お断りするつもりだったツンツン婚約者が直球デレデレ紳士に成長して溺愛してくるようになりました
14.思春期、到来
私たちは、十四歳になった。
約束の六年間は、あと二年を残すところ。
カミルはとっても、私のことを大事にしてくれている。
お父様も、そんなカミルのことを温かく見守ってくださっている。今はまだ、約束の途中だから、彼は私の婚約者というわけではないんだけれど、でも、正直なところ、もうすでに彼のことは『私の婚約者』という気持ちで見てしまっている。
きっと、この人と結婚するんだ……って。
それを口にするのは恥ずかしいし、カミルが一生懸命頑張ってくれているのに、水を差すみたいだから、私がそう思っていることは、誰にも内緒にしているのだけれど、正直、カミル以外の殿方と婚姻するかもしれないなんてことは、考えられなかった。
そうそう、十四歳といえば、俗にいう思春期で、私のお友達も「急に婚約者が冷たくなった!」とか「最近素直になれなくて困ってる」とか聞くのだけれど……。
私たち、はというと。
「ミリア。今日は黄色いリボンをつけているんだな。君の髪と、瞳に似合っていて、とても鮮やかに見える。綺麗だ」
「あ、ありがとう。カミル」
「先週会ったばかりなのに……前にあった時より、ずっと大人っぽくなったように見える。会うたびに、ミリアは綺麗になるな」
「さすがに1週間じゃ変わらないわ、カミル……」
カミルは私を褒めてくれる語彙が増えて、なんだかとってもたくさん口説いてくれるようになりました!
私は正直、恥ずかし過ぎて居た堪れないけど、カミルの言葉を突っぱねるなんてそんなことできるわけないから、頑張って! 頑張って!! 受け止めている!!!
口がお上手になっただけじゃなくて、カミルは元々格好良かった容姿に磨きがかかって、まるで王子様みたいな美少年に成長していた。
まあ、王子様といっても、硬い毛質の髪のせいで、ちょっと髪の毛はツンツンしてるから、やんちゃな王子様って感じなんだけれど……。でも、格好良さは王子様級なのは、そうだから……。うん……。
カミルは私と話す時も、もうほとんどどもらないし、顔も真っ直ぐ見てくれるようになった。
なっちゃった。
あの、自分の気持ちを伝えるのが照れ臭くて、恥ずかしくて、素直になれなくて、それでも一生懸命伝えようと努力していたカミルは、もういない。
カミルは、口を開けばすっごく自然に私にデレデレする男の子になっていた。
不器用だけど、本当は優しいカミル。それだけで、私には十分だったのに。
──十四歳のカミルは、攻撃力が高い。私に対して!!!
(今思うと、カミルの「なんでもない!」が懐かしい……)
当時の私は「なんで!?」「さっきまで優しかったのに、なんで!?」といちいち困惑していたけれど、今、振り返ると、ああやって慌ててそっぽを向くカミルは、可愛らしかった。
私たちは、まだ『婚約者』という関係ではない。だから、カミルも私との距離感は気をつけているらしい。エスコート以外で手を繋ぐこともない。
常に侍女や使用人がそばに控えているから、完全に二人きりになることもないしね。
……そう、いつも誰かが話を聞いているはずなのに、カミルは堂々と私に歯が浮くような言葉を吐く。私なんて、言われているだけでも恥ずかしいのに! 誰かが聞いているはずなのに、あんな甘い言葉、私には言えないわ!
いつもカミルの甘い言葉を聞かされている彼らは一体どんな気持ちでいるのかしら? ちょっと気になる。
(カミルはもう、『恥ずかしい』って気持ちはないのかしら……)
チラ、と横目でカミルを見ると、目が合ってしまって、ヘーゼルの瞳を細めてカミルがにこりと笑う。
(お、お顔が良い!)
カミルは、成長期で背も伸びて、顔つきもぐっと大人っぽくなった。初めて会ったときから「格好いいなあ」と思っていたけれど、本当にますます格好良くなってしまった。
「ミリア、どうかした?」
「なっな、なんでもないわ!」
思わず声がうわずったし、語気が強くなってしまった。
ああ、しまったと思うが、カミルは気にしていないようで、むしろ一層目を細め、微笑みを深めた。
「……かわいいな」
ああ、もう! と羞恥心で叫んでしまいたかった。
(『なんでもない』の意味を、この人は誰よりも理解していますからね!!!)
何しろ、カミル自身の十八番だったのだから。
『なんでもない』と言われたら、『なんでもある』というのを、カミルはよくわかっている。
私に「なんでもない!」と赤い顔を背けられたことを、カミルは「俺のことを格好いいと思っていたんだな」と、易々と解釈できるのだ。
(か、カミルは、頑張って、いくら恥ずかしくても、素直に気持ちを伝えようと頑張って、頑張っていたのだから、私だって……!)
そうとは思うのだけど、なかなかうまくはいかなかった。
しかも、カミルが、私のそんな様子をたまらなく愛おしそうに見るものだから、ますます居た堪れなかった。
(うう、ずるい……いえ、ずるくはないわ……だって、カミルはこの状態から、ずっと、努力して、今のように素直に言えるようになったのですもの……!)
十四歳。思春期を迎え、カミルは想いを言葉に乗せ、私に伝える術を会得していたけれど、私は……まさに、俗に言う思春期真っ盛りという奴で、一人でもだもだとしていた。
いえ! それでも! カミルの頑張りを思ったら、そんなにツンツンはできないから! ツンツンは、しないけれど!
