悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きていきます。私にしか使えない魔法で、モフモフたちとスローライフ

末松 樹

第15話 頑張り過ぎた悪役令嬢

 お友達になったクマさんと互いに自己紹介をして、セシルという名前だと教えてもらった後、急いで作業に移る事に。
 土魔法で地面を耕し、木魔法で作った種を植えて成長させると、畔を作って水を張り、再び木魔法で成長させる。

「凄い! もう、稲に実がなったーっ!」

 二回目となると作業も慣れたもので、クマさんが半分程食べてしまった田んぼの隣に、新しい田んぼを作りあげた。
 後は、昨日と同じ様に水を抜くんだけど、やっぱりこれには時間がかかってしまうのと、流石にもう時間が遅いのよね。

「セシル。そっちのは残りも食べて良いけど、新しいのはダメだからね?」
「はーい! ……お姉ちゃんは、どこへ行くの?」
「私? 私は……ちょっと行く場所があるんだ。明日の夕方にはまた来るわね」
「わかったー! じゃあ、それまでしっかり守ってるねー!」

 うーん。流石に、迷子に向かって家に帰るとは言えなかった。
 連れて行ってって言われても、寮にクマを入れているのがバレたら絶対に怒られるし。

「そうだ。ちょっと待ってね」

 田んぼの畔を作った時と同じ様に、土の壁を作る魔法を使い、ちょっとした洞穴を作ってみた。
 もちろん、そんなに大きな物ではなく、セシルが何とか入れるくらいの大きさの穴だ。

「えっと、何も無い場所では寝にくそうだから、こんなのを作ってみたんだけど、どうかしら?」
「わぁ! お家みたい! お姉ちゃん、ありがとー!」

 喜んだセシルが抱きついて来て……うん。ちゃんと力は入れないようにしてくれた。
 流石にセシルがぎゅっと抱きしめたら、大怪我しちゃいそうだからね。

「じゃあ、また明日ね。おやすみ」
「うん、おやすみー!」

 クマさんとお話し出来るって凄いなー。
 まぁそもそも世界樹と話しているんだから、そっちの方が凄いのかもしれないけど。
 寮に戻ると、夕食とかお風呂とかを済ませ、ベッドへ。
 ……流石に、一から田んぼを一気に作るのは張り切りすぎたかも。
 そんな事を考えながら就寝し、その翌朝。

「……な、何かしら。身体が……風邪?」

 物凄くけだるく、歩くのもままならない。
 着替えて食堂へ行きたいんだけど、そもそも着替るどころか、ベッドから起き上がる事すら困難だ。

『これは……どうやら昨日、魔力を使い過ぎたみたいですね』
「あ、一気に畑を作ったり、セシルの家を作ったりしたから?」
『えぇ。魔力が回復すれば、この症状は治まりますので、今日は一日ゆっくりしておくべきですね』
「と、とりあえず、学校に欠席の連絡を……」
『無理なさらないでください。私が、この寮の寮長さんにお伝えしておきますから』

 ユリアナが代わりに連絡してくれると言うので、その言葉に甘える事にして、再びベッドの中へ。
 えっと、今日は授業二日目だから……アメリアとルーシーが廊下でぶつかる日だ!
 大変! これが元でルーシーはケヴィン王子に嫌われるから、急いで止めに行かなきゃ!
 ……って、ルーシーは私だった。
 私がここで眠っていれば、アメリアとぶつかる事もないじゃない。
 何だ、慌てて飛び起きるところだったけど、このまま寝ておけば良いのね。

「きゃぁぁぁっ! 封筒が浮いてるわっ!」
「何かの霊よ! 霊からの手紙よっ!」
「寮長さんっ! 逃げてっ! ……あぁっ! 何故か霊の手紙が寮長さんを追いかけているわっ!」

 どういう訳か、部屋の外から悲鳴が聞こえる気がするけど、ベッドの中でウトウトしていた私は、気にせず眠る事にした。

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