悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きていきます。私にしか使えない魔法で、モフモフたちとスローライフ

末松 樹

第32話 調理環境の整備

「えーっと、さっきの魔法の事については、一旦置いておいて、それより早くお店へ行きましょう」
「……どうされたのですか、ルーシー様? 先程までは、あんなにノリノリでお話ししてくださっていたのに」
「あ、あはは……その、このままだと、ヒート・プレートが買えないなーって思って」

 一先ず、倉庫魔法の事を誤魔化し……全然誤魔化せてないけど、それはさておき、無事にヒート・プレートを購入する事が出来た。
 それから、買取金額が凄かったので、お鍋とか包丁とかの調理器具を買ったり、食器なんかを買ったり、忘れちゃいけない調味料を買い揃えたり。
 とりあえず、料理をする為の準備は整ったかな。

「ルーシー様。買われた物を片っ端から倉庫魔法へ……物凄く便利ですね」
「テレーズさん。あの、この魔法の事は見なかった事にしてくれない? えっと、教えてくれた人から、他言はダメだって言われていたのを思い出したの」
「あぁ、途中から様子がおかしかったのは、そのせいですか。畏まりました。ちなみに、勿論話すつもりはありませんが、仮に私がそれを誰かに喋ったとしても、大丈夫だと思いますよ?」
「ど、どういう事? やっぱり普通に誰でも使える魔法だから?」
「いえ、そうではなくて、そんな魔法はだれも使えないので、言っても信じてもらえないかと。頭が残念な人とか、妄想癖と陰で言われて終わりだと思います」

 そ、そーなんだ。
 ときメイでもそうだし、よくある異世界転生ものでも、空間収納は普通に出てくるから、てっきり誰でも使える魔法なのかと思っていたけど、色々と気を付けないとね。
 一通り買い物に付き合ってもらい、テレーズさんのオススメのカフェでお茶をして、寮へ戻る。

「ルーシーさん、テレーズさん。おかえりなさい」
「あ、寮長さん。ただいま帰りました」
「あら? 今日はお買い物へ行くと言っていませんでしたっけ?」
「そうですよ? 沢山買い物をして……え、えっと、実家に置いておいてもらう事にしたんです。流石に、寮へ私物を沢山持ち込まない方が良いかなと思いまして」
「いえ別に、部屋に入る分ならいくらでも構いませんけど?」
「そ、その……大きな物を買っちゃっいましたので。で、では……」

 あ、危なかった。
 ついさっき気を付けようと決意した所なのに、いきなりボロが出かける事に。

「あの、ルーシー様。いろいろと気を付けた方が宜しいかと」
「そ、そうよね。気を付けます」
「では、私は夕食の準備に取り掛かりますね。せっかくヒート・プレートを購入された訳ですし、温めて食べる物にしておきますので」

 そっか。テレーズさんは今日の夕方には家へ帰っちゃうから、作り置きになるんだ。
 一人で夕食は仕方がないけれど、どうせなら一緒にお喋りしながら食べたかったなー。
 そんな事を考えながら、テレーズさんが夕食を作るところを見学させてもらい、完成後に見送る事に。

「では、また来週参りますので、沢山の素材を下さったローランド様にお取次ぎをお願い致しますね」
「えーっと、やっぱりテレーズさんが直接渡すの?」
「当然です。ルーシー様に手を出そうとしているのかもしれないのです。こんなに面白……もとい、重要な事はしっかり確認させていただかなければ」

 テレーズさん。今、面白いって言いかけたよね?
 ときメイでも、テレーズさんがお詫びの品を渡していたのも、楽しむためなのっ!?
 若干の不安を残しながら、テレーズさんを乗せた馬車が出発したので、先ずは夕食を済ます事に。

「ヒート・プレートで温かい食事が食べられる! やったねー!」

 作ってくれたのはシチューだったので、早速温めようとして、いきなり手が止まる。
 ……このヒート・プレートって、どうやって使うの!?
 テレーズさん! 帰る前に使い方を教えてよっ!
 テレーズさぁぁぁんっ!
 ……残念ながら、今日の夕食は、一人で冷めてしまったシチューを食べる事になってしまった。

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