そんなこんなで、一人感情の大渋滞をしている私だけれど、カミルとは喧嘩もせずに仲良くやっています。
約束の六年間は、あと二年を残すところ。
カミルはとっても、私のことを大事にしてくれている。
お父様も、そんなカミルのことを温かく見守ってくださっている。今はまだ、約束の途中だから、彼は私の婚約者というわけではないんだけれど、でも、正直なところ、もうすでに彼のことは『私の婚約者』という気持ちで見てしまっている。
きっと、この人と結婚するんだ……って。
それを口にするのは恥ずかしいし、カミルが一生懸命頑張ってくれているのに、水を差すみたいだから、私がそう思っていることは、誰にも内緒にしているのだけれど、正直、カミル以外の殿方と婚姻するかもしれないなんてことは、考えられなかった。
そうそう、十四歳といえば、俗にいう思春期で、私のお友達も「急に婚約者が冷たくなった!」とか「最近素直になれなくて困ってる」とか聞くのだけれど……。
私たち、はというと。
「ミリア。今日は黄色いリボンをつけているんだな。君の髪と、瞳に似合っていて、とても鮮やかに見える。綺麗だ」
「あ、ありがとう。カミル」
「先週会ったばかりなのに……前にあった時より、ずっと大人っぽくなったように見える。会うたびに、ミリアは綺麗になるな」
「さすがに1週間じゃ変わらないわ、カミル……」
カミルは私を褒めてくれる語彙が増えて、なんだかとってもたくさん口説いてくれるようになりました!
私は正直、恥ずかし過ぎて居た堪れないけど、カミルの言葉を突っぱねるなんてそんなことできるわけないから、頑張って! 頑張って!! 受け止めている!!!
口がお上手になっただけじゃなくて、カミルは元々格好良かった容姿に磨きがかかって、まるで王子様みたいな美少年に成長していた。
まあ、王子様といっても、硬い毛質の髪のせいで、ちょっと髪の毛はツンツンしてるから、やんちゃな王子様って感じなんだけれど……。でも、格好良さは王子様級なのは、そうだから……。うん……。
カミルは私と話す時も、もうほとんどどもらないし、顔も真っ直ぐ見てくれるようになった。
なっちゃった。
あの、自分の気持ちを伝えるのが照れ臭くて、恥ずかしくて、素直になれなくて、それでも一生懸命伝えようと努力していたカミルは、もういない。
カミルは、口を開けばすっごく自然に私にデレデレする男の子になっていた。
不器用だけど、本当は優しいカミル。それだけで、私には十分だったのに。
──十四歳のカミルは、攻撃力が高い。私に対して!!!
(今思うと、カミルの「なんでもない!」が懐かしい……)
当時の私は「なんで!?」「さっきまで優しかったのに、なんで!?」といちいち困惑していたけれど、今、振り返ると、ああやって慌ててそっぽを向くカミルは、可愛らしかった。
私たちは、まだ『婚約者』という関係ではない。だから、カミルも私との距離感は気をつけているらしい。エスコート以外で手を繋ぐこともない。
常に侍女や使用人がそばに控えているから、完全に二人きりになることもないしね。
……そう、いつも誰かが話を聞いているはずなのに、カミルは堂々と私に歯が浮くような言葉を吐く。私なんて、言われているだけでも恥ずかしいのに! 誰かが聞いているはずなのに、あんな甘い言葉、私には言えないわ!
いつもカミルの甘い言葉を聞かされている彼らは一体どんな気持ちでいるのかしら? ちょっと気になる。
(カミルはもう、『恥ずかしい』って気持ちはないのかしら……)
チラ、と横目でカミルを見ると、目が合ってしまって、ヘーゼルの瞳を細めてカミルがにこりと笑う。
(お、お顔が良い!)
カミルは、成長期で背も伸びて、顔つきもぐっと大人っぽくなった。初めて会ったときから「格好いいなあ」と思っていたけれど、本当にますます格好良くなってしまった。
「ミリア、どうかした?」
「なっな、なんでもないわ!」
思わず声がうわずったし、語気が強くなってしまった。
ああ、しまったと思うが、カミルは気にしていないようで、むしろ一層目を細め、微笑みを深めた。
「……かわいいな」
ああ、もう! と羞恥心で叫んでしまいたかった。
(『なんでもない』の意味を、この人は誰よりも理解していますからね!!!)
何しろ、カミル自身の十八番だったのだから。
『なんでもない』と言われたら、『なんでもある』というのを、カミルはよくわかっている。
私に「なんでもない!」と赤い顔を背けられたことを、カミルは「俺のことを格好いいと思っていたんだな」と、易々と解釈できるのだ。
(か、カミルは、頑張って、いくら恥ずかしくても、素直に気持ちを伝えようと頑張って、頑張っていたのだから、私だって……!)
そうとは思うのだけど、なかなかうまくはいかなかった。
しかも、カミルが、私のそんな様子をたまらなく愛おしそうに見るものだから、ますます居た堪れなかった。
(うう、ずるい……いえ、ずるくはないわ……だって、カミルはこの状態から、ずっと、努力して、今のように素直に言えるようになったのですもの……!)
十四歳。思春期を迎え、カミルは想いを言葉に乗せ、私に伝える術を会得していたけれど、私は……まさに、俗に言う思春期真っ盛りという奴で、一人でもだもだとしていた。
いえ! それでも! カミルの頑張りを思ったら、そんなにツンツンはできないから! ツンツンは、しないけれど!
そんなこんなで、一人感情の大渋滞をしている私だけれど、カミルとは喧嘩もせずに仲良くやっています。
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