悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きていきます。私にしか使えない魔法で、モフモフたちとスローライフ

末松 樹

第52話 タクアンの次に挑戦する料理

「では、ルーシー様。また来週末に参りますので」

 ローランドさんとの昼食を終えた後、女子寮へ戻って夕食を作ったテレーズさんが家へ帰る事に。

「お話しさせていただきましたが、悪い人ではなさそうで良かったです」
「うん。魔法や作物について教えてくれるし、良い人よ?」
「そうですね。学園卒業後のルーシー様の嫁ぎ先が決まって良かったです」
「テレーズさん!? な、何を言っているの!?」
「それでは、また」

 そう言って、テレーズさんが馬車に乗り込み、盛大な勘違いをしたまま帰っちゃったんだけど。
 これがまた変な事にならなければ良いんだけどね。
 そんな事を思いながら夕食を済ませると、早速森へ。
 もちろん休日だからと油断せずに、いつも通り体育館の裏まで移動してから、転移魔法を使う。
 ……ちょっと面倒だけど、毎日森の中へ行っている事がバレる方が、もっと面倒だからね。

「お姉様! ご覧下さい。お姉様の仰っていた通り、大根が曲がるくらいに柔らかくなりました!」
「やったー! お婆ちゃんの家でお手伝いした通りになったー! えっとね、ここまで柔らかくなったら、紐を外すの」
「お手伝いしますね」

 ナーシャちゃんに手伝ってもらって、干していた大根を降ろそうとして、ふと気付く。
 お婆ちゃんのお手伝いをしていた時は、干した大根を降ろした後に、樽の中へ敷き詰めていた。
 だけど、ここに樽なんて物は無くて、あるのはお米を脱穀した時に使った壺くらい。
 壺なら沢山ある場所を知っているし、壺でも……良いよね?
 あれ……でも、確か壺漬けっていうお漬物もなかったっけ? 壺に漬けたら、壺漬けになるのかな?
 わかんないけど、まぁいっか。

「お姉様? どうされたのですか?」
「ううん。何でもないの。じゃあ、これを外して……ありがと」
「いえいえ。次はどうされるんですか?」
「この大根を壺に入れて、他にもいろいろ入れていたはずなんだけど……ちょっと待ってね」

 塩を入れていたのは覚えているんだよね。
 あと、何か赤いのを入れていて、美味しそうだなーって思ってかじったら、物凄く辛くて……

「唐辛子だっ! 確か、唐辛子を入れていたはず」
「な……お嬢ちゃん。唐辛子やて!? あ、あれはアカンで! 悪魔の食べ物やでっ!」

 お婆ちゃんの作り方を思い出して、思わず叫んでしまったら、突然ダニエルが反応した。

「悪魔の食べ物……って、ここの唐辛子はまさか魔物とか?」
「いや、魔物って事は無いと思うけど、食べたらずっと腹は痛くなるし、舌はおかしくなるし、よっぽど空腹やないとあんな辛いのは食べるべきやないやろ。お嬢ちゃんは、こんなに美味しいリンゴや豆を作れるんやから、唐辛子なんて作らんでえぇで」

 あー、ダニエルは子供の頃の私と一緒で、唐辛子を食べた事があるんだ。
 まぁ確かにアレを思いっきりかじると大変な事になるよね。

「大丈夫だよ。唐辛子はそのまま食べる訳じゃなくて、何て言うか味付け? みたいな感じだから」
「んー、よう分からんけど、お嬢ちゃんが苦しむ結果にならへんねんやったら、えーけどな。……せや、その唐辛子の中でも、緑色で辛くない奴があるやろ? あっちなら、まだいけるで」

 緑色で辛くない唐辛子? ……ししとうの事かな?
 ししとうはテンプラにすると美味しいよね!
 ……そうだ! ごはんにタクアン。味噌汁は、流石に味噌の作り方が分からないから諦めていたけど、メインのおかずは、テンプラにチャレンジしてみようーっと!

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