔法を使い、瀕死の俺を一瞬で治療してくれたんだ。
 もうルーシーに何があっても驚く事はないだろう。

「その制服姿を見るのも今日で最後か」
「そうですね。あ、ローランドさんが制服姿の私が好きだと仰るのでしたら、時々着ましょうか?」
「いや、ルーシーの好きな服装で構わないさ。俺の婚約者は、何を着ても可愛いからな」
「ふふっ。ローランドさんも、すっかりお世辞が上手くなりましたね」
「違うぞ? 今のはただの本心だからな?」

 ルーシーも魔法学園の卒業式を終え、このハノーヴァー領へと来てくれた。
 未来を知っているというルーシーが言っていた通りだ。
 ここからは、俺がルーシーを幸せにしていけるように頑張っていこうと思っている。

「さぁルーシー。屋敷へ行こうか。これからは、この森へ迎えに来ず、俺と一緒に住んでもらうつもりだから」
「はい。ですが時々でよいのて、この森へ遊びに来ても良いですか?」
「この森へ? いつもこの森で落ち合っていたのは、転移魔法が長距離での移動は出来ず、ここが限界だからだという理由ではなかったのか?」
「その通りです。しかし、実はもう一つ理由がありまして、この森には私の友人が棲んでいるんです」

 森の中の友人か。
 ルーシーの事だから、ウサギとか小鳥だろうか。
 可愛い動物が好きだからな。

「そういう事なら構わないよ」
「ありがとう! あとね、私のお友達をローランドにも紹介しようと思って、実は今日来てもらっているのよ。すぐ側に居るから、呼んでも良いかな?」
「ほう。それは楽しみだな。ルーシーの友達なら、是非俺も友達にならなければな」
「そうね。ローランドが仲良くなってくれると、私も嬉しいわ。みんなー、来てー!」

 ルーシーが呼べば出て来るのか。
 まるで話が出来るみたいだな。
 どんな小動物が来るのか楽しみにしていると……大きな熊が二体姿を現した。

「まず、この子がセシルで、こっちがお母さんなの」
「はじめましてー! お兄さんが、お姉ちゃんの恋人なんだー!」

 しゃ、喋った!? 熊が……熊が喋っているだと!?
 一体何が起こっているんだ!?
 そう思っていると、またもや大きな……今度は鹿が現れた!

「ほぉー。兄ちゃんが、噂のお嬢ちゃんの婚約者か。お嬢ちゃんは大事にしーやー! こんなえぇ子、他には絶対に居らへんで!」、「そ、そうですね」
「うむ。あ、ワイはダニエルっちゅーんや。宜しくな」
「よ、宜しくお願いします」

 ど、どうなっているんだ!?
 熊だけでなく、鹿までもが喋った!
 これも、ルーシーの凄い魔法の力なのか!?
 それから、今度は小さな人影が現れ、

「ナーシャ。宜しく」
「ろ、ローランドだ。よろしく頼む」

 エルフが現れたーっ!
 しかも喋って……って、いやエルフは喋っても不思議じゃないか。

「ローランド。私のお友達も含めて、これから宜しくねっ!」
「あ、あぁ。任せてくれ」

 ……あー、そういえば一時期、森の妖精が現れたって噂があったが、あれはルーシーの事だったんだな。
 まったく。ルーシーには、もう驚かされないと思っていたのたが、常に俺の予想の斜め上を行くな。

「ハノーヴァー領の次期領主として、ここに誓おう。皆の大切な友人であるルーシーは、必ず俺が幸せにすると」
「おぅ、たのむで! お嬢ちゃんを泣かせるような事があったら、仲間集めてカチコミに行くで」
「ダニエル。私は大丈夫よ。ローランドさんと一緒に居られて、幸せだから」

 そう言って、ルーシーが俺の胸に飛び込んで来くる。
 俺は、そう遠くない内に妻となるルーシーを抱きしめ、優しくキスをしたのだった。



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