悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きていきます。私にしか使えない魔法で、モフモフたちとスローライフ

末松 樹

第48話 慌てまくるメリッサさん

「えっと、ルーシー様のご友人の方々ですね? いつもお嬢様がお世話になっております」

 メリッサさんが私の知り合いだと分かった途端に、テレーズさんが突然お仕事モードに切り替わる。
 うん。主人公のアメリア視点だと、テレーズさんはいつもお堅いメイドさんってイメージだったけど、しっかり切り替えていたんだね。

「ゆ、友人なんかじゃないわよっ! その、この子はライバル……そう、ライバルなのよっ!」
「なるほど。一人の男性を巡る、恋のライバルという訳ですね?」
「そうよ。全く、ローランドには私という幼馴染が居るのに…………ち、違うっ! こ、恋とかじゃなくて、魔法よ! 魔法のライバルなのっ! 魔法大会での雪辱は、必ず晴らすんだからねっ!」

 テレーズさんは一体何を言っているのやら。
 私はこの学園で誰かと結ばれる事は決して無いから、辺境へ飛ばされてからが勝負なの!
 とりあえず辺境で暮らせるようにして、それからようやく愛だの恋だのって話になるんだから。
 先ずは辺境で快適な生活を送る事……これが最優先なのっ!

「こほん。……で、貴女はこんな所で何をしているの?」
「え? 普通に買い物ですけど?」
「……宝石店で?」
「宝石店?」

 メリッサさんに言われて周囲を見渡すと、すぐ横がオシャレな宝石店だった。
 いやいやいや、こんなお店に入った事ないし。入る予定もないけど。

「えっと、ただの偶然……」
「ま、まさか、ローランドに高価なアクセサリーを贈るつもりなのっ!?」
「いえ、そうじゃなくて……」
「ふっ、無駄よっ! ローランドは次期公爵ですからね。私を含め、色んな女性から言い寄られ、高価なプレゼントを贈られ、ウンザリしているんだからっ!」
「あ、そうなんですね」
「そうよっ! だから、ローランドに付き纏うのはやめなさい。わかった?」

 メリッサさんも高価なプレゼントを贈っていたんだ。
 それより、高価なプレゼントにウンザリっていう話だし、やっぱり野菜の種が良いのかな?

「つまり、メリッサ様はローランド様に言い寄ろうとして、失敗したと」
「し、失敗なんかしてないわよっ! そ、そもそもローランドとはただの幼馴染だし? べ、別に私はアイツの事なんて、なんとも思って無いんだからーっ!」

 えーっと、ツンデレかな?
 テレーズさんに突っ込まれ、メリッサさんが逃げるようにして突然走り去って行ったけど……とりあえず、頑張って欲しい。
 なんて言うか、青春だよね。

「ふむ……とりあえず、ローランド様がモテモテなのは、よく分かりました。ルーシー様、これは大変ですね」
「えっと、私はメリッサさんみたいに、ローランドさんへアタックしようとか考えてないからね?」
「またまたー。こうして、自らプレゼントを選ぶなんて、気がある証拠じゃないですか。ルーシー様なら、どうでも良い相手であれば、私に適当な物を見繕っておくようにって指示して終わりな気がしますし。以前にご主人様が体調を崩され、お見舞いに行くとなった時も、顔こそ出されたものの、お持ちしたお花は私にお任せいたしましたよね?」

 へぇー、そんな事があったんだ。
 私がルーシーとなる前の話なんだろうけど……あ、待って。
 これなんて良いんじゃない!?

「テレーズさん、ありがとう!」
「な、何がですか!?」
「ローランドさんに贈る物が決まったから。さぁ、早速買いにいきましょう!」
「はぁ……って、どこへ行かれるんですかーっ!?」

 テレーズさんの話で思いついたプレゼントを購入し、寮へと戻る事にした。

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